第8話 お題8: 「拝啓、愛しい人。どうしていますか」で始まり「テーブルにメモと一緒にプリンが置いてあったから」で終ります。
前書き
今回は、ちょっとだけホラー風味で短いです。
出港から、数世代位の文明が退化する前の話になります。
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
「拝啓、愛しい人。どうしていますか?私は今、あなたの側に行く為に色々準備中です。昨日のペットショップで見せてくれた仔犬へのあなたの優しい瞳が忘れられません。……いつか必ずあなたの元へ参ります。……愛を込めて」
また、今日も手紙が届いていた。差出人の無い手紙はつらつらと文面が書いてあって、そして、私の昨日の行動がトレースされていた。
ここ一ヶ月毎日手紙で私の行動を送ってきていた。思わず、玄関に走り鍵が閉まっているのを確認する。そして、窓も鍵が閉まってる。風呂場もトイレも確認してしまった。
寒くもないのに体の芯から震え出す。ヤバイヤバイヤバイっ!
これ、ホラー以外の何物でもない。何だよっ何なんだよ
そういえば、いつ置いたのかテーブルにメモとプリンが置いてあるのが見えた。取り敢えず、取り敢えずだ。好物のプリンを食べて落ち着こう……。落ち着かなきゃ……。
気持ちが落ち着くような音楽も掛けて……震える体を抑えて、テーブルに向かうとプリンを持ち上げ、ピリリっとプラスチック容器からビニールを剥がし、スプーンで掬い上げて、黄色と焦げ茶色美しい色合いと甘い香りを楽しみつつ口に含んだ。
「……これはっ! ……美味しいっ!」口の中でカラメルの甘さと苦味、卵の甘さが溶け合いとても既製品とは思えない旨さだった。思わず、私は、プリンを掻き込んでしまう。
こんな美味しいプリンを何処で買ったか思い出せず。メーカーを見ようとフィルムを見るがただの透明フィルムだった。
「おかしい。だって個別で売ってるプリンにメーカーや商品名がないわけない……」少し考えていると、息苦しくなってくる。舌も痺れて……
「なん……でっ! こ……んなこ……とに」舌が痺れて言葉が出ない。救急車を呼ばないと。慌てて通信機を手に取ろうとするも上手くいかない。血の気が引き立ち上げる事が出来なくなる。気持ち悪い。さすがに気持ち悪い。
「誰っ……か助……けて……」
後ろから、静かに人影が近付いてくる。人影は私に背中から抱きつくと耳元で、「やっとあなたの元へたどり着いたわ……私の元へいらっしゃい」とプリンよりも、甘くささやくのであった。
薄れ行く意識の中で私は、独り暮らしなのに置いた覚えの物を、いや置いていないのに
「テーブルにメモと一緒にプリンが置いてあったから」食べてしまったのかっと後悔した。
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