第10話 お題9:「ねえ、秘密の話なんだけど」という台詞で始まり「暖かで優しい感情を貴方が教えてくれた」で終わります。
ある日の春の事だった。中堅冒険者になった俺は、仕事を終えて数日程休暇を取ることにした。
冬が終わり春なのにもかかわらず、滝のような汗が出るような日だった。あまりにも暑い為シャツ一枚になった俺は、手ぬぐいで顔を拭きつつタライに水を入れて裸足の足を突っ込み家の前のベンチで座っていた。「くあぁぁぁ、水の冷たさがたまんねぇなぁ……」と呟く。
後ろから、水を木のジョッキに入れて持ってきたアリアが「ふふっ、何ブツブツ言ってるのさ」と軽く笑った後、「ねえ、秘密の話なんだけど、聞いてくれるよね?」いたずらっ子みたいな瞳で見詰めて来たので、俺は何となく照れ臭くなって、しかめっ面しながら「今度は、何処で何の噂話を仕入れて来たんだ? 話してみなよ」っと返した。
ーー実は昨日、中央通りの食堂の女将さんに聞いて来たんだけどね?
「最近の噂、元は冒険者の話なんだけどね。夜中に東地区の教会の墓地に行くと火の玉が飛んでいて、
「なんて言っていたんだよ? 気にならない? 怖いもの見たさもあるけど、気にならない?」とアリアが聞いてきた。
「恐らく、火の玉は死体からガスでも出て引火してるんじゃないかな? 人影は見た人間の影とか。と言うか遠回し過ぎだろ? 一緒に見に行きたいなら素直に言えよ」と俺は返すつつ軽く笑うと、
「相変わらずロマンがないなぁ。でも、今回は負けておくよ。一緒に見に行こうよ」
俺は、思わず鳩が豆鉄砲喰らったような顔で驚いた。
「おお。んじゃ今夜用意して行こうか」っと素直に返してしまった。
アリアは優しく微笑みながら「新しい表情ゲット!」と小さく呟いていた。微妙に俺に聞こえてるからな?気付かないふりするけど。
一応教会に許可を取り冒険者ギルドに軽く報告を入れて、俺達は今、教会の墓地管理小屋に居る。いやぁ、あれだね。こう言う肝試し関係は今も昔も変わらないんだろうって思う。人の怖いもの見たさ、好奇心は恐ろしい。
息を潜め、墓地を観察する。暗く周囲の明かりは、街頭に使っているカンテラだけ。闇を見つめていると、過去、現在のきっと自分が恐れているモノが見えてきたりする。今も昔も人は変わらない。きっと新しいモノを求めて旅をしてを繰り返し、遠い過去に思いを馳せ、また、未来を見つめるのだろう。
夜中を過ぎて月が一番高くに見える頃に、カンテラの灯りを布で抑えた人物がやって来た。墓暴きか?穴を掘る道具を持っているので間違えでも無さそうだ。幽霊の正体みたり枯れ尾花って奴だ。知的好奇心と興味が薄れ既にガッカリな気分だ。取り敢えず、この憤りは犯人にぶつけようと思う。
後ろから見付からないように……近寄って……後ろから袋を被せてポカッと殴り捕縛。犯人半狂乱。わめくわめく。煩いので袋をすこしめくり、布を口に突っ込み黙らせる。さてと正体は……医者のカルドスでしたよ。かなり、腕が良く知識も豊富で頼りになる医者だ。
話を聞くと治療の為の、知識を得る為に解剖して本を書いていたようだ。死体を切り刻んで調べるのは正直嫌悪感がある。だがその知識はこれから先の死者を減らせるかもしれない。
そこで俺は迷う事になる。他の医師を育てる知識を優先すべきか、信仰を優先するべきか……衛兵に突き出せば、この件は解決する。だが、腕の良い医者は常に必要だ。だが見逃しても研究を続けるのは難しいだろう。教会に協力を求めようと異端として処罰されるのは想像するに難しくはない。
アリアは詰まらなそうに石を後ろで蹴っている。取り敢えず、カルドスを家で相談するために連れて帰る事にした。
カルドスについては、不問にする事にした。警備隊と相談し重罪人の死体を入手出来るように根回しをする。研究で使用した死体は、荼毘に付す事で怨霊を封じ込める事にした。
カルドスは、それから20年かけて医師の研究書を完成させ。後年に医療の父と呼ばれることになる。俺達には関係ねえ話だけど。
-数日後-
春なんかぶっ飛んで夏になったんじゃねぇの?って位暑い日だった。いつの間にか日が暮れて辺りがオレンジ色の光で照らされていた。
「いやぁ、なんと言うか怖い話だったよねぇ。死んだ後に解剖されるのは流石に嫌だなぁ、一応縫って戻していたとは言えゾッとするよ。」と言ってアリアが少し苦笑いながら、身震いする。「ふん、アリアには何もさせねえよ。力は無いけど、俺が全力で死んでからも、護ってやるから安心しろよ」とそっぽ向きつつ耳まで真っ赤な顔でリーナシアは言う。そして、無言でアリアを抱き寄せた。
少しの間静かにくっついた後、アリアがポツリと呟く、「暖かで優しい感情を貴方が教えてくれたんだよ。だから、僕が君を護るよ。互いが互いを護るって素敵だよね」
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