第28話 小悪魔な紗綾

 紗綾が頬を赤くして凛を見つめる。

 赤くなっているのは顔だけではなく、シルキーなパジャマの襟元からのぞく胸元まで赤い。



「あっちに行こ?」



 紗綾がスッと立ち上がり、凛の手を引く。

 照明は紗綾によって消され、目が慣れない暗いなか寝室へと二人は向かった。

 紗綾が先にベッドのお奥側へと行き、凛があとからベッドに入る。


 凛が紗綾の方へ向いて横になると、頬に手が添えられた。

 ほっそりとした指の感触が凛の頬を包んで、唇が重なった。

 唇を重ね合うだけのキスを何度もして――――。



「お姉さんと昨日の続き、しよう?」



 そう言うと、紗綾の手が凛の脇の下から背中に回されて身体が寄せられた。

 凛の首筋を紗綾がペロッとする。

 凛が紗綾を見ると、下から紗綾が凛を見上げていた。



「今日ね、新しい下着なんだよ?」


「そ、そうなんですか?」


「どんなのか見たい?」



 凛は答えに迷っていた。素直に言えば、もちろん見たかった。

 それは下着が見たいのではなく、紗綾が着けている姿が見たいということ。

 だが同時に、今の紗綾との関係を考えると、これ以上はまずいとも感じていた。


 紗綾と一緒に寝ているだけでも、理性がどこかに飛んでいってしまいそうになる。

 そこに紗綾の視覚的な魅力、まるで誘惑のような言葉。

 いくら紗綾に襲わないでねと言われていたとしても、限界を凛は感じていた。



「紗綾、俺……紗綾のこと……好きになっちゃってる。

 だから、これ以上は我慢できなくなっちゃうと思うから……」



 紗綾は芸能人で、凛は一般人。

 凛には紗綾と恋人という関係になることが、許されるのかがわからなかったのだ。

 だから気持ちを打ち明けることで、凛はこれ以上迫るようなことはしないでほしいという予防線を張った。


 気持ちを打ち明けることは、ほぼ告白と同じこと。

 凛の鼓動はドクドクと鳴り続ける。

 これでキスされることもなくなるかもしれない。


 凛は恐る恐る紗綾を見ると、紗綾は目を大きくし、てたと思ったら目を細めた。



「凛? 本当は見たいのに、我慢してるの?」



 今更ここで否定しても説得力はない。

 凛は素直に白状した。



「は、はい……」



 凛の答えを聞いた紗綾が、唇の口角を少し上げたのを凛を見た。



「じゃぁ私のこと、もう一回好きって言ってくれたら、見せてあげる。

 ね? だからもう一回、好きって言って?」



 紗綾が一つボタンを外して肩までが露出する。

 紗綾は少し肩を上げて、両腕で下から胸を押し上げるような態勢になって座った。


 何度も見たわけではないが、凛が記憶しているブラの紐よりも、今着けているブラの紐は少し細い感じがした。

 鎖骨も少し浮き上がり、どうしてこんなに美しいと思うのだろうか?

 そんな風に凛は見てしまっていた。



「私のこと、好き?」



 まるで目の前にグラビアアイドルがいるみたいなポーズで、紗綾が控えめに訊いてくる。

 凛はそのまま答えてしまっていた。



「好き」



 また紗綾の目が大きくなり、その瞳は潤んでいた。

 そして肩の辺りまで下がっていた上着が、肘のところまで下ろされる。

 少し恥ずかしさがあるのか、紗綾は顔を少し俯かせて斜め下に視線を向けていた。


 紗綾の着けていた下着はレースが豪華にあしらわれ、レースから透けて見える白い肌を魅力的にしている。

 少し斜めになっているせいか、背中のラインが腰に向かってしなやかな曲線が浮かび上がる。

 それが対比となって、胸がより強調されていた。

 


「上着で、動けなくなっちゃった……。下は、凛が脱がせて?」


「い、いや、でも……」



 そう言うと紗綾は両足を揃えて、凛の方へ伸ばしてくる。



「は・や・く」


「…………」


「早くしてくれないと、襲っちゃうゾ?」


「わ、わかりましたから」



 凛は紗綾のショートパンツのパジャマに手をかけて、ゆっくりと下ろしていった。

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