第12話 お題12-1:「きっと仕方の無いことなのだ」から始まり「貴方があんまり楽しそうに笑うからついついつられてしまった」で終わります。
1.
全ての世界の広がりは自らの手が届く範囲の有限であり、そして想像し、努力を辞めない限り無限である。
何かを諦めた時、いつも人々は「きっと仕方の無いことなのだ」と自分達を納得させる為の嘘をつき次への行動へと進めていく。それは時代がどんなに移り変わろうときっと変わらないのだろう。
朝日の柔らかい光の中、コーヒーの香りを楽しもうと席に着こうとしていた時だった。ニュースで、地球上の資源が無くなり各惑星との緊張状態が報道されたのだ。 とうとうこの時が来たか……と私は地球に住みつづける事を諦めた。
これから地球で生き続けるのも、厳しくなるのであれば、まだ見ぬ自分の子孫の為に新天地を目指す時なのかも知れない。
地球人類は、地球統合政府の元で名義上は統一されてはいた。もちろん完全ではなく、各地で紛争・テロなど争いは収まってはいなかった。
各種の邪魔が入りながらも宇宙事業は進み、古い日本のアニメのようなコロニーが地球の周りに配置され、宇宙港なんていうのも軌道エレベーター上に作られている。月面都市や火星の都市・コロニーへの定期便が出ている為、テロや反地球統合政府軍には常に狙われていた。
各惑星からの資源採取も地球統合政府の不平等な契約により、少しづつ反乱の目が育っていた。現地との連携も取らずに現地の人間の努力で発展してきたものを搾取しようと言う考え方や、人種差別は何世紀も変わってはいない。人種差別反対と声高に叫ぶ人々が自分たちこそ差別をしている事に気づいていないからだ。
15年前に発進した第一便の航宙移民船カラ・コルの乗員抽選には外れてしまったものの、5年前に抽選が始まった第二便の航宙移民船レタッチリの乗員抽選には、幸い滑り込むことが出来た。私は約5年の訓練を受けて晴れて正式な乗員になっていた。
私の配属先は移住区画の多種多様な装備の整備点検作業になる為、日夜勉強に励むことになった。移民船レタッチリが向かう先は移民船カラ・コルが向かう先と同じケプラー452bである。あと追いする事で資源の補充と人員の補充をする計画だった。だが1500光年かかる旅路でどれ程の資源が残るのかは疑問である。
ただ一つだけカラ・コルと違うのは、6年前に異星人と技術交流したおかげで、ハイパードライブが完成している事である。ハイパーゲート間の移動速度は、光の速度を超え、通称ワープ航法と呼ばれるようになった、白鳥座方向500光年位置にある。ケプラー186fまでのハイパーゲートを使わせてもらえる事になっている為、予想到達時間が大幅に短縮1000光年の時間で済む予想となった。どうも素人が理解できるように説明すると空間同士の距離を圧縮し穴をあけて
なぜ近い位置にある移住可能惑星に行かないのか? 疑問に思ったと思うが、残念ながらこの位置よりも近い移住可能惑星は既に先住民が居ると言う情報を既に掴んでいたようなのだ。
愚かな人類はいつか宇宙に居る交渉できる人達と争う事になるのだろうか? それとも手を取り合っていけるのだろうか? と思いを馳せる。
地球歴277年8月
太陽系内の戦争が始まったのにも関わらず、大分強引だが移民船が出港する事にになった。体力がある内に計画を進めるようだ。さて問題です。逃げ出そうとするお偉いさん達は船にどの位乗ってくるでしょう?船の艦長やら操船区画の乗員には同情する環境になりそうだ。なんて考えてると誰かに背中を叩かれる。
誰かと思い振り向くと「コージ、何眉間に皺寄せてるんだよ。また例の癖か? 悪い方向に考えすぎてると眉間に縦皺増えちまうぜ?」っと笑って言われる。
「あぁ、君か。アル。随分と出発日が短縮されたもんで、忙しすぎて変な方向に思考が暴走してたよ」っと苦笑して返事をすると、
「とっとと終わらせてマリーの店で一杯飲みに行こうぜ? 」と言って作業に戻る。
現在最終チェックをしている最中で、明日には船が出る。エアカーを使いバタバタと私たち整備要員は内部のチェックで走り回っていた。
自分の受け持ち区画のチェックが終わる頃に照明が赤に変わり緊急アラートが鳴り響く。「緊急事態発生。緊急事態発生。 火星軌道方向に敵シグナル発見報告あり。各員直ちに所定の配置に着け。繰り返す…… 」
「いや、マジかよ。戦闘に巻き込まれちまうのか? 」っと慌てて頭を抱えるアルの首根っこを掴むと「バカっ……そんな所でボヤいてもかわらないよ! 急いで行こう。多分巻き込まれない為に緊急発進すると思う。」と言ってアルを連れて整備員区画まで走って向かった。
______
私の名前は、キャプテン ジェイク・アンダーソンだ。地球統合政府軍に所属している。この船に配属された理由は単純だ、仕事がある程度できそして目障りだからだ。
……戦闘空域を出来るだけ避け開戦している間に、火星軌道を超えた
状況次第ではプロジェクトノアの船なのだから拿捕されてもおかしくはない。最低限の武装(対隕石用などの
しかし、火星軌道上に敵シグナルがある。つまりは火星軍の可能性が高い。それを回避していけと?奥歯がギリッ悲鳴をあげる音がした。
命令を実行するのが私の仕事ではある。だが民間人が1億人以上乗っているこの艦を危険にさらす事になるのは流石の私でも納得できるものではなかった。
「メインの作戦の前に、前菜代わりにこのクソッタレな作戦を実行する事になった。俺たちの船には民間人が殆どになる。これより、われわれは全力でけつまくって逃亡し、
胸に手を当て、そして、拳を握る。
「……恐らく戦闘に巻き込まれると予想される。だがこの船のクルーの全員の力があれば、どのような困難も切り抜けられると信じている。総員皆の力を貸してくれ。これより航宙移民船レタッチリ出発する!」
宇宙港より、移民船が出港する頃、火星軌道上では火蓋が開かれようとしていた。見えている船影は既に何時間か前の映像になる。距離がある場合はそれぞれ予想地点へ向けてミサイルを発射する事になる。
「目標A群捕捉、射程まであと20秒、19,18、17……」「敵右翼を狙え。集中攻撃し包み込んで仕留めるぞ!」「……5・4・3・2・1」
火星軍と地球統合政府軍の両軍からの長距離ミサイル斉射により、漆黒の宇宙で花火のような光があちらこちらであがる。
10時間後には距離を詰め、粒子砲やレーザ砲、ブドウ弾などの質量兵器での打ち合いになる。人の反応速度を超える程の速さの為、防御や主砲以外の攻撃は基本的に
弾ける残骸、新たな破壊で新たな無作為の砲弾が生産されていく。陣形を整え、敵の陣形を崩し、破壊の限りを尽くすのが戦闘である。
そうして、公式記録上初の宇宙戦争が開戦したのであった。
続く
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