第2話 クソみたいな広告で来る奴がいるか

 天高くお昼としては良い天気であるはずが、屋敷の中にある舞台の下では二人の男女が膝を抱えて俯き、沈黙している。

 一方は帰りのボートを失い、損害賠償を請求されるかもしれない未来に。もう一方はデスゲームが開催できない状況に嘆いていることに。

 いや一番被害大きいの俺なんだけど! なんでデスゲームの主催者がめそめそ泣いてんだよ。というか人殺し考えている人間が、この程度で泣くな!


 あまりに理不尽なことに腹が立った芦田は、デスゲームの主催者である女を引っ張り上げる。


「おい、お前が乗ってきたボートとかないのか。とにかく帰りのボートを何とかごまかして返したいんだけど」

「すみません。私ヘリコプターでスカイダイビングされて落とされたから、帰りのボートなんてありません。しかも迎えはデスゲームが終わってからですので」


 今にも泣き出しそうに目を潤ませる女性。そして屋敷に入ってきた昼間の太陽の明かりで女性が思っていたより若いことがわかった。いや若いというレベルではなく幼い、着ているスーツも発育に追いついていなくまるで入学式に新品のぶかぶか制服を着た中学生のような感じだ。


「つか、なんでこんな危ないことをやろうとしている島の管理人のアルバイトなんて募集をしたんだ。デスゲームの会社なら島丸ごと買えばいいのに」

「島丸ごと買うより一定期間借りる方が固定資産税? というのがかからないかららしいので。でもどうしよう、管理人は会社関係者扱いだから参加扱いにならないし」


 また泣き崩れていく主催者。

 こいつ人殺しのゲーム考えた人間だよな。

 だいたいいったいどんな募集をしたら参加者ゼロ人になるんだよと思い、主催者にその募集の紙を見せてもらうと、紙からなんともけばけばしいゲーミング色の巨大文字が目に飛び込んできた。


『デスゲーム! デスゲーム! デスゲーム!! 大賞金!!

 デスゲーム! デスゲーム! デスゲームで大賞金!!

 ひとり生き延びたら、一千万円! みんなで殺し合え~』


「あからさますぎて、来るわけねーだろこんな求人で! 思いっきりバ〇ラの丸パクリだし、もうちょっと考えて求人作れよ!」

「だって私高卒だし、勉強もできないし体力ないし。家事手伝いニートして過ごそうとしてもお母さんが許してくれないから必死に就活して、やっと就職できたのがデスゲーム運営会社なんて知らなかったんだもの」


 言い訳がましく、喚き散らす主催者の体たらくに、来年就活をする芦田は就活早めにちゃんとやっておこうと彼女を反面教師にすることに決めた。

 しかしこのまま十日が過ぎようとしても迎えが芦田を回収するわけでもない。携帯もデスゲーム特有のなぜか島に入ったら電波が届かない仕様になり助けも連絡もできないありさまだ。

 そして主催者もこのありさまだ。


「どうしよう、あと五日までに最低その日数分の人を集めて開催しないといけないのに……上司から怒られたくないよぉ。」

「別に全員集めなくてもいいんじゃないか?」

「え?」



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