第12話 エレナ
エレナは決して狂人者を許す事は出来なかった。出来ればこの世にいる全ての狂人者をこの手で始末したいと考えるほど、狂人者に対して憎悪を抱いていた。
八年前、まだ十歳だったエレナは、目の前で両親が狂人者に殺されたのを見てしまったのだ。
「あ……、あぁ!」
狂人者がいる前で声を出してしまい、見つかってしまうが、
「ほう。子供がいたのか。うーん。子供に試しても意味無いしね。逃してあげよう。うん。僕って優しいね。うん。」
時刻はとっくに夜で、狂人者の姿が見えなかったのだが、ヘラヘラと笑う声だけが、エレナの耳に聞こえてくる。
「うん。僕はなんて優しいんだろ。うん。うん。それじゃあ、お嬢ちゃんもお元気で。うん。」
幼いエレナでも、今喋っている者の頭がいかれている事がわかった。
目の前で両親を殺しておきながら何が優しいのだ。それは優しいんじゃなくて、ただ残酷なだけだ。
それからのエレナは、時が止まったのだ。狂人者を殲滅する。ただそれだけの為に生きてきた。
駆除者になったのも、魔獣と戦っていればいずれ狂人者に出会うだろうと思い、続けてきた。
狂人者とは、魔人からなんならかの恩恵を受け、魔人の復活を企んでいる集団らしい。
だから、ハルタの不可思議の現象を見た時、魔人の力を貰った狂人者だと思いこんだのだ。
「……何これ?」
森の中で突然光った場所にたどり着くと、そこには青髪赤目の男が、魔獣に触れ何かをしていたのだ。
「何をしているんですか!?」
「うん?うん、魔獣を操ってる所だよ。うん。それでどうかした?うん?」
当たり前のように言い放った男にエレナは嫌悪を抱く。
「狂人者……!!」
「うん?そうか。僕達は狂人者なんて呼ばれてたっけ。うん。あまり認めたくない言葉だけど、うん。そうだね。狂人者と呼ばれている集団に属しているよ。」
「ッ–––––!! フラ・ブレイ!!」
風の刃を男に向かって飛ばすが、見えない何かによって塞がれてしまう。
「うん。危なかったね。うん、うん。まだ、名乗ってないのに攻撃は酷くないかい?うん?」
男はため息を吐きながらそう言った後、少し間を開け、手を広げる。
「僕の名前はメルヘルス・ライナー。うん。以後お見知り置きを。」
「狂人者の名前なんて覚える気なんて––––無いッ!!」
エレナは雄叫びを上げながら、応用魔法を利用し強さを増したフラ・ブレイをメルヘルスと言う男に向かって飛ばす。
「はいどうぞ。」
メルヘルスは自分の目の前を指差すと、魔獣がそこに飛び込んで、エレナのフラ・ブレイによって切り刻まれる。
「なっ!?」
「うん。酷いよね。魔獣なんて呼ばれてるけど彼らも一つの生命なんだよ?それを奪ってなんとも思わないの?うん?」
「あなたが……前に魔獣を呼んだんじゃ!!」
「うん。そうだよ。でもね、それが無かったら僕が死ぬんだよ?うん。出しても出さなくても結局、君の手によって誰かが死ぬ。うん。それは酷い事だよね。うん。」
メルヘルスは涙目になりながら、何故か笑みを浮かべる。
「だからこれは、復讐。それと正当防衛だよね。うん。」
「がはっ!?」
メルヘルスが喋り終えると同時にエレナの左肩がエグれ、血だらけになる。
「外れちゃったな。うん。次は外さない。」
「––––––何やるのかは知らないけど、とりあえず阻止させてもらうぜ。」
メルヘルスの背後から声が聞こえると同時にメルヘルスは何者かに殴られ、吹っ飛ぶ。
「待たせたな。お前の仲間のお出ましだ。」
見ると、そこには動けないはずのカイドウ・ハルタと、二手に分かれていたトレイタが立っていた。
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