第4話

オウガ国を出てから精霊の里や迷いの森にある温泉に行ったり道中色々あったりしてなんだかんだ半年が経った。


ソレが起きたのは、次の国へ向かう道中だった。


「いっ!?」


「姫様!どうした!?」


「ティアラ!?」


突然頭に激痛が走り思わずその場で頭を抑えうずくまる


「いっ…っぅ…!」


その時私の頭の中で前世の記憶が凄い勢いで流れ込む。


『お姉ちゃん、知ってる?

罪人と聖人続編出たんだよ!』


この子は…誰なのか思い出せない

なのに、どこか懐かしい声。


『なんだっけ?それ。』


『もうっ!この前お姉ちゃんもやってたしょ!?

宰相ルートで!途中で何でこいつこんな偉そうなの?とか言って攻略見て辞めちゃったやつ!』


腰に手を当ててプンスコ怒る女の子

その女の子の顔は黒く塗りつぶされ見えなかった


『あぁ、アレか。

続編って?アレで終わりじゃないの?』


面倒くさそうにポテチを食べながらテレビを見る前世の私


『なんとっ!悪役令嬢が主人公なの!

ほら、どのルートでも悪役令嬢は追放だったりするじゃない?

追放された後の悪役令嬢が主人公で

その悪役令嬢は前作の隠しキャラ魔神と自分の居場所を探す旅をするの!

そこで出会う攻略対象と恋をするって話!』


『へぇー』


『えっとね、ケモミミショタのチナでしょー

オネェなアヤメ、それに悪魔のティオ!

んーと…あとは何だったかなぁ』


『あ!思い出した!そこに出てくるーーってのがね!もう凄いのよ!というか!攻略対象全員ヤンデレで一癖も二癖もあってヤンデレ好きの私には堪らないのよ!』


『ーーもうヤンデレ彼氏居るじゃん

そんなんやってんのバレたら監禁まっしぐらだね。

そーれーにー!どうせ最後まで続かないって、私は』


『それは、勿論内緒でやってるから!

でも出てくる隠しキャラ、お姉ちゃん好きそうだよ?

目がね、綺麗なのよ』


『気が向いたらやるよ』


「姫様!」


「え…?」


ビクッと体が反応し周りを見ると知らない部屋だった

誰かに呼ばれた筈なのに、部屋には誰も居なかった


「…続編…。

もしかして…私はまだ…ゲームのストーリーから抜けられてない…?」


魔神…ランと旅に出た。

それは私の意志だと思ってた…

だけど…ランと出会う事も…私が旅をする事も…決められていた事だとしたら…?


「私の…意志…っじゃない…っ?」


ポロッと涙が溢れるのがわかった。


それじゃあ、まるで私は操り人形ではないか。

そこに私の意志など存在せずただ操られるがまま動く…そんなの…私の人生じゃない…!




こうして今悲しく思う気持ちですら…まやかしなのかも知れない

そう思うと何を信じたらいいのかわからない。

自分ですら信じられない。


「…もしかしたらっ…っ!」


骸達も私がヒロインだから優しいのかもしれない。

優しい言葉は全て言わされている…言葉だったら…?


「っ…どうしたらっいいのっ…!」


どうしたら私はこの舞台から降りて自由に自分の意志で動ける?どうしたら…


「あ…何だっ…簡単な事…か。」


ベットからフラリと立ち上がり窓を開け外を見た。

下見れば高さ的にはマンションの15階くらいだろう。


「これで…私はこの舞台から…おりられる…」


ブツブツ呟きながら私は窓から飛び降りた。


私は弱く、他人に操られる人生は耐えられない

周りも自分も疑いながら生きていくには荷物が重すぎて息ができなくなる。


次生まれ変わる事があるなら、私は普通の人になりたい。

誰かに操られる事もなく平凡に生きたい


「あの子…最後になんて言ってたんだろ…」


その言葉を最後に私の意識はなくなった

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