第2話
あの日から1週間がすぎた。そろそろ本格的に授業も始まってきて、高校生活という実感が湧いてくる。部活体験に、オリエンテイション。いろいろあったけど、頑張って今日も過ごしたい。それに、ありえないことにお友達もできたのだら。斜め後ろに座ってたあの子と、出席番号一番の子。二人とも可愛くて、話しやすくて、一緒にいるだけでほんわかする。まだ、手さぐり状態な気はするけど、仲良くはやれていると思う。
「ねぇねぇ、なんて呼べばいいかな?二人のこと。」
「ん?私は別になんでもいいけど。」
「私も。」
みんなのことどう呼べば分からなかったけど、とりあえず、下の名前でちゃん付けかな…。
「彩月ちゃんと、三葉ちゃんでいい?」
「全然大丈夫!じゃぁ、私も、来海ちゃんって呼ぶね。」
「私も。」
そんな感じでいろいろとすぎていいた。放課後には部活体験が待っている。入りたいところは決まってるが、とりあえず見ておきたいので行きたいのだ。マイナーなところだからそんなに人もいないし、大丈夫だと思う。外から暖かい風が吹き抜けていった。今日は春の日差しで暖かい。あぁ、私の高校生活も今日のような平和な気候で過ぎ去ることを願うばかりだ。私一人が、笑顔で当たり障りなくいればすぎる筈だ。難しいことはひとつもない。
放課後になり、部活体験の場所に行く。人気のない廊下に向かって階段を上がる一つの足音だけが響く。誰もいないのが逆に怖くなるほどだ。ちょっと止まって場所を確認する。…やっぱりあってる。ふぅっと息を吐いてもう一度階段を登り始める。…おかしい。さっきまで私一つの足音だったはずが、二つになっている。カツーン、コツーン、カツ。怖くて後ろは振り向けない。先輩であることを願いながらどうにか部室まで足を運ぶ。嫌なことばかりが頭を駆け巡るが、考えたって解決はしない。自然な感じを装ってそっと背後を伺うとそこには見覚えのある人がいた。
「……ッ…!」
部活でも、教室でも、こいつからは逃れられないのか。私は恐怖と隣り合わせでどちらもやらなければならないのか。なんなんだ。全く。お前は。
「あ、中宮さんもここにするの?」
笑顔で、話しかけるな。虫酸が走る。やめろよ。あの時みたいに、外で傍観してたみたいにスルーしろよ。なんでだよ。やめてくれよ。
「…うん。もともとここにしたいって思ってたから。君もなの?山下くん。」
もう無理だ。また、頭がショートし始めている。笑顔は張り付かせているが、意識までは保てそうにない。嗚呼、なんて私は弱いんだ。
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