第2話 丸眼鏡


咲と仕事終わりにお茶してから数日たち、気持ちの整理もついた。



すべてを忘れるために全消去した。デリートデリートデリート

もらったアクセサリーもさよならさ。好みが違うものをわざわざ使う必要ももうない。お疲れさまでした。でも君は悪くない。

終わってしまったものは仕方ない。次にいかすために進むしかないのだ。こうやって強くなっていくのね。






「せりちゃん~!

元気だった~???おすすめの何かあるかしら?」


「こんにちは!お久しぶりです、元気ですよ!

そうですね、、、これとかどうですか?」



「やだぁ!めっちゃかわいい!!!

娘もこういう感じ好きそう!」



「ですよね!!

新作でございます!」



元気ハツラツな方は顧客のアミさん。

マグカップを購入する際に説明や相談に乗ったりした結果、意気投合。

いつしかお名前まで呼ぶ仲にまでになり定期的に雑貨や店内に少し置いてあるお洋服をチェックしに来てくれている。




今週から商品の入れ替えが始まる時期になり、季節ものの値下げや新作商品の入荷など仕事は山積みである。

段ボールから一つ一つ丁寧に検品する細かい作業は苦手だが、お客さんとおしゃべりするのは楽しくてすきなのだ。あいにとってはまさに天職である。



「そういえば、そこのカフェの新作飲んだ?

おいしかったわよ~」



「もうのんだんですか!早いですね!!!

休憩中混んでそうだったのでまだ飲めてないんです~」



「あら。帰り混んでなかったらぜひ飲んでみて!」



「のぞいてみまーす」




アミさんに娘さんがいるせいか、自分の母と買い物に来ているような気持ちでついつい話し込んでしまう。いつか娘さんにも会えるといいなぁ。

最近の近況だったりアミさんの職場でのことを聞いていたが、夕飯のじかん!と慌てて帰っていった。



外まで見送ったあとに店内の時計を見ると勤務時間を過ぎていた。

無駄に残業しないよう上司にも言われているし、退勤しよう。




店内のスタッフに退勤すると声をかけてから帰宅の準備をする。

今日は急いで帰らないといけない用事もない。カフェが混んでいないようならお茶してからかえろう。







カフェは相変わらず人でにぎわっていたが、夕飯近づく時間帯ということもあり持ち帰り客が多いのかいくつか席はあいている。

しかしながら店頭に置いてある新作商品のポスターには「完売」の文字が貼られている。本日分は終了してしまったようだ。



く、、、これは出なおすべきか、悩む・・・・・



気分としては新作の気分だったが、カフェラテでもいいような気もする。

せっかく来たのだら立ち寄っていくのも悪くない。うん。




「おきまりですか?」




「はい、カフェラテを・・・・」




ふと店員さんをみると目の前には先日執事っぽいと思ったお兄さんがいた。

渋いというか、硬派というか。今日は手袋はしていないようだ。

注文も終わり、コーヒーを渡されて席に着く。




あ~~

しみわたるぅぅぅ




周りに人があまり座っていなかった店の一番奥の二人用席に座った。

パソコンで仕事をしているおじさまや友達とおしゃべりしている大学生など様々だ。


仕事で服なども売っていることもあり、他人の服装や動きをついみてしまう。

スーツの柄、組み合わせ、小物など見ているだけでも楽しい。持ち物や服装はその人を表すものだと思っている。自分の好きなもの、気にかけないものなど選ぶものや選び方でその人の大事なポイントがなんとなくわかるような気がするのだ。

人の出入りを見つつ、トレーなどの片づけをしている店員が目に入る。




先ほどの執事さん。

よく見ると丸い眼鏡ではなく楕円型の眼鏡だ・・・



最近のはやりはシンプルなデザインの伊達眼鏡だが、彼の眼鏡は伊達なのか・・・

度入りであえて楕円を選んだのか・・・・



なんでその眼鏡選んだんだろう・・・めっちゃ気になる・・・






うっかり目が合いそうになり慌ててそらす。

さりげなく携帯を確認すると咲からメッセージがきていた。


雅くんの友人?にどうやらフリーの人がいるらしい。

知らない人でもないし、連絡だけ取ってみて考えていいとのことだった。

社会人になってなかなか出会いもないし、とりあえずお友達でもいいし紹介してもらおう。





どんな人かなとわくわくしながらカフェラテを飲み切り、カップを片付けた。




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