第3話魔術と呪いと思い
自分で選べって言われても....。
見渡す限り意味不明なモノであふれている。
とりあえず物色してみようかな。
「これなんだろ?」
わらで作られたお人形が目にとまる。
妙にリアルで気持ち悪い。
これは選ばない方がいいよね...。
「お前、おもしろいぞよな。気に入ったぞよ。」
いきなり頭にキンキンと響く声が聞こえてきた。
「だ、だれ?」
辺りを見渡してみるが誰もいない。
「気のせいかな。」
「気のせいじゃないぞよ。」
さっきの声がまた聞こえてきた。
「どこにいるの?」
「目の前にいるじゃないかぞよ。」
目の前....?
前方を確認するが誰もいない。
「ほら!今目が合ったぞよよ。」
目が合った?そんな訳ない。目が合うどころか、人の姿さえも捉えられなかった。目の前にはわらで出来たお人形が、一体あるだけである。
「まだ分からないのぞよか?」
あれっ?今話し声と同時に、人形の口が動いたような。
「......まさかとは思うんだけど、あなたはお人形?」
「やっと分かったぞよか。そうだぞよよ。わら人形の”メグ”だぞよ。よろしくぞよ!」
そう言いながら、わらの人形がこっちに寄ってきた。
「よろしくしない。」
こんな気持ち悪い人形と関わりたくない。なんか呪われそうだし。
「ちょっ!?ちょっとまってくれぞよ!いかないでぞよ。」
「わたしは今、武器の材料を探すのに忙しい。」
「なるほどぞよな~。....そうだ!その材料にわらわを使うがいいぞよよ!」
「やだ。もっとかわいいのがいい。」
そう言って立ち去ろうとすると
「よよよよよぉ....。待って~。またすてられるのはいやぞよ~。」
しくしくと泣き始めた。
すてないで....か。
その言葉はずるい。
「泣かないでよ.........はあ。分かった。あなたを使ってあげる。でもほんとうに武器の材料なんかになれるの?弱そうだよ?」
「むむむっ!!なにを言うぞよか!?わらわは、わら人形界隈でも最高クラスの強さを誇るでぞよよ。」
メグは自慢げに話しているけど、それがすごいことなのかどうか、わたしには分からない。
どういう反応をすればいいのかな。
「その表情はなんぞよか!?さては凄さを分かってないぞよな。......いいぞよ。わらわの力の片鱗をみせてやるぞよね!」
メグの体が赤く染まっていく。
そしてブツブツとつぶやき始めた。
「呪いよ。呪いよ。呪いよ。この世の全てを壊し尽くせ。希望はやがて絶望となり、煉獄へとその身を焼かれよ。」
メグの周りに青い炎が発生した。
そして徐々にその炎の強さは、大きくなっていく。
....って!!このままじゃ店が焼けちゃうじゃん!
「メ、メグもうやめて!このままじゃやばいよ。」
「死に人は喪失した生を求め彷徨いあるく。やがて――」
聞こえてない!どうしよう。
「ルルロア。騒がしいな。どうしたんだ?」
ナンバーの声が後ろから聞こえてきた。
「わら人形が暴走して....どうしよう。」
「落ち着け。フム。大体のことは把握した.....なるほどな。」
燃えさかる炎に向かって歩いていく。
「わら人形。東にある異国の地で生まれた、まじない道具か。魔術の類いであると考えられてきたが、実際は似て非なるモノ。その本質は呪い。」
口元をほころばせる。
まるで子供のように。
「その呪いによって生まれた人形が、これほどの魔術を使うというのは非常に興味深いな。」
「ナンバー。その子は、わたしが選んだ武器の素材なの!だから、殺さないで。」
あのわら人形は、わたしと少し似ている。
せっかくの理解者を失いたくはない。
「ずいぶんと仲良くなったみたいじゃないか。大丈夫だ。もとから殺すつもりなどない。」
そう言うとしわを寄せながら、怪しく黒光りしているリボルバーに弾をこめた。
そして銃口をメグへと向ける。
「我が思いを伝えたまえ――。」
ドンッ。
銃弾が、わらで出来た体に命中する。
炎が消えてメグの体が床へ落ちていった。
「ナ、ナンバー!そんなことしたら死んじゃう。」
「安心しろ。すぐ起きる。」
「はっ!?なにごとぞよか?うわっ!お前だれぞよ?」
むくっとわらの体を起こしあげる。まるで何事もなかったかのような様子だ。
「騒がしい奴だな。それだから、自分自身の呪いによって暴走してしまうんだ。」
「なんだと!?この男!!えらそうだぞよ!きらいぞよ。」
「このポンコツわら人形を買い取らせてもらう。これで足りるか?」
「十分です。毎度ありー。またのご来店をお待ちしております。」
こうしてわたしたちは店を後にした。
「これで買う物は全てそろったな。」
服や靴、大方の日用品を買いそろえてもらった。
「ありがとう。ナンバー。わたしのために。」
案外優しいのかな。
「......幼い少女を全裸で過ごさせる趣味などないからな。仕方がない。」
「アハハハッ。照れてるぞよか?感謝されなれてないぞよねぇ~。」
メグがからかった口調であおる。
「.....公共の場で話すなと言ったはずだが。殺すぞ。」
ナンバーがギロリと睨む。
殺気がすごい。
「ルルロア!この男怖いぞよ。睨んで来るぞよよ。」
「メグ。しばらく黙っておかないと、本当に殺されちゃうよ。」
「何こそこそしゃべっている......もう帰るぞ。早くしろ。」
そういえば、どうやって家に帰るのかな。
まさか寒い雪山を徒歩で登ったりはしないよね。
「転移魔方陣を展開する。早く乗れ。」
そんな代物があるのなら、この街に来るときも使えばよかったと思うんだけどな。
その方が楽だったと思うし。
まあ、転移したらあのきれいな景色を見ることはなかったけど。
複雑な思いを抱えながら、魔方陣の上へ乗った。
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