第16話 新たな仲間と新たな旅の予感
あのクエストから三日が経ち、地道な治療を施したハルタの体は、傷痕は残ったものの治った。
「あっ。アリー。今日の掃除は俺がやるよ。ほら。傷も治ったし。」
「そう?でも、ハルタに全部任せるのはまだ不安だから、二人でやりましょう。」
「うん。わかったよ。さて。今日も張り切って行きますか–––––ッ!」
勢いよく伸びをした後、ハルタとアリルは掃除道具を取り、廊下の掃除を始める。
「そう言えば聞くの忘れてたけど、貴族会議ってのはどうなったんだ?」
「あー。そうね……。今言うのもいいけど、明日話すね。」
「なんで明日なんだ?」
首を傾げアリルに聞く。そうするとアリルは人差し指をピンと立てる。
「明日から新しいメイドを雇う事になって。その子が来たと同時に言おうと思うの。」
「マジ!?メイドが来るのかー!どんな子なんだろうなーー!?」
興奮した様子で踊り始めると、アリルはジト目でハルタを見つめる。それ見たハルタは深呼吸してから「ごほん」と咳をつき、
「まぁ、明日になったらわかる話だな。さて、掃除に集中しましょうか。」
「………そうね。」
若干納得していない様子だが、アリルも掃除を再開させた。
***
次の日になり、新たなメイドとの対面する時間になった。
「いざ、会うってなるとなんか緊張するな……。」
「そこまで緊張しなくても大丈夫よ。あっ、来た!」
アリルは目蓋を大きく開き、遠くからやってくる新たなメイドを見つめる。
遠くてどんな顔かわからなかったが、髪の色はなんとなくだが、わかった。
薄い紫色をした髪の毛で、肩にかかるぐらいの長さだ。
「ん?あの髪色。見た事があるな………。」
ハルタは目を細め、遠くから歩いてくるメイドを見つめる。
徐々に顔が見えるようになり、そしてその顔はハルタの知っている顔だった。
たった一日だけだが、森の中で共に行動し、大きな勘違いで争う事もあったがなんとか和解し、共に明日に向かって生きようと決めた少女………。
「エレナ!?エレナか!」
「ハルタ君!」
ハルタとメイドの少女–––––エレナは同時に走りだし、再開を喜ぶ。
「あはは。自分がしたい事ってメイドかよ。」
「まぁ、そんな感じです……。」
ハルタは笑いながら言うと、エレナは照れ笑いをしながら言葉を返す。
「あれ?二人は知り合いなの?」
歩いてやってきたアリルは不思議そうに二人を見る。
「あぁ。前の魔獣駆除の時に一緒になってさ。」
「そうなんだ。見た所、仲良しそうだしよかったわ。」
「あぁ。まぁ、いろんな事があったけど、それを乗り越えて今みたいな感じになったんだよな。な?」
突然話題を振られ、困惑するエレナは苦笑する。
「あれは……私の早とちりが原因ですけどね。」
「ん?まぁ、いいわ。それじゃあ。ハルタも気になってたと思うけど、前にあった貴族会議で得た結果を話します。」
アリルは真面目なトーンになり、話し始める。
「結果だけを言うと、一ヶ月後に北の王国、ネルエルに行く事になったわ。」
「北の王国って言うと確か……、英雄進撃って言う英雄譚に出てきたな。そこか?」
「うん。そこに行くの。行った後はしばらく、私の知り合いの屋敷に泊まる事になるわ。」
「そっか。会えなくなるのは寂しくなるけど、俺達はここで待ってるよ。まぁ、一ヶ月後だけど。」
苦笑しながらそう言うと、アリルは不思議そうな表情をし、
「えっ?二人も行くのよ?」
「そうなの?俺達、行っていいのか?」
「もちろん。」
「まじか。アリーと離ればなれなんてまじでつらいからよかったー。」
ハルタはあははと笑いながら力が抜けていく。アリルがいなくなると寂しくてどうにかなってしまう自信があったからだ。
「うん。言うべき事も言ったし、エレナ。改めて自己紹介をお願いします。」
「はい。今日からここから働かせていただきます。エレナと申します。よろしくお願いします!」
自己紹介を終え、エレナは笑顔を見せた。
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