久しぶりの可愛い妹
「千鶴?!!」
「おねぇーご飯は?」
ああ、そうだ。晩御飯作ってなかった。普段は8時にはできてるけど今日は疲れててまだ作ってなかった。しかし疲れすぎて頭が回らない。てか今何時?私は部屋の中の置時計を見る。時計の針は10時ちょうどを差していた。え?もうこんな時間?どうやら私は疲れてこんな時間まで寝ていたようだ。あぁーごめんね千鶴。もっと嫌われたらどうしよう。
「今から作るよ。ごめんね今日はとても疲れてて。」
「分かった……」
部屋の中と廊下で壁を隔てて会話してるため顔は見れてない。けど理由は何であれ千鶴と喋れたのは嬉しい。夏姫と会う前から仲良くしてくれた甘えん坊な大切な妹だ。
「今日は一緒にご飯食べない?」
「え?」
千鶴は驚いていて目を真ん丸にして呆然と立ち尽くしていた。
いけない調子に乗った。千鶴が私に距離を置いてからというものの一度も一緒に食卓に立ったことはない。さすがに急すぎたか、不快にさせてしまったか。
「わかった。私ももう寝たいから出来たらすぐに食べる……」
え?いいの?やった久しぶりに千鶴とたくさん話せる。
「今すぐ作るよ~~」
私はそう言いドアを開けるとそこには久しぶりに見る妹がいた。あれ?昔の千鶴と全然違う。そういえばいつから千鶴と面識を取ってなかったんだろう。あぁ確か3年前からか、千鶴が小学生から中学生に進級する時期のことだ。
3年前の千鶴はそれは鮮やかな紅の髪のツインテールでつり目をしていてまつげが長いで美少女。幼さと身長が低いこともがありとてもかわいかった。それでいて私に似たのか甘えん坊さんでいつも私に甘えてた。わがままで天真爛漫、仲の良い姉妹だと思ってた。けど千鶴が中学生に上がる頃、千鶴はいつの間にか私から距離をっていた。勿論私から話しかけに行くことはあったが避けるように自分の部屋に逃げていく。私はそういう時期なのかなとあまり深く追及はしないようにしてた。それでいつの間にか3年間がたっていたということだ。
しかし今目の前にいる千鶴は少し変わっていた。もともと長かったまつげはさらに伸び肉眼でくっきり見えるようになっている。紅のツインテールは変わっていないが中学になってから手入れに気を付けてたのか艶がありさらさらできれいだ。髪の毛の長さも変わっていて前は短くせいぜい耳の下ぐらいまでだった髪が肩甲骨あたりまで伸びている。身長はまぁうん。伸びなかったみたいだ。だいたい145cmぐらいだ。私は165cmを超えてるぐらいだからとても小さく見える。けど変わらないところもある。身長もそうだがなによりかわいさである。本当にかわいい。絵にかいたような美少女だ。
「顔を会わせたの久しぶりだね。」
「うん……」
目を右下にそらされる。ううぅ辛いな。久しぶりに喋れたんだ。何か言わなきゃ。
沈黙が私たちの周りで続く。
あああぁぁーそうだった。私コミュ症なんだったぁー。どうしよどうしよ、
考えろ考えろ。私の16年間で培った知識を思い出せー!
私の頭に稲妻が落ちた。はっ!私はある本を思い出した。完全版 サルでも分かる友達作りのコツ~これであなたもボッチ卒業!!友達100人できるかも?!~だ。やっぱりこのタイトルはどうかと思う。まぁ買った私もだけど。確かその本にはこう書かれてた。「まずは相手に本音を伝えることが大切です。本音を言うことで会話が広がりその後の関係も円滑に進むでしょう」ってね!答えが見つかった喜びで昂ってる。
よしっ!
