第4話 悪臭の体液
貴族との出来事もあったが、市場の一番奥。魔獣駆除の取り扱い本部へたどり着いた。
「はー。まさにギルドって感じだな。」
中は男女溢れかえっていて、みんなそれぞれ自分の装備を持っていた。
入り口付近にはテーブルが置かれ、そこには駆除者と思われる人達が座って、酒を飲みながら何か話していて、奥にはカウンターがあり、受付嬢が立っている。受付嬢の隣には依頼が貼ってある掲示板があった。
「ゲームではなんとも無いけど、現実でこんな所に来ると意外と怖いな。」
「ん。私もあまり得意じゃない。」
「そっか。なら、さっさと依頼受けて行こうぜ。」
「うん。」
ハルタとアリルは奥へ進み、受付嬢に話しかける。
「何かお手頃な依頼とか無いっすか?」
ハルタが聞くと受付嬢は掲示板に貼ってある依頼を見る。
「そーですね……。これなんてどうでしょうか?」
受付嬢は依頼の紙をハルタに渡す。
「えーと、『ガールミラの殲滅』。親切に地図まだついてるな。アリー。ガールミラってどんな魔獣なんだ?」
「カエル型の魔獣。人の半分ぐらいの大きさかな。」
「へー。カエルなら楽そうだな。よし、これを受けるか。」
「わかりました。それではこちらにサインをお願いします。」
そう言ってハルタに一枚の紙を渡す。
「これは?」
「誓約書。死んでも責任は問いませんって言う……」
「まじか。俺が見た異世界物にはこんなの無かったな……。」
「どうするの?ハルタ。」
「……もちろんやるさ。」
誓約書を手に取り、サインをした後、受付嬢に渡す。
受付嬢はサインを確認し、球体の何かを渡してきた。
「確認しました。では、魔獣を倒した後、そちらの魔道具で記録をしてから報告をお願いします。」
ハルタは球体の魔道具を受け取り、まじまじと見つめる。
「これは?」
「依頼を完了したと確認するための魔道具です。そちらのボタンを押すとその場の光景が記録されます。それを見た後に私達が報酬をお渡しします。」
「その場の光景を記録……カメラみたいなもんか。わかったよ。よし、行こうぜ。」
「うん。」
***
「……ガールミラって奴がいるのは湿地帯かよ。嫌だなー。こう言うじめじめした場所………。」
「それじゃ、依頼をキャンセルする?」
「––––いや、しない。困ってる人がいるんだろ?俺達でその人を助けてやろうぜ。」
「うん。そうね。」
微笑むアリルを見て心が痛い。
本当はすぐにでも帰りたい。地面がどんどんグチョグチョになってきてる。都会育ちの俺にはこれはキツすぎる。
さっき言った言葉を嘘にしないために、涙目になりながらも、前へ進む。
「–––––この辺りじゃないか?」
地図を確認し、辺りを見渡す。
木々が広がり、地面はグチョグチョ。湿気でじめじめする。この最低なコンボにより、ハルタの体調も下がっていた。
「………見つからないな。できれば早く帰りたいんだけどな。」
ハルタはため息を吐き、歩き出した瞬間。
「うわっ!?」
突然下から何者かに捕まれ、どんどん下に沈んで行く。
「あ…あ、あああぁぁぁっ!!」
体勢を崩し、地面に手をつき倒れる。
「ハルタ!」
ハルタの声に気づき、アリルは風の魔法でハルタ付近の泥を吹き飛ばす。
そこから、一匹のカエルが現れた。
色は紫に近い赤。目が無く、頭には二本の角が生えていた。
「こ、こいつがガールミラ!?」
ハルタは急いで剣を抜き、ガールミラを斬る。
皮膚は柔らかく。すぐに斬れた。
「うっ、なんかついた……。くせー。」
ガールミラの体から何か液体が溢れ、ハルタに纏わり付く。嫌悪感を抱きながらも体勢を立て直す。
「うぅ。ありがとう。アリー。」
「ううん。気にしないで……。それより。」
アリルは辺りを見渡す。ハルタも同様に見ると、地面から続々とガールミラが湧き出てくる。
確認できるだけで15匹以上はいた。
「そりゃ、依頼も来るよな。」
ハルタは力なく笑うと剣を構える。
ガールミラは柔らかい。剣の素人であるハルタでも倒せる相手なのだが……。
「多いわ。」
あまりの多さに驚きを通り越しもはや呆れる。
それでもやるしか無い。ハルタは走り、ガールミラを斬っていく。
アリルも遠くから魔法でガールミラを倒していく。
「いいな。俺も魔道具で戦いたいけどこんな奴らに使うのはもったいないしな……。」
マジックリングを使おうとしたが、もったいないと言う理由で使わず、剣で戦う。
「喰らいやがれ!」
剣を両手で持ち、フルスイングする。ガールミラは真っ二つに斬られ、その場に倒れる。
「あぁ……。気持ち悪い………。」
纏わり付く体液を払いながら、次のガールミラに進む。
「はっ!!」
一方アリルも氷の魔法でガールミラを倒していく。ハルタよりも早く。
「未来が変わっても結局アリーが無双するのかよ……。」
最後の一匹はアリルの一撃により幕を閉めたのだった。
***
ガールミラを殲滅し、証拠となる物を提出する為、球体の魔道具で現場を撮影する。
「早くこの魔道具を返して帰ろう……。体がベタベタだ。」
「うん。ちゃんとお風呂に入らなくちゃね。」
「あぁ……。」
体液から香る酸っぱい匂いに耐えながらもハルタとアリルはハイエル王国の市場へと向かった。
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