白黒の青春に風よふけ
きりたにくるみ
第1話
「ー以上、321名の入学を許可する。」
体育館にマイクで拡張された無機質な声が響く。外は生憎の雨。晴れやかな高校入学__とはいかなかった。色とりどりの制服に身を包んだ同じような表情をしてる中、私は一人あくびを噛み締めていた。
「新入生退場。新入生一同規律。」
心なしか入学式の会場の雰囲気が緩んだように感じた。風の吹き抜ける連絡通を通る。あとは教室に行って先生の紹介があって、それからなんだっけ。まぁいいや。どうせ私は陰キャ生活をまた過ごすのだ。無難に過ごすのが一番だ。そう思いながら割振られた席に着く。結構後ろだな。え、周り男子しかいないじゃん。あ、斜め後ろに女の子いた。
「はい、皆さんはじめまして。担任の井上です。国語の教師です。よろしくね。」
先生の自己紹介が始まった。先生は国語の担当で、女の人。年齢は中年?ってんな情報はどうでもいいか。先生がいろいろ話してるな。みんなはどうしてるんだろうって…、みんな真面目すぎない?すっごい真剣に聞いてるよ。しょうがない。私も聞くか。
「じゃぁ、みんな今から自己紹介をしてね。」
……。自己紹介をやらなきゃいけないらしい。これって、前に出ていうやつだよね。あ、やばい。緊張してきた。
どうしよう。
なんかしくじったら?
噛んじゃったら?
スベったら?
なんか言われちゃうかな。嫌だな。
徐々に頭が白くなっていく。目の前は白黒に。過去のあの日のことがフラッシュバックする。過呼吸にならないようにだけ気をつける。
気がつけば終わっていた。何をしたのかはさっぱり覚えていない。よくあるのだ。切羽詰ったっ状況になると自分が何をやったか分からなくなって気がつくと終わってるの。まぁ、多分情報量が多すぎて脳が処理しきれてないだけだと思うけど。何をやったか覚えてないのが辛い。何喋ったかわかんないじゃん。はぁ。まぁ、どうにもできないけど。そう回想にふけっていると見覚えのある人がいた。
なぜ。お前がここにいる。
中学校の時の知り合いが同じクラスだった。ザ優等生の彼が。私の過去を知る奴が。あぁ、ここでも私は除け者扱いを受けることになるんだ。色が急速に無くなっていった。白と黒の情景。またこれだ。あぁ__
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