「昔に比べると少し変わったね。昔も可愛かったけどもっと可愛くなったね!千鶴!」
私はニコニコしながらそう言うと、
「え?」
戸惑いの表情でこっちを見てくる千鶴。やってしまった。コミュ症がいきなり喋ろうとしたらこうなる。それは経験上分かってたのになー。
「ごめん。千鶴。」
とりあえずいきなり変なことを口走ったことを謝る。いまいち千鶴との距離感がわからないなぁ。
「うん……」
千鶴はばつの悪そうな顔をしてる。もうだめだ。疲労のせいか判断力が鈍りすぎだ。
「ご、ごめんねー今すぐにご飯作るから。」
私はそう言うと早急に台所に向かった。ふー気まずかったしね。台所に入って赤色の冷蔵庫を開ける。上段から順に見てくと目に留まったのは人参、ジャガイモ、玉ねぎ、あーうん。これはカレーだね。さてと頑張りますか。
私は全く働かない頭を必死に振り眠気と闘いながら料理をする。まずは野菜全部洗って切るとするかー。ジャガイモ、玉ねぎを手際よく切り、あとは人参のみになった。
しかし眠気には勝てなかったようだ。太い方から切っていたが基本のグーを忘れてしまい、ぼーっとしていたことも相まって左手の中指を切ってしまった。
「痛っ!」
思わず声をあげてしまった。切った中指の第二関節あたりから少し血が流れまな板に広がった。でもそこまで傷が深いわけでもなく血の量も少量だ。私が絆創膏を取りに行こうとする刹那
千鶴が私の指を口の中にくわえ、口腔内で丁寧に私の傷口に舌を這わせてきた。生暖かい感触が私を襲う。そして傷口を圧迫するかのように舌で押してくる。少しヒリヒリするがそれ以上に舌の柔らかい感触に包まれて気持ちいい。
「大丈夫、おねぇ?」
私の指をくわえるために左膝を地面につけ片膝立ちの状態で上目遣いで尋ねてくる。
「えぇうん大丈夫。」
何動揺してんだよ私は。自分でも顔が赤くなるのがわかる。は、はずかしい、、それより千鶴はどうしたんだろう?やっぱり距離は置いてきたものの私のことは嫌いじゃないのかも。それに指をなめる幼さが昔の千鶴を彷彿させてくる。可愛いな千鶴。よかった、昔の可愛い千鶴のままだ。
人参の下りから落ち着いてあとは煮るだけになった。千鶴は食卓に座りスマホをいじってるようだ。さて煮てる間にお風呂にでも入ろう。
「お風呂に入ってくるね、千鶴」
「うん」
あまり気持ちの入った返事には聞こえなかったけど返事をしてくれて嬉しい。
部屋から下着やらなんやらを持ってきて洗面所に入る。そして一気に服を脱ぎ浴槽へと向かう。軽くシャワーを浴び、緑色のバ〇が入っている湯船につかる。
ふぅー疲れたー。今日は色々あったなー。黒川さんとの出会いに夏姫との喧嘩?かな?それに千鶴との久しぶりの会話。良いことも悪いこともたくさんあったし夏姫とはあれっきり会えてないのが気がかりだ。千鶴は昔と変わってるところがあったが今も可愛い千鶴だと思う。まぁ指をなめてきたときは驚いたが。何はともあれ明日は落ち着いた一日になるといいなーー
ガラッ
ん?何の音?千鶴が入ってきたのかな?
「千鶴?」
返事は返ってこず、洗面所は静寂に包まれていた。気のせいか。最近疲れてるのかな。
大体20分ぐらい湯船につかった後体を軽く流し風呂から上がった。部屋着に着替えようとしたところ私の下着が無いことに気づいた。あれー?私疲れすぎかな、いつの間にか洗濯機に入れたのか、最近ずっとそうなんだよね。まぁ洗濯するときはあるからいつの間にか入れてるんだろう。
私は風呂から上がり台所で椅子に座りながらドライヤーをかけていた。そろそろカレーができそうだから千鶴を呼ばなきゃ。どうやら私がお風呂に入ってる間千鶴は自室に戻っていたらしい。呼びに行こうと千鶴の部屋に向かう。
コンコン
ドアを二回ノックした。反応がない。あれ?大丈夫かな?
「千鶴ー?ご飯できたよー」
「ひゃう!!あ、あぁ今行く……」
「どうしたの?」
「なんでもないよ、おねぇ」
「分かった」
ドアから千鶴が出てくる。バタバタと出てきたのか少し鼻息が荒い。どうしたんだろう?
あ!そういうことか相当おなかすいてたんだね。やっぱり千鶴はかわいいなぁ
上機嫌になる私と千鶴は一緒に食卓へと向かっていった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます