第6話 お題6:「髪を切ったから、もしかしたら気付かないかもしれない」で始まり「きっと大丈夫だって、今なら言える」で終わります。
「髪を切ったから、もしかしたら気付かないかもしれない」
そんな不安が頭をよぎる。幼い頃は髪の毛が腰まであったのだが、効率と安全性を考えて、一年前に冒険者になる為にバッサリと切っていた。
幸い腕力が人並み以上にあった僕は冒険者になるのに特に問題はなかった。残念ながら武器と言う武器は使えない為に、籠手で直接殴り付ける方法で狩りをしたりしていた。一応ギルドの訓練には定期的に参加しているので多少マシな戦い方にはなった。
何ヵ月か前までは、新人狩りのPTも近寄って来ては居たけど、邪魔なので血祭りに上げてたら寄ってこなくなった。かわりくにPTを組めそうな人もあまり寄ってこなくなった。正直一人で害獣狩りも、洞窟調査もソロソロ限界ではあったのだ。上に上がる為には背後を任せられる仲間が欲しいと、常々考えていた。
僕は、不安な気持ちを押さえつつ冒険者ギルドに向かう。何故こんなに不安がっているかと言うと、僕達フォースコロニーの住人は五年前にバラバラに移住した為に、リーナと離ればなれになっていたのだが、なんと!冒険者ギルドで見つけたのだ。
明らかにあの目立たない容貌。瞳の色は、蒼みかかった黒。意志の強そうな少し濃い眉毛。幼い頃の弟分そのままだったので、直ぐに判った。気弱な子供だったリーナが少し大人になっていた。
会えた嬉しさと懐かしさ、そして、忘れられていないか不安とで、
緊張していた。
よし、声をかけようドキドキする。小走りでリーナシアの横に出ると、緊張で某有名ネズミの物真似みたいな声で「やぁ、リーナ!5年ぶりだね。元気だったかいっ」とテンション狂った感じで声を掛けながら、背中を思ったよりも強く叩いてしまった。そう、軽く叩くつもりだったのだ。お姉さんの余裕を見せつけてやるつもりでもあったのだが、いかんせん勢いが強すぎた。
「えっ?だrっっ!」残像を残して、慣性がぶっ壊れた不思議な動きをし、カウンターを破壊しながら奥に突っ込み破片と破壊音を撒き散らしながら、飛んでいったリーナは壁に当たり延びたのだった。
……リーナ、ごめん、大丈夫? ……ゴメン ……ゴメンね……
何だか遠くで女の子誰が泣く声がする。……顔に水が掛かる何だよこれ…… 何か柔らかいものに触れている頭がずきずきするが我慢をして薄目を開けるとアリア姉ちゃんが泣いている。鼻水たらして汚いなぁ、可愛い顔が台無しじゃないか? あれぇおかしいな確か姉ちゃんは無明都市に引っ越しして、それから会っていない筈。かなり振り回されたけど守ってくれてたんだろうなっていつも感じていた。それに髪長くなかったっけ? 頭混乱してる? あぁ、仕事で無明都市に来て報告しようとギルドに寄って……それからどうしたんだっけな?
そうそう、何か妙に甲高い声が聞こえて背中に衝撃があって……
がばっと擬音がでる程の勢いで起き上がり振り返るっ。
そこで見たのは
 ̄ ̄
取り敢えず、ギルドで報告をした後、アリア姉さんとお茶をする事になった。本人曰く再会記念と言うのだが、涙で顔がグシャグシャに成る程泣かれては断れないだろう?
薬草採取や、都市の清掃依頼などで生計を辛うじて立てている俺にとってお店でお茶は洒落にならない出費なのだ。
暫く雑談をした後、真面目な顔になり、PTを組まないか?っと
言ってきた。冒険者ギルドのランク的にはアリア姉さんがBで俺がF(新人)って所か。
アリア姉さんが言うには、背後を守る仲間が欲しいとの事だ。
俺は、現状をきちんと話す必要があると思い話した。
1.戦闘に自信がない事。
2.今まで薬草採取や清掃等の雑務しかしていないこと。
1については、ショートソードとショートボウは、ほぼ我流で、都市内か近郊以外の仕事をしていないからだ。
恐らく役にたてるとすれば、道具の整備や、武器の改修だろうか。
アリアは戦闘については先生に宛があるのと、武器の改修については、資金はあるのでやってみろ?と言ってきた。
アリアの現状を聞くと、籠手で殴り付ける方法で戦闘をしているらしい。それは……どうなのかと疑問には思ったものの籠手を作る事になった。
訓練広場に向かい素振りをしてもらう。何だろう? 素振りをしてもらった時の違和感。聞いてみると武器が軽すぎるようだ。
現状手に入る材料は鉄と革。籠手に射撃武器を搭載し炸薬で加速と威力を強化。重量も追加。楯変わりにもなるように。時間を貰う事にした。
《一ヶ月後》
・からくり
見た目は籠手の形をした鉄の塊。装着した状態で二段階引けるトリガーで炸薬を点火し、肘の部分で加速させ、インパクト時に爆発的させる。膂力がないと持ち上げるのも困難になった。12発装填できる。
投石ユニット搭載。スタンドを立てて狙うことも可能。
・からくり
基本性能は、変わらず、少しずつスリムな形をした籠手。
洞窟内や普段使われる。
同じくトリガーで発動する。5発装填できる。
投石ユニット搭載。
上記二点をアリア姉さんに渡す。結果……両方を軽々と持ち上げ、鉄の塊を15時間ぶっ続けで振り回す化け物が誕生した。
切れなくとも重さの衝撃でぶっ飛ばせる。
最悪距離があっても投石ユニットで狙撃ができるようになった。
「アリア姉さん宜しくね」っと言ったら、呼び捨てで呼べと叱られた。そうして、アリア姉さ……アリアと組んで仕事する事が増えていく事になる。
ーー
最初の方はバラけて仕事したりもしたのだけれど、リーナを鍛えたり、リーナが仕事失敗して僕の家に転がり込んだり、調査で何回か死にかけたりしたものだよ。お互いに背中を守り、仲間を庇い合う事で乗り越えてきたんだよ。
新人の君たちに一番言いたい事は、出来るだけ早めに仲間を見付ける事だよ。そして、無理をしない事。僕とリーナは、組んで2年ほどたったけど、短い時間で厳しい戦いを強いられたからね。
おかげでリーナは成長して背中を任せられる程度にはなったけども。
でも何が在っても、二人揃えば「きっと大丈夫だって、今なら言える」そう思えるようになったかな。
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