第4話殺しの基本

――それから一週間後。

「なぜだ?なぜできない!?....いや!この私に出来ないはずがない。考えろ。考えるんだ。」

ナンバーがブツブツとつぶやきながら、歩き回っている。

「おはよう。なにしているの?」

ギロリとわたしを睨む。いや、睨んだように見えただけかな。

「ムッ!......ルルロアか。」

よく見ると目の下にクマができている。そうとうお疲れのようだ。

「疲れてそうだね。」

「まあな。お前の武器を作るのに少々手間取っていてな....あのわら人形がポンコツすぎて、なかなか形にならんのだ。本来は2時間くらいで終わるはずなのだが...。」


「わらわはポンコツではないぞよよ。お前が未熟なだけぞよね。へなちょこ魔術士!」

いきなり見知らぬ女の子が、会話に割り込んできた。

長くてきれいな黒髪。そして大きな黒い瞳。肌は雪のように白い。身長はわたしと同じぐらいなのに、どこか大人びた雰囲気を醸し出している。

「だ、だれ!?」

「そういえば、この姿で会うのは始めてぞよね。ご機嫌ようぞよ。ルルロア。」

その特徴的な語尾.....。まさか!

「メグ、なの?」

「やっと気づいたでぞよかぁ~。久しぶりぞよねぇ。数日間会えなくて寂しかったぞよよ。」

「その姿。どうしたの?」

くるくるとまわりながら答える。

「わらわの生前の姿を魔術で再現しただけぞよよ。」

「ほう。元は人間だったのか。.....道理で武器として成立しない訳だ。武器とは人間の道具である。人間自体が武器となることなど、理に反するからな。」

そう言うとナンバーが愉快そうににやつき始めた。

やっと問題がとけてうれしいそうだ。だけど....。

「あの笑い方、キモいぞよ。変態ぞよね。」

メグが青い顔をさせながら、わたしにささやいてきた。

「そ、そうだね。」

たしかに、あの表情はちょっときもい。

「おい。全部聞こえているぞ。.....まあいい。二人とも私についてこい。」

「お前がよくてもわらわが、いやなのぞよよ。変態魔術士もどき。」

「穏便にことを済ませようと思ったのだが......。ここで殺し合うか?ポンコツ人形。」

まずい。早く止めないと、危ないことになってしまいそうだ。

「二人とも!くだらないことで喧嘩しないで!もっと仲良くしようよ。」

すかさず仲裁に入る。

「ルルロアがそう言うのなら、特別に許してやるぞよ。」

「.....無駄なことに時間を割かれる暇はないな。もういい。早くついてこい。」

よかった。

これで命を無駄にしなくて済む。


しばらく家の中を歩く。そして大きな扉の前で足をとめた。

「この第二ホールに用事がある。中に入るぞ。」

部屋の中は走り回れるぐらい広く、ちょっとした体育館のようだった。

「ナンバー。なにをするの?」

「ナイフ術や体術をここで教える。殺しの基本術を1ヶ月でたたき込んでやろう。」

うわー。なにそれ。きつそうだなぁ。

「魔術とかの特訓はしなくていいの?」

「それは後だ。魔術を行使するための体作りもかねて行う。.....これはそのための仮りの武器だ。受け取れ。」

青っぽい色をしたナイフを手渡してきた。

見ているとなんだか、こころが冷たくなっていくような感じがする。

「そのナイフなんぞよか?気味の悪い魔力を感じるぞよよ。」

「このナイフの中には、魔術を組み込ませている。おそらくそのせいだろうな。」

魔術を組み込ませて作られたナイフ。

なんか危なさそうだな。

「どんな魔術が組み込まれているの?」

「それは、実践で確かめてみろ。....そのナイフを私にあてれば分かるはずだ。さあやってみろ。」

言われるがままに、ナンバーへ近づいていき、刃先を体にあてようとする。

あと1センチで当たる!と思ったのもつかの間

ドスンッ

なぜか視界が反転していく。

そして気がつくと、うつ伏せの状態になって倒れていた。

「イタイよ。ナンバー。いきなり何するの?」

すぐに立ち上がって態勢を取り直す。

「ただで当たるとは言っていない。無論、抵抗はさせてもらうぞ。さあ来い。」

嘘でしょ。いきなり実践形式!?

まだなんにも教えてもらってないんだけどな。










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