第5話 1日の終わり
「アリーが作る手料理は最高だったなー。」
あれから、アリルが夕食を作り、それを食べた後、ハルタは夜風を浴びに外に来ていた。
「この世界に来たのは何か目的があるのか?」
なぜ自分なのか。
その疑問がハルタに迫る。だが、それを解き明かす事はまだ出来ず、こうして冷静に考えている。
「与えられた力は死んでも蘇る力。それでも俺はここでは無力となんら変わりない。」
異世界に来る前とあまり変わらないじゃないか。
蘇る力は確かにすごい。だが、力が無い。
「魔法も便利ちゃっ、便利だが、使いようがな。」
ドーラは普通に便利だが、フィールは未来を観れたとしても、どう変えればいいのかわからない。
ハルタは深いため息を吐く。
「風呂に入って今日は寝るか。」
この屋敷には男湯と女湯の2つがあるらしく、ハルタは女湯を覗こうか悩んだが、大人しく男湯へ向かった。
脱衣所へ着くと速攻で服を脱ぎ、大浴場へ飛び込む。
「ああぁ………。」
あまりの気持ち良さに思わず吐息が溢れる。
––––とりあえず、この屋敷に住ませてもらえるようになったが、その先はどうすればいいだろうか。
特に何事も無くアリーのお手伝いとして過ごしていくのはアリっちゃアリだが……。
「ここは異世界。何があるかわからないしな。」
なんせ、初日と今日で二回も死んだんだ。
何か対策をしなくてはならない。そうハルタは結論づけた。だが。
「でもまずは、この世界の常識と知識を知らなくちゃ何も始まらないよな。」
今度はため息が溢れる。
いずれ来るかどうかわからない
「–––––でも、とりあえず今は何も考えたくないな……。」
ハルタは目を閉じ、しばしの間入浴を楽しんだ。
***
「明日からはなんだろ……執事?いや違うな。とりあえず、家の手伝いは任せてくれ。」
「うん。任せる。」
大浴場が出た後、今やハルタの部屋となった客室でアリルと明日の話をしていた。
ハルタはアリルを疑問に思っていた。
なぜアリルは自分の事をこれほどまでに信用しているのだろうか。騙されてるとは考えてはないのだろかと。
そんな事を聞きたくは無く、心の中にその疑問をしま––––。
「あれ?」
「どうしたの?」
心の中にしまおうとした時、1つの答えがハルタの中に思い浮かんだ。
「アリー。」
「ん?なに。」
「もしかして俺のこと好き?」
一瞬。アリルは困惑した後、すごく答えずらそうにハルタを見つめる。
その顔を見て、更にハルタの期待値が高まっていく。
「………別に、好きじゃない。」
「ですよねー…………。」
本当は期待していたハルタの心をアリルの言葉によって打ち砕かれた。
「………それじゃ私、部屋に戻るね。おやすみ。」
気まずかったのか、アリルは苦笑しながらハルタの部屋から出て行く。
「はぁー……。」
ため息を吐く。
今日だけで何度ため息を吐いたのだろう。そんな疑問を抱きながらもベッドに倒れ込む。
「ヒロインと恋の発展はまだ無いか……。」
再びため息を吐き、目蓋を閉じる。
いろんな事があり、疲れが溜まっていたのか、眠りにつくのは遅くはなかった。
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