第5話
『ーーちゃんっ
ぼくといっしょのおはかにはいって
うまれかわってもいっしょにいてくださいっ!』
茶色のふわふわした髪をビシッと七三分けして
小さな歪な花束を私に渡す男の子
『ごめんなさい。
わたしパパとけっこんするからーーくんとはいっしょのおはかには、はいれないの』
『えっ!?だ、だめだよ
おとうさんとむすめはけっこんできないんだよ!
ぼくとけっこんしてよ!!??』
泣きながら土下座をする男の子の頭をポンポン撫でる私
この男の子…私は知ってる筈なのに…名前が出てこない
思い出せない。
これは私の記憶なのだろうか…?
『もうほんとうにーーくんはなきむしだなぁ
もしも、ーーくんがパパよりカッコよくてパパよりすごくなったら
そのときはーーくんとけっこんする
だからなかないで?』
『ほ、ほんとうに!?
ーーちゃん!やくそくだよ!』
『『ゆーびきりげんまん
うそついたらはりせんぼんのーます!ゆびきった!』』
仲良くゆびきりをして笑いあうふたり
急に景色がガラッと変わり私の姿も年をとっていた
『ーー!どうして僕を置いて行っちゃうの!?
帰りは一緒に帰る約束でしょ!?
僕彼氏だよ!彼氏だよね!?』
私の腕に縋りながら泣く男の子を面倒くさそうに見る中学生の私
『約束には5分以内に教室まで来なかったら一人で帰るっていう項目もあった筈だけど?』
『うぅっ…確かにそうだけど、30秒遅れただけなのにっ…!
あっ、そういえばね今日は僕の家でご飯の日だね!
何食べたい?』
『何でもいいかなぁ。
というか、暑いのにひっつかないで!』
『それじゃあ、手繋いでくれる…?』
『はぁ…仕方ないなぁ。』
『えへへ、ーー大好き!』
『知ってる……………私も好きだよ』
ボソッと誰にも聞こえないくらい小さな声で呟いた
『!!!????
い、いま私も好きって…!好きって!!
あぁ、ーー本当に好き大好き愛してる。
これからもずっとずっと一緒にいてね』
『はいはい!もういいから早く帰るよ!』
『お姉ちゃん!ーーさん!今から帰るの?私も一緒に帰るー!』
『ーー。走ったら危ないってば。
早く帰ろー。お腹すいた』
私は…何を忘れてる?
何で生きてた頃の事がこんなにも思い出せない
私以外の顔は全て塗りつぶされて見えない
なのに、どうしてこんなに懐かしく感じるんだろう
どうして…こんなに恋しく感じるんだろう…?
帰りたいのに帰れない日々。
大切な記憶だとわかるのに…どうして思い出せないの…?
……帰りたい。あの場所に帰りたい…
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