第13話 仲間だから
時は少し遡る。
「ぐッ–––––あああああぁぁぁッッ!!」
痛みを堪えるように雄叫びを上げ、体を起こしていく。
「––––エレナの後を追うのはいいけど、今の俺はボロボロだ。それに誤解を解くのも難しいよな。」
また、悲しい言葉がハルタに飛んで来るかもしれない。それをわかっていながらもハルタは前に進み続ける。
「痛い……!けど止まるな!!」
自分に言い聞かせる。この足が止まらないように。心が折れないように。
「ハルタ?ハルタ!!」
確かめるようにハルタの名前を呼び、今度は確信したような声で何者かがハルタを呼ぶ。
声がする方へ向き、誰か確かめる。
「–––––トレイタか?」
「あぁ。待たせたな。」
姿を現したのは、金髪で短髪。人柄が良さそうと感じれる顔の大柄な男のトレイタだった。
「どうしたんだ?そんなにボロボロで……。それにエレナはどこだ?」
「エレナはさっき光った所に向かった。俺のこれは……ただ掠っただけだよ。」
大事な部分を隠し、事実を伝える。エレナの事をあまり言えない。これを言ったら間違いなくトレイタは動揺する。
「そうか。ハルタはどこへ?」
「俺はエレナの後を追おうとしてるんだけど傷が思った以上に痛くてな。…………あれだけの痛みを経験してるのに情けねぇ。」
後半の話を聞こえないような小さい声で呟く。前半を聞いていたトレイタはポケットから何か取り出した。
「これは?」
取り出したのは黄色い液体が入ったポーションだった。
「治療薬だ。飲んどけ。」
「ありがとう。」
ポーションの瓶を開け、一気飲みすると、傷があっという間に消えていくのがわかった。
「凄いな……。擦り傷がもう消えてる。味もなんかエナジードリンクみたいだし……。」
「エナジードリンクってのは知らないけど、ハルタについて行くよ。」
「あぁ。よし、改めて行こうぜ。」
治った体でハルタはエレナの後を追うため、走り出す。
「待ってろよ。お前の仲間が今迎えに行くからな!!」
***
そしてエレナのもとにたどり着いたハルタとトレイタは、攻撃しようとしていたメルヘルスに先制攻撃したという事だ。
「ぶふぉッ!!?」
ハルタの拳がメルヘルスの頬にぶつかり、そのまま勢いによって吹っ飛ぶ。
「待たせたな。お前の仲間のお出ましだ。」
「ハルタ……君と、トレイタさん?」
エレナは戸惑いを隠せない表情でハルタを見る。
「なん……で?」
「当たり前だろ。」
「えっ?」
「俺達は仲間なんだ。助けるのは当たり前だろ?」
これ以上に無い笑顔を見せつけた後、目の前にいる謎の男と、その周りにいる魔獣を見る。
「トレイタ。まだ治療薬あるか?」
「あぁ。後一本だけだが。」
「そっか。ならエレナにあげてやってくれ。女の子にその傷は酷い。」
「わかった。」
トレイタは治療薬を取り出し、エレナに渡す。エレナも大人しく治療薬を飲んでくれた。
「うん!?うん?後ろから殴ってくるってどういう神経してるのかな?うん?人としてどうかしているんじゃないかな?うん!?」
「うんうんうるせー奴だな。仲間を守るために必死だったんだ。仕方ねーだろ。」
はっ!と鼻で笑って言うと、一瞬、男の顔は険しくなったが、すぐに落ち着き、
「うん。僕は優しいからね。許してあげるよ。うんうん。それじゃあ用事は済んだし、僕は他に用事があるから帰らせてもらうよ。うん。」
そう言った後、男は近くにいる魔獣達に触れていきながらどこかへ消えていった。
だが、触れられた魔獣の様子がおかしい。
「おいおい……。暴走したんじゃねーの?これ?」
トレイタの言う通り、さっきとは違い、目が赤くなり、落ち着きが無くなっている。
「あいつ、全然許す気ねーじゃねーかよ……。まぁ、やれるだけやってみるか。エレナ。お前はそこで休んでろ。」
「なんで助けて……。」
「何回でも言ってやる–––––。仲間だからに決まってんだろッ!!」
ハルタは自分とトレイタにドーラを唱えた後、ポケットから力の実を取り出し、口に入れる。
「力が込み上げてきてる。感謝するぜ。エレナ。」
折れた剣を握りしめ、ハルタは魔獣に立ち向かう。
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