第49話 アルフレートの誕生日
最近アルフレートの様子がおかしい。
訓練後のお風呂も冬だというのにシャワー室を利用している。
もしかして…、何とは言わないが生えてきてるのか!?
確かにチョロっと生えてるのは生えそろうまで見られるのは恥ずかしいのかもしれない。
それとも何か!?
まだ予兆すらない俺に気を使ってるのか?
俺の方が年下だから気にしないのに。
ちなみにライナーも昨日「最初抜けた髪の毛が付いてると思ったら違ったよ~、成長期だって実感するなぁ」って照れ臭そうに言っていた。
こっちの世界は身体の成長は欧米並みなのかもしれない、身長も高いし筋肉も付きやすそうだ。
俺は何だか魂に関係してるのか成長が日本人並みに遅い気がする。
この夏で結構伸びたけど。
成長と言えば明日はアルフレートの誕生日だな、一昨日の休日に実家に行った時、貴族街の中にあるパティスリーで小さいワンホールのチョコレートケーキを買って来ている。
次の休みに実家で家族だけでお祝いするってオレインブルク伯爵家の家令から聞き出していたのでケーキが被らない様にチョコにした。
ちなみにサプライズ予定でライナーと二人で計画して、オレインブルク伯爵家にも口止めしてある。
その時俺とアルフレートが和解した件をとても感謝された、別に感謝される様な事じゃないと思うんだけど…。
夜にケーキを食べるのはどうかと思うので昼食後に俺の部屋でデザートを兼ねてお祝いするつもりだ。
サミュエル先輩にも二人を部屋に入れる許可をもらってある。
翌日、昼食後まで知らないフリをしようとライナーと示し合わせていつも通りにストレッチとランニングをした。
保養地まで馬車にずっと乗ってたのが悪かったのか、帰ってきてから行く前より身体が重くなってる気がする。
しかし、この約二時間のランニングにも慣れたので終わってすぐに食事を摂っても平気なのが凄く成長したなと感じる。
食事中についライナーと目が合ってソワソワしていると、アルフレートが怪訝そうな顔をする。
「何だ? 何かあるのか?」
もう食事も終わりかけだったので、周りに聞かれない様にこっそりアルフレートに耳打ちする。
「食事の後で俺の部屋に来て」
戸惑っていたが了承してくれた。
「ちょっと先に行ってるね」
食器を返却する時に小さいお皿を三枚借りていく、ちゃんとヴォルフを通して許可は貰ってある。
部屋にはライナーの部屋から椅子を一脚持ち込み、ライナーの実家の店から色紙を買ってよくあるチェーン状の飾り付けをしてある。
ケーキと紅茶を準備して、お皿とフォーク、おれとライナーからの便箋とペンのプレゼントを準備した。
準備が終わるとライナーに連れられたアルフレートが部屋に入ってきた。
「「アルフレート、誕生日おめでとう!」」
二人で声を合わせて言うと、部屋の飾り付けにも驚いて目を見開いている。
固まったまま動かない…。
目の前で手をヒラヒラと動かして声を掛ける。
「アル? どうしたの?」
声を掛けると顔をくしゃっと歪ませ顔を真っ赤にした。
「あ…、ありがとう…。 こんな事友人にしてもらった事なかったから凄く驚いたし、凄く嬉しい…」
後半はもう涙声になっていた。
「二人共、俺の誕生日知ってたんだな。 さっきまで普通だったから知らないのかと思ってたよ」
自分でも涙声になってる自覚があったのか、恥ずかしそうにはにかんだ。
「ライナーはともかく、俺と何年の付き合いがあると思ってるんだよ!」
バシンと背中を叩いてやった、一瞬痛そうにしたが、すぐに締まりの無い顔になる。
「さ、早く食べようよ。 時間なくなっちゃうよ?」
貴族街にあるパティスリーなだけあってとても美味しかった。
「あれ? この味…」
「気が付いた?」
実はケーキを買ったパティスリーはオレインブルク伯爵家御用達で、アルフレートのお気に入りの店なのだ。
「ああ、家では生クリーム派が多いからここのチョコケーキは久しぶりだ、二人共本当にありがとう…」
幸せを噛み締める様にケーキを味わう姿を見て、準備して良かったなと改めて思った。
今後実家との遣り取りで使うだろうと便箋とペンを選んだと言ってプレゼントを渡すと喜んでくれた。
「それにケヴィンさんとも連絡取る事もあるかもしれないし…」
ポソッとついうっかり口から思った事が零れてしまい、憤怒の表情で「あいつとは関わりたく無い」とキッパリ宣言していた。
余程馬車での事がトラウマになったのだろう。
休憩時間ギリギリまで話をして午後の訓練に向かった。
でもやっぱり訓練後は一人でシャワー室へ向かうアルフレートだった。
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最終回まで残り十話…、もう暫くお付き合い下さい。
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