第4話
誰もいない屋上の更衣室。開け放たれた窓から暖かい風が入ってくる。
「ねぇ、あなたは誰なの。」
しばらくの沈黙。別に声に出して言っているわけではないが。側から見ればただ一人物思いに耽っている様に見えるだろう。
『貴方のなりたかった人物像、とでも言えばいいいかな。』
私のなりたかった人物像。
『そう。明るくて、誰にでも優しくて、頼り甲斐があって、でも少し天然。笑顔を絶やさない人。』
そうやって言われると、そうかってなる。私が憧れた人のいいとこ取りになっている。さっきだって、明るくてでも楽しそうに、私じゃできない喋り方をしてくれていた。これでまた今度あった時どうやって接すればいいか。
『貴方自身がそれを磨けばいいのよ。』
簡単に言ってくれる。できないからこうなって、もう一人の私を生み出してしまっているのに。
『じゃあ、毎回私を出すの?』
それはご勘弁願いたい。記憶がないのは辛い。
『何よ。努力もしないで。いいとこ取りするつもり?冗談じゃない。』
いたい。自分自身に言われると一層いたい。だって…って言いたくなってしまう。
『自分の仮面を取り繕うのは得意なんでしょ。』
それは、そうかもしれない。そうしないと生き残れないから。でもそれとなんの関係があるっているのだ。
『自分自信を欺けばいいじゃないの。』
あぁ、そういうことか。自分のオリジナルは無視して、そうやっていけば君を出さなくていいというわけね。
『出したくないならそうしなさいよ。』
でも、出てきたいっていうことはないの?
『別に。後からできた貴方の望みが擬人化しただけだから。』
とか言って、本当は出てきたそうじゃん。たまにこうやって話させてよ。
『な、いいの?』
楽しいもん。こうやって話せる子ができて。まぁ、自分だけど。後、いろいろ教ええてよ。話し方とか感情のコントロールとか。
『ありがとう。』
え、またどうして。
『貴方は今まで、こうやって作られた子に心を許したことなんてなかったから。』
え、そうだったんだ。知らなかった。無意識に潰してたってわけか。ごめん。
『そうやってごめんって言える様になったのもつい最近だからさ。あー、そろそろいったほうがいいんじゃない?ミーティングみたいだよ。』
あ、本当だ。ありがとう。行ってくる。
一際強い風が吹いて私の横を通り過ぎた。だけどその風は背中を押してくれている様な気がしたのはさっきの会話のせいなのか。
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