いざ、オウガ国へ。

第1話

私達は途中寄り道をしながらゆっくりとオウガ国へ向かっていた


「骸!ラン!見て!

狼の形の門だよ!」


狼の口の部分が門になっていた。


「ちょっ!姫様!暴れたら危ないから!」


「あ、ごめんごめん」


ランは、ポカーンと口を開け空を眺めていた


「どうだ、初めて見る青空は」


ここに来てやっと、天気が晴天になった。

上をずっと見ながら涙を流すランは、とても綺麗だった。

まるで一枚の絵画のように


「…こんな…綺麗なんだ…」


私達にとっては当たり前の空。

だけど、ランにとっては初めて見る空。


「これから色んな景色を見ようね!ラン」


「…っうんっ」


涙を流しながら二カッと笑うランは、彼処に居たときのような笑顔とは違って

何か吹っ切れたかのように綺麗だった


「これ美味しそう…

あ…そういえば、私お金持ってないっ!」


オウガ国へ入り沢山並ぶ露店を見ていたけれど

そういえば、一切お金持ってない!


「金は俺が持ってるから気にすんな。

ランも好きな物があんなら遠慮せず言えよー

…というか、その前に服買うか」


あ、そういえば私結局ランの服借りてるんだった…


骸とランと手を繋ぎ狼さん達を連れ適当な服屋さんに入った。


「姫様は、好きなの見ておいで。

お前はどうせわかんねぇだろうから俺と一緒な」


「えっ!?ちょっ!!」


ランの言い分等聞かず問答無用でランを引きずり紳士服の方へ行った骸。

骸があんなに私が知り合った人と親しくするなんて珍しいな。

何か…少しもやっとする…いい事なんだけどさ…ランにとって…


「んー、これから暑くなるかしら?」


気を取り直して服を見てまわる。

もう令嬢ではないんだし、あんなフリフリゴテゴテドレスを着なくてもいいし…


ワフッ


「ん?これ着てみればいいのかしら?」


ワフッワフッ


狼達が持ってきた服を受け取り尋ねるとコクコク頷く狼達。


「わかったわ。少し待っていてね」


服を持ち試着室へ向かった



狼の門をしているだけあって

この国では何処のお店でも狼の立ち入りが許されている。

前の国じゃありえない光景ね…


そんな事を思いながら狼達が持ってきた淡い黄色のワンピースを着た。

ワンピースには、半透明なひまわりが描かれていた。


シャツ


「どうかしら?」


カーテンを開けるとチョコンとおすわりをする狼達が待っていた


ワフッワフッ


私の姿を見て尻尾をブンブン振ってぴょんぴょん飛び跳ねくるくる回る。

どうやら、とても似合ってるみたいね。


「それじゃあ、一着はこれにしようかな。

選んでくれてありがとう」


狼達の頭を撫で後2着を見繕った。

一着動きやすいパンツスタイル

もう一着は狼達が選んでくれたワンピースの淡い赤に半透明な椿の花バージョン。


「あら、サッパリしたわね」


決まったので骸の所に行くと

何故か髪の毛もサッパリ切られ横を刈り上げられたムスッとした顔のラン


「コイツが突然切ってきたんだ!」


どうやら、ランはご不満のようです


「でも、似合ってるわよ?」


「っ…だけどこんなに短いと…目が見えるだろ…」


骸が籠に入れた服はどれもフードはついてないものね


「見えてもいいじゃない。そんなにキレイな瞳なのだから。

何か言ってくる奴がいたら私がとっちめてあげるわ!」


瞳の色や髪の色だけで勝手に決めつけるなんて理不尽極まりない。


「姫様は、ひ弱だからそういう時は俺に任せてくださいねー

それじゃあ、お金払って来るから待っててー」


籠を持ちレジへ行く骸


「…本当か…?」


「ん?」


恐る恐る尋ねるてくるラン


「…綺麗…って…本当か?」


こちらを伺うかのようにチラチラ見ながらモジモジするラン


「えぇ、本当よ。

それに、骸も片方は赤い目よ!貴方とお揃いね!」


「…フッ…そうだな。」


骸をチラッと見て笑うラン。

実は、私も骸と同じ瞳の色だけど

それは内緒にしとこう。

せっかく、骸が魔法で隠してくれてるのだから。

骸は、右目が赤く左目が紫だけど

私は、右目が紫で左目が赤い。

今は魔法で銀色になっているけれど。


骸を見れば目が合い私を見てニコっと笑う骸。

笑うと細くなる目。でも隙間から見える色は私と同じ。


何故、骸は隠さないのかと尋ねたら

姫様と同じモノを隠したくないんだと

俺は皆に自慢して歩いてるんだと嬉しそうに笑いながら言っていた。

それなら、私も隠さなくていいと言ったけれど

この世界で両目の色が違う事は異端の印であり良くは思われないのだと…そう教えてくれた。

私は無力で自分を守る事すら出来ない。

使える魔法だってろうそくを灯す小さな火ぐらい。

そんなので、自分の身など…守れない


「姫様っ!その服そのまま着ていきますよー

それじゃあ、次は何見ますか?」


「え、えっとね、さっきランと美味しそうだって話してたんだけどね、彼処のお店!」


私が負の思考に絡めとられそうになっていると

いつも骸がそこからすくいあげてくれた。

ニコっと笑って姫様って呼んで手を握ってくれる。


何で…骸は私の側に居てくれるんだろ



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