第一王子side

どうして…私とティアラ嬢が此処まで嫌われねばならないのかわからない。


「ミヤネっ…!私はっ「貴方を本当に愛してるのよ…」えっ…」


「母上が私に願いがある時にだけ言う言葉ですよ。

いつも…いつもっ…そう言って下手くそな作り笑いを見せていたの…覚えていないんですか?

私が…どれだけ貴方に愛される弟達を見てきたと思っているのです…

私に…一度でもっ…あの顔を見せた事なんて…っないじゃありませんかっ!」


弟達を見つめる両親の目は愛に溢れていた。

私を見る時とは…違って…。

小さかった頃は、それは私が不甲斐ないからだと…そう思った

けど…そんなの関係なかった。

私だから…駄目だった。

私が私である限り彼等は私を愛してはくれない。


少しだけ…私はティアラ嬢が羨ましかった

彼女は愛され守られこの国へ預けられた。

国へ来れば騒ぎが起きティアラ嬢に迷惑がかかるからと外で会っていた。

そこまでしてくれる人がいる事が…羨ましかった。


「ミヤネ…」


「そんな顔したって…もう遅いんですよ父上。

私達王族が彼女を傷つけ国を滅ぼし民を殺した。

その事実は覆らないんですよ…

もう…遅いんです」


「ミヤネ…っ!私はっ…!「心からお前を思っている…そう言いたいんですよね?

それは母上と同じく私に問題ごとを押し付け何とかして欲しい時に父上がよく口にしていた言葉ですよ」


どうして…出会ったばかりの彼等の方が

ずっと過ごしてきた家族よりも優しいんだろう。

どうして…っ

私は只彼等に愛されたかった。家族の一員になりたかった。

それを願う事は…そんなにいけないことでしたか?


「ミーヤネっ

思ってる事は全部今言っちゃいな。

これを逃せば何も伝えれないんだからさ。

だーかーらーっ!ここで背負った荷物全部おろして一緒に帰ろ?」


ニコッと優しく笑い微かに震える私の手を握った。


「っ…私にっ…っ…帰る場所が…あるんですか…?」


ポロポロ零れ落ちる涙をセッカさんをチョコで餌付けしながらセラさんが拭いてくれた。


「うんっ!僕と一緒に僕の国へ帰ろっ

帰ったら一緒に皆でご飯食べて一緒に皆で丸まって寝るんだ。

帰ったらミヤネがやりたかった事、今やりたい事をやろう。

僕はミヤネを全力で応援するからね!」


「…っぅ…それはっ…楽しそうですねっ…っ

だけどっ…私はっ…彼女を守りきれなかったっ

貴方達が守っていた彼女をっ…守りきれなかったっ」


帰る場所なんてなかった私に、何で帰る場所を与えてくれようとするんだろう。

私は…彼女を守りきれなかったのに


「ミヤネ様。その件ですが

コレは、姫様からのお手紙でございます。」


そう言って渡された紙には見慣れた文字が書かれていた。


ミヤへ


今私のせいでミヤが苦しんでると聞きました。

ミヤはミヤを責めすぎです。

今回の件は、ミヤのせいではありません。

彼等と貴方は別の人間であり貴方が責任を負うことはありません。


いつも言いそびれていましたが、

いつも助けてくれてありがとう。

いつも気にかけてくれてありがとう。

貴方が居たから私は頑張れていました。

貴方は精一杯やってくれてました。

私の事や公務の事で走り回り、目の下に隈がいつも出来てましたよね

貴方が眠るのはいつも私の横で腕を組み少しだけ仮眠を取る。それだけでした。


セラさんから、貴方はその国を出ると聞きました。

私は正直それがいいと思っています。

ミヤにも、自分の為に生きる時がやっときたんです。

私も今は自由になりこれから今迄知らなかった世界をみてまわろうと思っています

ミヤ。私は貴方の幸せを何処にいても想っています。

いつか、また貴方と出会えると信じて…


ティアラ。


ポタポタ落ちる涙のせいで文字がボヤケていく


「っぅ…っ」


ミヤ。それは彼女だけが呼ぶ私の愛称。

…彼女だけが呼んでくれた…。


「…っ私っ幸せに…っなれますか…っ?」


「それは、ミヤネがこれから見つけるんだよ。

というかっ!ミヤネにしか見つけらんないよ!

その為には色々試さなきゃ!ね!」


「ミヤネ…いーこ…いーこ」


「私っ…いつかっ胸を張って彼女に会いたいですっ

私は幸せになれたよって…っ胸を張って言いたいっ…!」


「うん!そうだね。

それじゃあ、それを目標に頑張ろう!

エイエイオー!」


「おー?」


腕を突き上げニコッと笑うチナさんと

首を傾げながらもチナさんの真似をするセッカさん。


「ふぅー…よしっ」


軽く深呼吸をして頬をパチッと叩く。

私が幸せになる為の一歩を踏み出す為に…私は彼等を切り離さなければいけない。


いつか優しく私を気にかけてくれた彼女に逢うために

堂々と友達と言えるようになる為に…私は彼等に近付いた。


もう…一人じゃないから。



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