第5話 激動の前

 魔獣駆除の体験から2日が経ち、今日の手伝いは休みという事もあり、ハルタは庭の芝生に寝転んでいた。


「休みだからって勉強も無いとなるとほんとに暇だな。」


 スマホのフリーゲームをやろうにも既にに充電が尽きてしまい電源がつかない。


「あの世界には本当の暇なんて無かったんだな……。」


 ハルタがいた世界は街も発展し、暇なんて無いぐらいさまざまな物があった。


「あっ–––。」


 何かを思い付き、立ち上がったハルタはアリルがいる自室へ向かった。



「アリル。入っていいか?」

「うん。いいよ。」


 扉をノックし、入室の許可をもらった後、扉を開けると、アリルが椅子に座り、机に置いてある紙とにらめっこをしていた。


「どったの?」

「うーん。今日、お互いの近況を報告し合う貴族会議ってものがあるんだけど……。」

「行きたくないと?」

「ううん。違うの。」

「じゃあどうしたんだ?」


 ハルタは頭を捻るとアリルは説明を始める。


「前に魔獣の襲撃があったでしょ?本当は報告した方がいいんだと思うだけどあまり大事にしたくなくて……。」

「言いたくないと。」

「うん。」

「そうか。」


 下を向き考える。


 確かにアリルの言う事もわかる。良い貴族もいるんだろうけど、前に会った嫌味な貴族もいる。これ以上の面倒ごとを増やしたくないのだろう。でも。


「言ったほうがいいと思うぜ。」

「えっ?」

「1人で抱え込まず言ってみたらどうだ?確かに嫌な奴もいるかもだけど、アリルの話を聞いてくれる良い人だってきっといるはずだ。」

「でも……」

「信じてみたらどうだ?俺を。そしてみんなを。」


真剣な眼差しでアリルを見つめる。それを見てアリルは。


「–––––うん。わかった。言ってみるね。」

「おう。」


 アリルにスマイルを見せ、場を和ませる。

 それから数秒の間を開けた後、アリルは「そうだ」と言い、


「そう言えば話があってここに来たんじゃないの?」

「そうだった。ちょっと小遣い稼ぎに行こうと思うんだ。」

「小遣い稼ぎ?どこで働くの?」

「働くってか戦いに行く。」

「戦うって……。」

「魔獣駆除に行ってくるよ。」


 ハルタの言葉を聞いたアリルは不安そうに見つめてきた。だがこうなるとハルタは予想して、


「大丈夫だ。アリル。本部で誰か一緒に来てくれる人を探すから。それにもし、誰も来てくれなかったらその時は大人しく帰るし。」

「そう……。ならわかった……。」


 若干納得していない様子だったが、許可を貰い、ハルタは早速アリルの部屋を出ようとするが、扉の前に止まる。


「ハルタ?」

「俺は死なないから。」


 そう言い残し、ハルタはアリルの部屋から出て行った。

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