嘘の代償⑧
真鈴は帰り道を、一人歩いていた。 美樹がいなければ当然一人、だがその方が気が楽だ。 とはいっても、友達数人で楽しそうにしているのが気にならないというわけではない。
自分自身、このような体質ではなかったらそこに混ざりたいくらいだった。
―――もし、こんな状態じゃなかったら・・・。
明日になれば、全てがリセットされ初めから。 それを考えるだけでも怖かった。 今日一日、これだけ美樹に感謝したのも全て忘れてしまうのだから。
そのようなことを考え、注意が疎かになっていたせいか――――向かいから歩いてきた少年と、軽くぶつかってしまう。
―ドンッ。
「あ! ご、ごめんなさい!」
「・・・」
少年は真鈴のことをジッと見つめ、そして大袈裟に痛がって道路に転がった。
「うわぁぁぁ! 痛いッ!」
「え、嘘・・・。 本当にごめんなさい! 私が、うっかりしていたせいで」
「あー、これきっと全身の骨が砕けちゃってるよ。 明日になったら俺は、人間じゃなくてスルメイカになってしまうんだぁぁ!」
「そ、そんな大変なことに・・・!? ど、どうしよう・・・」
真鈴は道路でゴロゴロと転がる少年を見ながら、ただおろおろとすることしかできなかった。 こんな時に美樹がいれば――――そうは思うが、今は周りにも誰もいない。
「ぷッ、はははは! 嘘だよ、嘘。 そんなことあるわけないじゃん」
だがいつの間にか、少年はその場に起き上がり笑っていた。
「嘘、だったの・・・?」
「そりゃあ、そうでしょ。 もし軽く当たっただけで全身の骨が砕けるなら、俺は走ることすらできていないって」
「はぁ・・・」
「しっかし、信じる人がいるなんてな。 俺の嘘もなまったかな・・・。 いや、やっぱり初対面の相手には・・・」
少年は何かをぶつぶつと呟いているが、あまり聞き取れない。 ただ怪我もしていないというなら、一刻も早く立ち去りたかった。 今の自分は、美樹以外の人とは極力関わりたくないのだ。
「・・・とりあえず、私はもう行くね」
そう言ってそそくさと離れようとした時、少年に腕を掴まれ驚いてしまう。
「あ、ちょっと待てよ」
「え、あ、はい」
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