第8話 武器の選択
三人共ソワソワしながら訓練場前でアルバン訓練官を待つ。
いつもまだ小さいからと子供用の
「待たせたな」
一時半キッカリにアルバン訓練官が姿を見せた、訓練場の外で使う用の武器庫の鍵を開けて見習い用の小さめサイズの刃を潰した数種類の剣が並んだ台を外へと引っ張り出す。
「まずは全ての剣で素振りをしてもらう、身体の使い方やバランス、あと本人の希望も聞いてから相談して最終的に決めるからな」
アルバン訓練官は大人用の片手剣を手に取り、基本の構えをとる。
「まずは各剣の構えと素振りの見本を見せる、後でお前達もやるからしっかり見て覚えるように」
片手剣、
正直アルバン訓練官を甘く見てた、この人かなりの実力者だよ、素振りの動きがめちゃくちゃ流麗でカッコイイ!
無駄の無い動きの正にお手本だった。
全ての剣を試した結果、個人的にしっくり来たのは双剣だった。
攻防一体だし万が一にも剣が折れた時にもまだ一本剣があるし、なにより浪漫を感じる…!
浪漫を基準にしたら日本刀があれば飛び付いたかもしれないけど、手入れが難しいからあっても使えないだろうな…、先に研ぎ師の勉強してからじゃないと。
「皆希望する武器はあるか?」
各自使いたい武器を伝える、アルフレートは盾と併用出来る様に片手剣、ライナーは安定するからと両手剣、俺は双剣だと言うと
「クラウスは双剣なのか、悪くはないが
さすが実力者、素振りを見て使い慣れた武器に気付いたようだ。
「はい、今までは体格の関係で
三人の武器が決定して二時間程扱う時の注意点や素振りをして過ごした。
今後身体の成長に合わせてサイズを大きくしていくそうだ、成長が止まったら自分専用を職人に注文するとの事。
余談だが近衛騎士は守護対象を庇ったり手を引いたりするのと見た目を揃える為に全員片手剣一択だそうな。
第三騎士団で良かった。
「今日はここまで。 明日からは洗濯か
「はい、わかりました」
「今日頑張った分、しばらく身体がキツイだろうから三日間は午前中洗濯か
「「「ありがとうございました!」」」
声を揃えて騎士の礼をとって見送る。
「皆が帰って来る前に急いでお風呂に入った方がいいね、行こうか」
ライナーがいそいそと寮へと向かったので追いかけた。
大浴場へ行くと俺が一番乗りだった様だ、誰も居ないから江戸っ子スタイルで入って行っても何か言われる事も無い。
頭を洗っているとライナーが入って来た。
「早いね、僕も部屋に戻ってすぐ来たのに」
ニコニコしながら隣に座る。
「クラウスの使ってるシャンプー凄くいい匂いだね、ドアを開けた時一瞬女性が入ってるのかとドキッとしちゃった」
悪気無く言ってるのはわかるがちょっとだけ恥ずかしくなってしまった、ブリジット姉様に次は女性っぽい香りはやめてもらう様言わねば。
「姉様が持たせてくれた物だから自分が使ってるやつと同じ物をくれたのかもしれないね、普段から嗅いでる匂いだったから意識した事無かったけど女性用なんだね」
ちょっと凹んでしまった俺を見て、慌ててライナーがフォローを入れる。
「僕の家は男兄弟だけだから使って無かっただけかもしれないよ、家に女の子が居たらきっとお風呂用品や美容関係は決定権持ってるだろうし! それに本当にいい匂いだし、アルバン訓練官みたいな人が使ってるわけじゃないからクラウスには似合うと思う!」
必死のフォローに思わず笑ってしまった。
「ちょ…っ、ふふっ、それアルバン訓練官に失礼だからね? でもまぁ、似合うと言うのは褒め言葉として受け取っておくよ」
笑った俺を見てライナーはホッと息を吐いた、二人で笑っているとアルフレートが入って来て、何故かライナーとは反対の俺の隣に座った。
あ、コイツ身体を洗う泡でほとんど見えてないとはいえ、俺のJr.をチラ見しやがった。
しかも何かため息吐いた…、まだ初恋云々言うつもりだろうか。
「アル、何か言いたい事があるなら言えよ、今朝からずっと無言で睨むのやめて欲しいんだけど?」
この先ずっとこんな態度をとられるとさすがに気分が悪いのでつい言ってしまった。
まともに話すのは二年振りくらいか?
「別に…見てただけで睨んでたわけじゃ…ない」
ポソポソと小さな声だったがちゃんと答えが返って来た。
「お前の髪…綺麗だったのに切らせてしまったままだったから…、何て声掛ければいいか分からなかったし」
目を合わせようともしないが、ちゃんと話している。
どうやら罪悪感をずっと抱いていた様だ、しかもただの目付きの悪いだけのシャイボーイか!!
「他の奴とは楽しそうに笑って話してるのに……俺とは目を合わせようともしないし」
なんだコイツ、意外と喋るな。
「そんなの睨まれてると思ったから難癖つけられない様に目を合わさなかっただけだ」
泡を流しながら正直に答えると、顔を上げて驚いた様に俺の目をじっと見る。
まるで泣くのを堪えている様な顔をするのでなんだか悪い事をしたような気になってくる。
「その、何だ…、これから同期として仲良くやっていく気があるならそれでいいんだよ。 これからは連携とったりしなきゃいけない時もあるだろうし」
「そうだな…、これからよろしくな」
僅かにはにかんで拳を突き出して来た、俺を女の子と思い込んでた子供の頃にやってたグータッチだ。
「ああ、よろしく」
数年ぶりにコツンと拳を合わせて笑い合った。
「いや~、いいもの見せて貰ったよ、友情だねぇ」
いつの間にか浴槽に浸かっていたライナーが訳知り顔でうんうんと頷いていた。
三人が風呂から出ると、ちょうど学校組が寮に戻って来たところだった、さっきの遣り取りをその他大勢に聞かれなくて良かった。
さすがにあんなアオハルな会話を聞かれるのは恥ずかしい。
一緒に夕食を食べる約束をして二人と別れて部屋へと戻った。
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