第15話

「……私も参加しよう」


 ルフェルは腰に差した剣の柄へと手を当てる。

 しかし、それをすぐに騎士が止めた。


「いけません! あなたに万が一のことがあれば、我々は当主様に顔向けができません!」

「……しかし、戦力は一人でも多い方がいいだろう?」

「我々に何かがあったとしても、ルフェル様をお守りするのが使命なんです。ルフェル様は……万が一のとき、ここにいる皆さまをお守りください」


 騎士がそういって一礼をして、馬車から降りた。


「ルフェル様――」

「ルフェルでいいよ、アルフェア……。キミとは、対等でいたいんだ」

「……わかったわ、ルフェル。……不安なの?」

「すまないね。どうにも、じっとしているのは性に合わなくてね」


 ルフェルはじっと馬車の外を見つめている。それは私もだった。

 ……魔物の数は二十程だ。そして、騎士は三十名ほどいる。きっと負けることはないとはいえ、ただじっと見ているのは……私も辛い。


「私も――ここでじっとしてばかりは辛いわ。何もできないときが、一番辛いわ。私も飛び出して剣を振りたいくらいだわ」

「……アルフェアは活発なんだな」

「これでも、精霊学園では座学も剣術もトップの成績だったのよ?」


 私は軽く剣の柄を握る。


 騎士と魔物の戦闘が始まった。

 ……ほぼ、互角といったところだ。ただ、魔物の数が少ないので、時間さえかければ勝てそうだけど……ちょっと不安が残る。


 私たちはその様子を眺めていたが、私はちらとフェンリルを見た。

 ……そういえば、精霊と契約を結んでから私は一度も戦っていないが、精霊というのはこういう場で役に立つんじゃなかったっけ?


 まだ、精霊を用いた戦闘に関しては知識でしか持っていなかった。

 えーと、確か……精霊に私の魔力を渡すことで、精霊魔法が使えるのよね?


「フェンリル、起きて。みんなに支援魔法をかけてあげたいの。協力してもらってもいい?」

「うん、いいよ」


 フェンリルはすっと私の膝上から体を起こした。魔力をフェンリルの体に流し込み、それから私はフェンリルとともに精霊魔法を準備した。


 うん、こんなところかな? 自分で作ったときよりも、やっぱり魔法は楽に構築できる。

 魔法には大きくわけて二種類がある。一つは精霊魔法、そしてもう一つは基本魔法だ。


 基本魔法は、精霊の力を借りない魔法。だから、あんまり強くない。精霊魔法の十分の一ほどの威力と言われている。

 まあ、あくまで目安なのよね。契約した精霊によって、強くも弱くもなるから。


「それじゃあ精霊魔法『アタックプロテクション』、『バリアプロテクション』!」


 私がそういった瞬間、騎士たちの動きが大きく変化した。


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