第2話 タンクトップとショートパンツ
「すみません、警察と救急車を呼んで頂けませんか?携帯なくしたみたいで、お願いします。」
110番と119番にかけようとスマホが落ちてないか周囲に目をやるが見えるところには落ちていないようなので目の前の怪しげな男に声をかけた。
「あー、ごほんごほん…、改めまして私はKAMISAMAです。」
タンクトップにショートパンツ姿のムキムキマッチョがそう答えたが人が緊急事態なのに何言ってやがんだとイライラした。
「いや、何言ってるのか分かりませんが110番と119番に連絡してもらえませんか?怪我はないみたいですが一応事故の連絡だけはしておかないと。」
イライラを抑えながら努めて冷静にお願いした。が、
「あー、事故についてはこっちで適当に何とかしとくから心配しないでちょ!異世界転生用の演出なのよねこれ。」
ムキムキマッチョなのにクネクネしながらそう答える姿が余計にイラっとくる。
「すみません、ちょっと何言ってるのか分かりませんが緊急事態ですよ?見たら分かるでしょ?さ、早くお願いします。」
ダメだ、イライラがピークに達してるかもしれん。
「う~ん、おかしいわね~?日本じゃ異世界転生物のWEB小説が流行ってるから飲み込み早くてさっさと転生してくれるって聞いてたのに?どゆこと?」
あーダメだわ、埒があかないってこういうことなんだわ。
肩を落とした俺はとりあえず人が見当たらないのでさっき寄ったコンビニに歩いて行こうと男に背を向けた。
「どこ行こうとしてんのよ?」
え、え?えっ?えぇー?
目の前、鼻と鼻がくっつきそうな程の距離に口をすぼませたマッチョの顔が…、何かニンニクくさいし。
「う、うわわぁー!!あーびっくりしたっ!!」
思わず後ろに数歩下がってしまった。
負けじと何故か一瞬で距離を詰めてきた男はまた鼻と鼻がくっつきそうになりながら今度は俺の股間の先を軽くデコピンしやがった。
「アッ///」
変な声が出ちまったよ、トホホ。
「人の話をまず聞きなさい。あなたは生きてる。それに怪我もない。そして私はKAMISAMA。ここは時間停止している世界よ。」
また避けようと後ろに下がろうとしたが体が動かない。
まるで奥さんを抱きしめながら朝起きた時に左腕が痺れて自分のものじゃなくなったみたいなあの感覚が首から下全体に広がってた。
すまん、のんびり解説してるがめちゃくちゃ焦ってるからな、この思考もコンマ数秒だからな。
「え、何なんこれ?」
顔だけは何とか動かせたのでとりあえず言葉を発した。
いや、実際何が起きてるか分からないので頭の中はパニック全開になる。
自分のことをKAMISAMAだとか言っている男が俺の周りを品定めするかのように歩き始めた。
「やだ、なかなかいいヒップしてんのね。グレートプリケツ!!ふぅん、エッチな乳首してんじゃん。レロレロ。」
お前今絶対触ったり舐めたりしてるだろ!!
「何してんだてめー!!やめ…ろ……よな…アッ///」
不覚にも少し気持ち良かった。
「とまぁ冗談はここまでにして、今あなたの体は全く動かない状態よね。大人しくしないと私にいたずらされ放題なわけ。あなたの菊門にもとーっても興味があるの、私。あら、こんなところにローションが!!ほんとびっくりだわーヤダー!!
ゴホンッ!!そして、私はあなたに話がある。だから大人しく私の話を聞くこと。疑問質問は後から受け付けるわ。ここまでオーケー?」
男?はニヤニヤと舌を出しレロレロしながらペ○片手にそう脅迫してきた。
ショートパンツがパッツンパッツンにテントを張ってやがる。
しかも何だよあれ、エロビデの中でしか見たことないデカさじゃねーか。
訳のわからない俺は体も動かないしもうどうしようもない絶望を抱えながらあんな凶器で掘られたくないと思い頷いた。
「分かりました。大人しく話を聞きます。ただあなたの言ってることが何一つ理解できないんです。いや、私のケツを美味しそうに眺めていることだけは理解できますけど。」
もうね、半ば諦めの境地でしょんぼりと答えた。
「大丈夫。安心して!!さっきも言ったけど私はKAMISAMAなのよ。その証拠にほらっ!!」
KAMISAMAと名乗る男?は左手にペ○を持ちながら右手を俺の前に突きだし開いた。
その瞬間掌に白か黄色か分からない光がグルグルと渦のように巻きだした。
ポンッ!!
眩い渦の中からそれは掌の上に現れた。
…
…
…
…
…
ディルドだ!!
しかも『みち○くディルド』だ!!
すげーよこの変態手品師!!
こんなでかいもんどこに隠してやがったんだ。
しかも持って歩くとかとんだ変態紳士だよ、こいつぁ!!
「KAMISAMAさんって手品師なんですか!?いきなり掌の上にディルドが出てくるとかビックリですよ!!演出も凝ってましたね~。」
気が動転している俺は当たり障りのないコメントしかできなかった。
しかしなぜ手品でディルドを出す???
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