第2話「朝食のシシャモ」

朝食はいつもおねーちゃんと食べる。



お父さんもお母さんも朝6時半には仕事に出てるからだ。だから、なんか嫌である。



「あ、今日はシシャモがあるね〜、陽君、シシャモ好きじゃなかったっけ?」



「いや、僕はシシャモが好きじゃないよ、ていうか、どこからシシャモが好きだという思考になるんだよ…」



「えーっと、だって陽君、他の魚料理よりもシシャモが出た時はとても美味しそうに食べるじゃん」



「そっ、そんなことねーだろっ!」



…からかうなよ、ていうか俺はシシャモだけは美味しく食べてるように見えてるのか?



「ふふっ、陽君かーわいいねぇ。おねーちゃん嬉しいよっ」



…気分が乗らない、おねーちゃんに付き合うのは相当体力がいるかもしれん、ていうか毎朝このテンションだから、ほんとにつらい。



「てかさー、陽君知ってる?」



「…なにを」



「シシャモって、頭から食べると頭が良くなるらしいよー」



「それは知ってるよ。だから、小学生の頃は常に頭から食べてたよ」



「へー、陽君ってそういうこと気にするんだねぇ、

おねーちゃんは感心したよっ」



「あなたは俺のお母さんですかっ!!

ていうか、おねーちゃんはシシャモを足から食べると足が速くなるって聞いたことある?」



「え!なにそれ!私知らない!」



やけにハイテンションだな…



「てかさ、おねーちゃん足速いよね。だって俺、おねーちゃんに足の速さで勝ったことないもん」



「えー、それは陽君が遅いんだよ」



…絶対違う。俺は短距離走は学年トップだし。



「全国区の人には言われたくないけどね」



「それは褒め言葉としていただくねっ♡」


…つらい


ちなみに補足だが、おねーちゃんは中学の頃、陸上部に所属していて全国大会の常連レベルの選手だったそうだ。高校のインターハイでベスト8を獲ったこともあるらしい。



「…それで、結果シシャモはどこから食べるの?

頭?足?」


俺がおねーちゃんに質問する。



「えー、陽君が決めてよっ」



「嫌」



「つれないなぁ、じゃあさ、『せーの』で決めない?」



…おねーちゃんは小学生ですか?

そう思ったけど、口にはしない方が良いのかも…



「わかった、それでやろう」



『せーのっ』



「頭!」



「足」






一致しない、そんなもんだ。






「えー、陽君頭から食べようよぉ〜」



「?もう食べたよ。ていうかおねーちゃん、学校は大丈夫なの?」



「…あっ!やばっ!電車乗り遅れたらつらいんですけど!」



…んなことは知らん

おねーちゃんドタバタしすぎ。



「陽君!今何時なのっ!?」



「えーっと、7時半だよ。おねーちゃん」



「え!?あと20分で電車乗らないとヤバい!

行ってくるから鍵閉めといてね!陽君!」



「了解。いってらっしゃい、おねーちゃん」














…さて、俺も学校に行くか。







そう思いながら、おねーちゃんの食器を下げる。

おねーちゃん、意外とドジだよな…







そして俺は、学校に向かう。

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