追想
チョコチーノ
君の前で
私は、ポツンと立っている墓石を前に考えていた。
今に至るまでの出来事を、アルバムの中身を思い出すように考え続けていた。
何か、とんでもない体験。はたまた冒険を繰り広げていた気がする。
一人じゃない、二人でだ。そして、命辛々勝利したらしい。だが、相方は死んでしまったらしい。
らしいっていうのは、病院である人に教えてもらったからだ。その人は、私の旧友だった。
私は頭を強く打って気絶してしまっていたようだ。本来なら死ぬのは相方ではなく私の方だったと、旧友は泣きながら、でも嬉しそうに話してくれた。
私は幸運だったらしい。
海の音が鼓膜を揺らす。波と砂と鳥と虫の声が私の心と頭を揺らしている。美しい場所だ、休むには絶好のスポットだろう。
私は、その墓石を見つめながら呟いた。
「君の名前、なんだっけなあ」
赤の他人と全く同じなのに全く違う君に、私は背を向けて歩き出す。
短い草がそよ風に吹かれ、さらさらと小さな波を作っていた。
追想 チョコチーノ @choco238
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