まふゆの苦悩

「「いただきます」」


 私と千鶴は食卓に置かれている茶色の4人掛けテーブルに対面で座っている。


 私たちの目の前にはゴロゴロした人参とジャガイモが入ってるどちらかというと黒に近い色をしたカレーが置かれていた。アツアツになっておりとてもおいしい。味は甘口だが口に入れた瞬間にスパイスが口全体に広がっていく。


 うーんやっぱ手作りはおいしいな。ずっと一人で自炊だったから少しこだわりというものが生まれてる。スパイスも自分で配合してるからね。久しぶりの千鶴とのご飯、楽しいなー。


 けど、今はこうして千鶴と食卓にいるが実際関係が戻ったわけではない。今日は久しぶりに喋ってはいるが、偶然ご飯を作り忘れ、話す機会が生まれただけに過ぎないし、久しぶりに会う千鶴とは必要最低限の会話しかしてない。とにかく話しかけるよう頑張っていこう。


「おいしい?千鶴?」


「うん、私おねぇのカレー好き。」


 共にカレーを口にくわえながら話す。ちゃんと千鶴が返答してきて嬉しい。いつもは会うことすらなかったから。たぶん偶然的に与えられたこの機会ぐらいしか千鶴と話すことはできないと思う。だから少し、いやめちゃくちゃ怖いけど核心に迫ろう。



「千鶴、どうして急に避けだしたの?お姉ちゃんが原因だったら直すから!」


 普段は目線を合わせて喋ることは苦手なのでしないが、というかできない。けど思い切って、気持ちが伝わるように千鶴の目をまっすぐに見詰めえた。


「別におねぇが悪いわけじゃないよ。私はおねぇの作るカレー大好きだし、、、」


 早口でカレーを食べながら言う。ういやつめー。かわいい。


 けど原因は教えてくれないようだ。自分が原因じゃないことがわかって安心したがこれだと前に進めない。千鶴は夏姫に会う前まで唯一私と話してくれた大切な、大大大好きな妹だ。絶対に関係を元に戻すぞっ!!


「教えてくれないかな?千鶴?」


 ハッキリ言ってこれはしつこい。コミュ症の私でも分かる。けど!お願い!


 しかし、今までにできてしまった溝は埋まらないものか、


「うっ、、、」


 と言い放ち千鶴は引きながら走って自分の部屋に戻ってしまった。置いて行かれた私は二人分の食器を下げ、蛇口から流れる水で私の涙をごまかしながら食器を洗った。そして足を引きずりながら部屋に戻りベットに飛び込む。


 仰向けになり、右腕で目を拭いながら私は、、


 ああぁ私はどうしていつも駄目なんだろ。苦しいよ。好きな人から嫌いになられ、原因も分からずに逃げられるなんて。夏姫も同じようなものだ。私は目の前から夏姫がどこかへ行ってしまった原因がさっぱり分からない。悔しい。悔しすぎる。大好きな人達を失ってしまったのにその原因すら分からない私の愚かさが憎い。私にも夏姫みたいなコミュ能力が欲しい。千鶴みたいな可愛さが欲しい。


 胸が締めつけられる苦しみ、頭がぐちゃぐちゃになる悔しさ、心から燃える嫉妬が私に駆け巡ってきながら私は現実逃避するかのように眠ってしまった。



 翌朝、黒川さんの分のお弁当を作ることを除いていつも通りの朝が始まった。朝6時に起きお弁当を作り学校へ行く。それだけだ。いつもと変わらないことをやってるだけなのにしんどい。


 朝8時になったので家を出る。最近暑くなってきたので今はブレザーを脱ぎ長袖のカッターシャツ一枚になっている。千鶴はテニス部の朝練があるようで7時過ぎには出て行った。どうやら近頃大会があるらしい。普段は朝練が原則禁止の中学校だが大会一週間前か朝練が特例で認められてる。まぁ私もその中学校出身だけどご縁なかったなー。


 学校へ向かう途中にある住宅街の一本道を歩いている。今日は昨日の天気とは一変してとても陽気だ。空には雲一つない。


「おはようございます」


 上を見ながら歩いていたら前方から歩いてくる年配の女性に挨拶された。あ、挨拶されたー?返さなきゃ、朗らかに、朗らかに。


「おは、おはようございます」


 私が立ち止まり挨拶するがそこには誰もいなかった。先ほど挨拶してくれた女性はもう遠くの方に行ってしまっていた。


 はぁ私駄目だな。これじゃー夏姫とも千鶴とも仲直り?なんてできないよ。できたとしてもその後が大変になってしまうよな。はぁ、


 しかし私は上をもう一度も上げ、ダメダメ、朝からこんな気持ちじゃ。今日は黒川さんとご飯食べるわけだし頑張らないと。と少し自分を励ましながら歩いた。



 少し歩き十字路についた。右に行けば夏姫の家、前に進めば学校へと続いてる。もしかしたらここで待ってれば夏姫と会えるかもしれない。


 そんな考えが脳裏によぎった。けど会ったところで今の私は夏姫と喋る資格なんてあるのだろうか。夏姫が逃げてしまった原因を知らないのに。


 そう結論付け私はため息をつきながらあたりを見回す。すると電柱から物陰が見えてきた。


 ん?なにあれ?何かあるのかな


 そう思いながら近づこうとすると


「にゃ、にゃー」


 と可愛い鳴き声が。


 なんだ猫か。最近よく同じような鳴き声をした猫に会う。追っかけようかな。まぁでも学校には猫みたいなとっても可愛い子がいるからいいか。


 私は黒川さんとの昼食を楽しみに学校へ向かっていった。








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