第15話 お題13-2 「聞き覚えのある声が聞こえた気がした」からはじまり「その後どうしたかなんて野暮なことは語るまでもないだろう」で終わります。 

-レタッチリ 艦橋-

「護衛艦隊 全滅しました!」

「敵艦の状況は?」

「現在こちらに突撃中、近距離での砲撃で各所に被害が出ています」

「消火とブロック閉鎖開始! 敵義体部隊はどうなっている! 弾幕薄いぞ、もっと張れ!」



 正面の画面に数機の黒い義体が映り込み、


体制を整える。


まるで映画のように全てがゆっくりと見え、

そして死の弾丸が乱射され同じ場所に撃ち込まれる。


正面に当たった弾丸は、

装甲に亀裂を発生させて爆発する。


ブリッジの空気が吸い出されオペレータが何人か吸い出されていく。


同時に別の個所からも爆発音が聞こえた気がした。


-コージ隊 VR-BOXコフィン収容部にて-


 ブリッジが爆発した直後、VR-BOXコフィン保管庫に弾丸が命中し爆発する。

いくつかのVR-BOXコフィンが宙空に流され、運が悪い事にひとつだけ中身が入ったVR-BOXコフィンが外に飛び出す。


 中にはコージが乗っている。


内心焦りながら他の二人が放り出されていない事を確認する。


ブリッジに通信は繋がらないようだ……まずい。


 取り敢えず、二人を助けなくては。頬に冷や汗が流れる

何とかしなくてはならない、まず二人を接続する

……スタンバイ ok! 二人のVR-BOXに近い義体に接続する。


 VR-BOX内が赤色灯に変わる


シューっと言う音と共にエアが抜けていく、


緊急警報がなっている。

応急シートを漂わせ亀裂を塞ぐ。


確か、宇宙空間で持つエアの量は36時間分、

今ので約1/3程度減って約24時間以内に救助されれば生存できる。

だから、


落ち着け……まだ、まだだ……冷静さを失ったら終わりだ……


 近くにあった軍用の機体高機動タイプのpassを入力し接続する。


 自機で回収に向かうも速度差で、もう既に義体では追い付けない速度に到達していた。

優先順位を間違えた仲間の命を優先したのだ。

何よりも時間を掛けすぎた。

漂流したら、見つけてもらえる可能性は0に等しい。


 絶望感が漂う中、諦めとやりきった感覚コージーは……生命としての体を捨てる決断をするも、僅かな可能性に賭けて、戦闘機と義体で行動する計画をたてる。

短時間で敵の旗艦を行動不能にし、自らを救助する計画。


義体へ100%接続……撃墜されれば生命としてのコージが消える可能性はあるが、

意識を全て落とし込む事で義体として、データ生命体として生きられる可能性を考えて。

義体へ意識をダウンロードしつつ、

ビーコンのスイッチ気休めと奇跡に頼るをいれる。


 二人へ通信を入れる事にする。

「アル、マリー、どうやら私の本体は……船から飛び出してしまったみたいだ。既に計算値では義体では追い付けない速度に達している。

コージ隊最後の指示を出しておくよ? 二人はコフィン収用施設の点検および修理を行ってくれ。以上だ。これ以上は格好つけてられないので、通信を切る。さらばだ来世で会おう」と笑って通信が切れる


