第3話

あれから、チナ君の案内のもとオウガ国を堪能した。

時間が経つのはあっという間でもう2日目である。

私達は明日違う国へたつ


「姫様。今…いいかな?」


「うん、大丈夫だよ」


扉からコッソリ覗くチナ君を部屋に入れた


「あのね、僕姫様が大好きだよ。」


嬉しそうに笑っているのに

その顔は何処か寂しげだった


「ありがとう。」


「姫様。姫様はね、姫様が思ってるより周りに愛されてるんだよ。

だけどね、愛って美しくもあり怖いものなんだ。

だから、これだけは忘れないで。

愛と憎しみは紙一重だっていう事。

時に人は愛するがあまり愛する人を傷つけるって事を…覚えていて」


「わ、わかった。」


何かあったの?とか

どうしてそんな事を突然いうの?とか聞きたかったけれど

チナ君は聞いても答えてくれないだろう。

彼は、私に忠告をしに来たのであって質問に答えるつもりはない。


「姫様、それじゃあゆっくり休んでね!

明日からまた移動で大変だろうからさ!おやすみ!」


ニコっと笑い部屋から出ていった。


「…愛する故に傷つける…か。」


そこまで人を愛する事が…私には出来るんだろうか

私にはそこまで愛される程の魅力なんて…あるんだろうか




「姫様、忘れ物はない?」


「うん、ないよ。」


荷物の最終確認を骸としてチナ君のお家から出た


外では狼達とランが涙を流しながら熱い抱擁をしていた


「また来るからな…っ」


クゥーンクゥーン


「姫様、これ僕からのプレゼント」


チナ君に渡された箱を開けてみると


「ネックレス?」


「うんっ!これはね、姫様を一度だけ守ってくれるよう僕が祈りを込めたんだっ

コレを使う時が来なければいいとはおもうけど

本当にどうしようもなくなったら宝石を砕いて。」


私の手からネックレスを取り私につけてくれるチナ君の声は何処か悲しげで…私はなんて言葉をかければいいのかわからなかった。


「姫様、大好きだよっ…

また来てね!」


精一杯無理して笑うチナ君の顔を見ると胸が痛くて悲しくなる


「っ…うんっ!チナ君!またね!」


チナ君に聞く事はできなくて、私はただ笑って手を振った。

誰かの心の中に入り込むには、私には勇気がなくて…

私はチナ君の事を知らなすぎた。


心の中で聞かない言い訳をして私達はオウガ国を後にした。


此処で聞かなかった事を後悔する時が来るなんて思いもせずに。


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