第27話 仲里 紗綾2

 二日目の撮影日、お母さんはスタジオで挨拶をしてから帰った。

 そして順調に撮影は進んで、終わったのはまだ一時を回ったところだった。



「ありがとうございました!」



 このあとどうしようか、少し悩んじゃう。

 この時間なら最後の授業には間に合うっぽい。

 それで授業が終わったら、すぐに凛のいる教室に行く。

 今日は撮影でお休みって言ってあるから、きっと凛はビックリしちゃうと思う。

 …………。

 この案はすごく捨てがたいけど、やっぱり我慢する。



「紗綾、撮影早く終わったしお茶でも行かない?」


「ごめんね。今日はやめとく」



 マネージャーと途中で別れて、私は凛の家に帰った。

 家に着いたのは三時前。

 凛がまっすぐ帰ってきたとして、早くてもあと一時間半くらいはある。


 私は紙袋から、新しく買った下着を取り出した。

 新しい下着は海外ブランドの高級ランジェリー。

 フランスのブランドで、今最も評価が高いと言われているランジェリーブランド。

 豪華でありながらエレガントなレース使いで、女性の身体を華やかでセクシーに格上げしてくれる。


 かなり奮発して三セットも買ってしまった……。

 勝負下着と言っても遜色ない下着はいくつか持っていた。

 でも、凛にもっと私のこと綺麗だって思ってもらいたいと思ったら、買っちゃってた。


 ローズワイン、黒?紺、白……。

 どうなるかはわからないけれど、今の私は凛がいたら抑えが利かないと思う。

 もしかたら下着を見られちゃうこともあるかもしれないから、油断なんてできない。

 どれがいいかな?


 下着をしまい、お米を研ぎながら考える。

 可憐で清楚、だけど豪華なレースで色気のある白?

 ディープネイビーのレースと素肌のコントラストが映える黒?紺?

 愛らしさと大人のセクシーさがあるローズワイン?


 最初はあんまり私に興味はなさそうだった。

 そんな凛を見て、半分は面白かったから。

 あとの半分は凛が可愛かったからアプローチをしてみた。

 確かに私が主導権を握ってたと思う。


 なのに今は本当に……好きになっちゃってる。

 なんでもしてあげたいって思っちゃうんだもん。

 一緒にいたから好きになっちゃうってことも、あるよね?


 急いでご飯の支度をしていると、玄関の鍵が開く音が聞こえてきた。

 ちょっとだけアピールすることを決めて、私は玄関に出迎えに行く。



「おかえりなさい」



 笑顔で可愛らしく凛を迎える私。



「ただいま。紗綾もおかえり」



 凛もうれしそうな顔でお返事をしてくれる。

 それが可愛くて……。



「ご飯にする? お風呂にする? ――――」



 凛にしちゃった。

 私は最後まで言えずに、凛にキスしちゃってた。

 本当は可愛く、私にする? って言うつもりだったのに。


 唇を離すと、凛の瞳がぽぉーっとしてる。

 そんな顔を見ちゃうとまた胸がキュンとして、私は凛の首にキスしてた。



「じゃ、じゃぁ、お風呂を先にしますね」


「うん。じゃぁご飯の準備しておくね」



 凛がお風呂に入ってる間に盛り付けまで済ませ、私もお風呂の準備をした。

 シルキーなパジャマと……黒?紺の下着にした。

 ほのかに透けて、知的な色香が漂う大人の女性という謳い文句の下着。

 きっと凛も好きだと思った。


 二日振りに一緒に御飯をして、私もお風呂に入る。

 お気に入りの入浴剤の匂いのなか、シェル型の大きな湯船にゆっくり浸かる。


 そのうち、一緒にお風呂に入っちゃったりして?

 一人で凛とお風呂に入る妄想をして悶えました。


 お風呂から上がって、ドライヤーで髪を乾かす。

 あとは寝るだけ……。

 そう思うと、途端に胸の鼓動が大きくなった。


 さっきキスをしてしまったことを思い出してしまい、ますますうるさくなる。

 こんなにドキドキしちゃっていたら、凛に伝わってしまいそうな気がした。

 でもずっとここにいるわけにもいかない。


 リビングに戻ると、凛はソファーに体育座りをしてスマホでネットを観ていた。

 芸人さんがやってるネット配信のチャンネル。

 私は凛の隣にくっついて座って、頭を凛に預けて一緒に見る。

 そうしていると、なんだかすごく落ち着いた。


 スマホの画面ではなにかトークしていたけれど、私は画面を見ているだけで頭にはなにも入ってこなかった。

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