「コージ! 何を言ってるの! 諦めてはダメよ!」


「くそっ、救難信号ビーコンの遠ざかる速度が速い! ファイターじゃないと宇宙戦闘機追い付けない。ブリッジに信号が繋がらない! 」


「必ず! コージ! 必ず助けるから、待ってて!」


「マリー、俺は戦闘用格納庫に行ってくる。」

「あと、区画の整備を頼む。」


「何を言ってるの! こんな時に!」

「落ち着け! こんな時だからだ! 」


「捜索中に本体が流れ出るようじゃ集中出来ない。気持ちはわかるけど、コージを救助するためだ! つべこべ言わないでやってくれ! 」


そうして各々の役割を果たすべく二人は手分けすることになった。




-コージ機-

……100%設定完了。オールグリーン……スタンバイok……

単眼が耀き、手首のマニュピレータが初期動作テストを行う。

そして、意識が目覚める。


……早い段階で戦闘を終わらせる必要がある。

どんな手段を使ってでもだ。


 義体が落とされても、本体が死亡してもコージに取っては賭けは負けになる。


賭けているのは自らの命。

負けるわけにはいかない。



 義体は高機動型、バズーカを持って一気に艦橋を制圧もしくは

  破壊すれば引いてくれる筈。


運良く格納庫にレタッチリの弾幕が当たれば

  お互い戦闘にならなくなる。

   物量だけならばレタッチリの方が有利ではある。



 格納庫でバズーカ二丁、バックパックアームにシールド4枚搭載し戦闘機と接続する。

義体よりは大きくなるが速度が変わる。

高速で敵旗艦のブリッジを破壊し、本体救助を目指す。

 

 デブリを盾にしながら、高速機動で敵旗艦に近づいていく。



感覚100%は自分の体を全力で動かすのと変わらない為に、

 他の義体の数倍の速度で移動出来る。

  更にファイターを接続しているので、

   数十倍の速度まで上げられる。


 直感で主砲を回避し、オートAIMを無視し予測位置に向け

  左腕からブドウ弾をばらまく。


敵義体に弾が吸い込まれ爆発する。


 近付くほど対空放火が激しくなっていく。


  戦闘機や義体を弾丸が掠めていく。



   機体から破片が火花と共に散る。


 だんだんとコージに弾丸が集中していく、


  シールドを前面に展開し


   戦闘機をローリングさせることで   


    シールドのダメージを散らしていく。


     すれ違いでショットガンを放つ。

       

       また一機爆散する。




弾薬が無くなったショットガンを捨て、

  バズーカに持ち替える。



 敵旗艦ブリッジまでの距離は遠いが、

  ファイターの対艦ミサイル発射と同時に

   バズーカをぶっぱなし捨てる!


 横から現れた黒い義体に

   捨てたバズーカが斬られ爆発する!


 バズーカの弾丸がブリッジに命中する寸前、

  敵義体が割り込みミサイル諸とも爆発する。

   敵義体はデブリと化したものの

   


      ブリッジへの被害は軽微に見える



 「っ! 追い付かれたか! 私の邪魔をするな!」


 と言うと同時に戦闘機を切り離し、


 ヒートソード抜き斬りかかるも、 

   

  黒い義体のソードで

   

   容易く受け止められる


 「甘く見るなよ? 我々の本体が在るんだ。

        易々とやらせるわけが無かろう?」


 黒い義体が右手に掴んだソードで打ち払い

  ライフルを放つ、


コージはシールドで軌道をずらす

 無理な機動でアームが折れシールドが離れる。

  

   そこに蹴りを入れシールドを目眩ましに突撃。


直線的な攻撃は回避される

  

  バックパックに蹴りが入る寸前

   戦闘機の機銃が割り込む



    黒い義体は機銃をギリギリ回避する



 コージは戦闘機に掴まるとそのまま、

   高速で敵旗艦に機雷を蒔きながら、回り込んでいく。



「冗談じゃない、あんなの軍人なんか相手にしてられるか……しかし、火力不足か……どうする残る選択肢は、ブリッジに突っ込むしかないか……」


 この義体が落ちても、脳死する可能性が高い時間かかってもゲームオーバーか。

逃げたとしても、本体は死亡し義体に閉じ込められる形になる。

ファイターの対艦ミサイルは残っているようだ。



 近距離でミサイルを命中させ、義体ごと侵入し暴れるこうなったら自棄だ事にする。


旋回し、ファイターをブリッジに向け全速で突入する。

 前に黒い義体が回り込む

  「行かせるものかっ! 」



コージはシールドを展開/ブリッジに突撃/機銃を乱射する

ファイターに黒い義体が取りつく



黒い義体が機銃で削れていく



ヒートソードがファイターに吸い込まれる



ファイターが小爆発しキリモミ回転を始める


ブリッジにつく直前にミサイル発射し、そのまま突撃させる


コージが叫ぶ!「そのまま消えて無くなれっ!」

黒い義体が叫ぶ!「甘く見るなといったはずだ!」


二機は絡み合ったままブリッジに向かいそのまま爆発に巻き込まれる


そのままブリッジが爆発し旗艦の動きが止まっていく。






-アルフレッドside-

 現状、俺はコージが載ったVR-BOXコフィンを回収するためにファイターで全速で向かっている。


 問題が一点、速度を合わせて回収出来るかどうかだ。

無理に止めれば確実に中身はシェイクされジュースとなると予想される。


ファイターを加速し、信号を探す。


方向はほぼあっているはず、だがビーコンが捉えられない。

1度角度がズレると距離が離れてしまう。

つまりは、見付けることが困難になってしまうのだ。


少し焦りを覚えながら、信号を探す。


時間は無慈悲に過ぎていく


--







23時間が経ち通信の混線が聞こえる。

ア……ア……ブッ……イ……ダ……まだブッ……ザーザー、死にたく……ないガー……ガガア……ア……誰カ……プッ……プッ……アクマデモイイ……助けて……頼む……サー……サー」と遠ざかっていく音と混線したような泣き声が聞こえてような気がした。



 酸素が足らずホワイトアウトする瞬間に夢を見た……

二人が助けに来てくれたのだ。ホッとして涙が流れる

手を伸ばす二人……俺も手を伸ばし掴もうとする……

まだ二人と共に居られる。バカな話をしていられる……

帰れるのだ……あぁ、帰れる場所があるって素晴らしいなぁ……

コージの意識は、そこで消えていった。


VR-BOXは氷の纏いながら、無慈悲に暗い空間を漂ってゆく。



-一週間程経って-


……ハイパーゲート付近で、船体のあちこちで小爆発の光が輝く航宙移民船レタッチリが漂っている。

せめて消化と簡易修理を行わなくてはハイパースペースに入った時の動作が保証できない。

それは、命が掛かっているだけにそのまま突入だけは避けたい状況だった。


住民全員での修復作業と残った半数の義体での船外作業をし、アンドロイド達は生産管理を行っている。


アルとマリーは生身に戻って、軽作業を終わらせ休憩に入っていた。

二人は軽く体を伸ばしてからテーブルに着くとドリンクをオーダーする。


「やっぱり外が見える場所は良いね」


「外みてたのって前回は、目視での索敵補助の時だったもんなぁ。。。」


「……でも、あの時は敵を発見して……丁度あの光のように……」


「マジか! あの動きは……敵だ!第二艦橋に連絡」


 ……そうして、移民船レタッチリはハイパースペースに突入することになる。

これ以上の戦闘に耐えられないのは判っていたからだ。

外部を映す事が出来なくなり、真っ暗な画面に何も映っていない。

照明は、出力を落とし薄暗いくらいだ。


船のあちこちで小爆発が起きているような音と振動がある。


アルフレッドは顔が青ざめ震えているマリーを抱きしめると、

自分の足が震えてるのを抑えつつ言った。


「大丈夫。俺が必ずマリーを守るよ」っと伝えると

腕の中でマリーはアルフレッドの顔を見て頷いた。

二人は軽くキスをすると顔つきも変わり、行動に移し始める


「生き残ることが先決だよね」

「そういうことだよ。さぁ、いこう」


マリーの手を握って2人でパイロット区画へ向かう。

何か出来る事がないかを確認するために。


その後どうしたかなんて野暮なことは語るまでもないだろう?




……その後、レタッチリはハイパーゲートの外には現れず。

表舞台からは消え去り、行方不明となる。




公式記録より


太陽系内火星軌道戦争の影で、発生した事件通称:白鳥狩り、本来人類の未来を左右する筈の船が巻き込まれた事件であり、多数の民間人の死者が出た。

死傷者は、1千万人とも2千万人とも言われている。

レタッチリが沈んだとすると乗員あわせて四千万人近くの死傷者になる。

そして、半壊した航宙移民船レタッチリがハイパースペースに入った所までの記録しかない。

詳細は関わっていた人々のみが知るのだが火星軍も関わっていた人間の殆どが死亡している為、

なぞがなぞを呼ぶ状態になっている。


少なくとも太陽系内に詳細を記録出来ているものは居ない。


かの航宙移民船レタッチリの目的は移民船カラ・コルに続き

只々新天地を求める為の旅、ただそれだけの筈だった。


END

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素人の落書きです。お題で楽しもう‼️ けんじ @KUMA-KENJI

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