異世界転生すぐ死ぬ!!
@Chang
第1話 ストレスフリーな人生こそ至上
俺はWEB小説に登場するどこにでもいる普通の会社員、40才。
と言いたいところだけど微妙に違うんだな。
一人親方ではあるが一応法人成りしてる株式会社の経営者。
しかし、本職をオートメーション化しすぎてしまい1日の仕事量が少なすぎて暇なので、タブルワークで配達員もやってる。
本職にもっと力入れろという声も聞こえてきそうだがそこは人それぞれ、働くことが正直嫌いなのでこれ以上拡大したいとは思わない。
大きくすれば人を雇う必要もあるので諸々の手続きや維持等々がめんどくさいしストレスMAX。
それに本職の仕事の件で鬱になり自殺未遂もしたことあるのでストレスフリーな人生こそ至上だと思っている。
本職でそこそこ稼いで副業で社会保険や最低限の生活費を賄う、また配達員をやってると動くし喋るしでちょうどよい気分転換になるわけ。
こんな生き方もありかと思ってるよ。
それに結婚して奥さんもいるわけで。
奥さんは実家が経営している会社で責任者として働いている。
子供がいないので2馬力でまあまあそこそこな生活を送る毎日に特に不満はないんだよな。
まぁ俺の自己紹介はそこそこに、今日は月に1度の通帳記帳をしようと銀行まで来たってわけ。
いくつか口座を分けてるのでATMまで足を運ばないといけないのだ。
ネットバンクの口座ならWEBで印刷はい終了ってな具合だが気分転換も兼ねて通帳記帳にも来てるってところかな。
会社の経費等の引き落とし口座を軽くチェックしてから近くのコンビニに缶コーヒーとタバコを買いに来た。
そろそろタバコやめようかなと毎回思いながらコンビニ外の灰皿で至福の一服&コーヒータイム。
あぁ~この組み合わせはやっぱやめらんねぇな、などと意思の弱さを頭の隅に追いやっていた。
首筋にチクッとした痛みが走った。
アタタ、虫にでも刺されたかな、帰ってムヒ塗らなきゃなー。
とりあえず用事は済んだのでだらだら歩いて帰るとすっか。
俺の会社の事務所から歩いて5分くらいにこの銀行とコンビニはあるので大変便利なのだ。
田舎の市街地だから大した店があるわけではないが暮らしていく分には特に不満はない。
都会に行くのはたまにでいい。
奥さんが隣にいてくれたらどこだって幸せなのだ。
いつものように帰り道の横断歩道を渡っているとえらい飛ばしたくるまが向かってくる。
どうせ若いやつが調子こいてとばしてんだろうな、横断歩道前でキキッと急ブレーキでかっこよく止まるんでしょ、ぐらいにしか思っていなかった。
なぜか立ち止まって凝視してしまっている俺。
いやいやいや、全然止まる気配がないんですけどぉ!?
何か片手に持ってポチッてるんですけどぉ!?
身に危険が迫った時ってなぜか避けようという考えが出てこず、体が固まって動けなくなるよね。
というわけで突っ込んでくる車を眺めながら思ったことは…。
「…」
走馬灯やら見えるんだろうか、などと何かを考える前に衝撃で何も分からなくなった…。
…
…
…
頭が痛い。
目の前がチカチカする。
視界が定まらない。
考えがまとまらない。
脳が混乱しているのかあまりに気持ち悪くてゲロを吐いた。
うつ伏せのまま吐瀉物にまみれながら、車に撥ね飛ばされたがどうやら生きている、それよりも俺の怪我の具合は、歯は無事か、骨は折れていないか、スマホはどこだ、などとごちゃ混ぜの感情でフラフラしか動かない手で確認した。
意識がはっきりしないまま最初に思ったことが「歯は大丈夫、歯医者に行かなくても良い、助かった」だった。
あれだけの衝撃で外傷がないとか奇跡じゃね?と思ったがスマホがポッケにない。
外傷の有無よりもそこに落ち込んだ。
きっとポッケから飛びでちゃったんかなー、画面バキバキで買い換えないといけないかなー、2画面変態スマホで他に使ってる人も少なくて気に入ってたのになー、としみじみ思った。
それからようやくして誰かが救急車と警察に連絡してくれたかなー、でもサイレンの音とか聞こえねーなー、などと考えられるようになった。
ゲロくせーなどと思える頃には座れるくらいにはなった。
まだ少しボーッとした感じではあるが周りを確認する余裕ができた。
なんだろう、目の前の風景はいつも通りなのに何の音もしない。
俺を撥ね飛ばした車が電柱に突っ込んで動かなくなっているが運転手の姿が見えない。
人通りもゼロだ。
まるで時間が止まったような静けさの中、後ろから野太い声がした。
「あらっ!ようやく気がついたのね。」
ムキムキマッチョでスキンヘッド、アンカースタイル(イカリマーク)髭の男が真っ白な歯でニッカリ笑っていた。
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