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 今日は仕事復帰のお祝いと称して、いつもとは違う喫茶店で敬二さんと会っている。


「パッと見は分からないと思うんだけど、あと一週間は表には出るなって言われたよ」


 ホットミルクに口をつけながら相手の様子を見る。敬二さんは僕ではなく机に視線を向けて、ふくれっ面をしていた。その表情は子供っぽすぎないかな?


「心配性だなぁ」

「心配してトーゼンだろ。夕人くん、あんなにボコボコにされて。ホントはもっと休んでてほしいくらいなんだ。それなのにあの場じゃ、叫んだり泣いたり怒ったりできないし!」

「悪かったね。あ、送り犬さんにお礼のパンケーキがくるよ」


 ちょうど良いタイミングに、敬二さんの気を逸らせそうなスフレパンケーキがお皿に載ってやってくる。ブルーベリー、クランベリー、ストロベリーといった鮮やかな果物とアクセントとして添えられたミント、それらの色彩を強調する真っ白な生クリームが焼きたての生地の上で微かに揺れていた。


「うわぁ、うまそう……!」


 敬二さんは普段の鋭い目つきからは想像できないくらい無邪気に喜んでいる。僕も好物と対峙した敬二さんのキラキラと輝く瞳が好きだから、一緒になって喜んでしまう。ありがとう、パンケーキはマジで神。


「いただきま」

「あ、ちょっと待って」 


 さっそくパンケーキに手をつけようとする敬二さんを静止して、僕は机に置かれた彼の携帯電話を指差す。

 

「先に写真撮ろうよ」

「あ、そうだった!」


 敬二さんは慌てて携帯電話を構える。しばらくカメラ越しにパンケーキの美味しい角度を探しているようだったが、機械的で軽快な効果音が鳴って撮影が終わったことを知らせてくれた。

 

「敬二さん、それ僕の携帯電話に送ってくれる?」


 それ、というのはもちろん彼がいま撮影したパンケーキの画像のことだ。


「オーケー。すぐ送る」


 カバンから犬の遠吠えが聞こえる。僕はカバンから携帯電話を取り出して、警察官である恋人が送ってくれた画像を確認した。

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送り犬の遠吠え 烏神まこと(かみ まこと) @leaf6

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