バイトでデスゲームに巻き込まれたんですが、主催者がクソポンコツすぎてまともにゲームできない!!
チクチクネズミ
第1話 これよりデスゲームを……あれ?
『ようこそ諸君。これから始まる恐怖と欲望と殺戮のデスゲームの館へ』
「なんだと。デスゲームだと」
古びた屋敷の舞台にポツンと置かれていたテレビの画面から、突然漆黒のフードを被った男――いや深く被っていておまけに変声器を使っているので男かどうかすら怪しい――が表れて芦田は焦りの色を見せる。
だが画面の男はそれを嘲るようにクツクツと籠り声で話を続ける。
『そうだ。よく私の招待状にまんまと来てくれた。褒美の百万円という大金につられて。だがこの大金を得るのは一人だけ、そしてこの島からゲームの途中で出ることは一人として許されない』
「一人だけだと。お前正気か」
『正気だとも、だが目の前の命の選択に迫られるお前たちがその正気を保てるだろうか。そうこれはデスゲーム、貴様達はこれから始まる十の狂気に呑まれていくのだ』
わなわなと芦田の手が震えて、ついに喉の奥で出かかっていたものを主催者に吐き出した。
「いい加減にしろ! さっきからデスゲームだの命のやり取りだの勝手言いやがって。俺一人だけでどうやってゲームするんだよ!」
『その懸念はもっとも……え? ああ、あれ? ひ、一人? 君だけ? 他の参加者はトイレ??』
舞台に反響する芦田の声でようやく主催者は理解したのかあからさまな動揺を起こしていた。
「誰が参加者だよ。俺は管理のバイトで雇われただけだ。日給一万円、十連勤泊まり込みの応募につられてきただけで、その初出勤日」
ホラっと応募したスマホの画面を主催者が映っているテレビに押し付ける。だが主催者は急にうんともすんとも言わず、代わりに舞台袖からスーツを着たロングヘアーの女性が出てきた。女性は芦田の画面をじっと見つめると何かを思い出した表情を浮かべた。
「……あっ、そういえばここの島の管理人のオジサンが腰を悪くしたから臨時のバイトを雇うって言ってたっけ。じゃあ他の参加者は」
「船着場からしばらくこの島を探索していたけど、俺以外に人はいなかったよ。船着場のボートも俺のだけだったし」
キョロキョロと女性が屋敷の中を見渡し、ポケットからスマホを取り出して操作すると女性はへたりと足を女の子座りして、将来が視えない社畜のような喪失感を生んでしまった顔をしていた。
「どうしよう参加者ゼロ人だなんて……どうやって報告しよう、初日から上司に怒られる」
デスゲームって報告の義務とかあるんだ。でも俺参加者じゃないし、一人だけいてもどうしようもないしな。これはかかわらずに、島の管理人バイトに戻るとするか。
女性を放置して屋敷から出ようとしたとき、服を掴まれた。
「あのごめんなさい。君に謝らないといけないことが」
「いえ、参加者と間違えたことなら別に」
「ううん。君の乗ってきたボート、参加者が持ってきたのと思って爆破しちゃった」
チュドドーン!! という爆破目的の爆弾以外のものでも混じっているであろう爆音がそして遅れて地響きが屋敷に流れ込んだ。
「どおしてくれんだ!!!! ボートの弁償費用ださないといけなくなったじゃねーか!!」
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