独白



 入学してすぐのことだったらしい。


 ある時、神吉大地の関係について堀江ゆかりと口論になる。そのあと一応、関係を修復したものの、怒りの炎は彼女の中でくすぶり続け消えなかった。


 そんなある日、二人で帰宅中の駅で元同級生の男子と再会する。


 堀江ゆかりはほぼ面識がなかったが、由美は中学三年で同じクラスだった。とくに仲が良かったわけではなかったが、懐かしさと新しい環境に舞い上がっていたのか、少しの間三人で話し込んだ。


 男は以前から堀江ゆかりに興味を持っており、その際に三人でラインのグループを作ろうと提案するが断わられる。


 諦めきれない男は、由美へ堀江ゆかりとの橋渡しを頼み込んだ。当初は断っていたが、男の押しの強さについに連絡先を教えてしまう。軽い気持ちだったのと、以前口論になった時の当てつけのつもりだったそうだ。


 当然、堀江ゆかりは激怒し再び口論となって二人は絶縁状態になったそうだ。由美のなかに残っていた怒りも再び激しく燃え上がった。


 そしてその直後に、由美は海子に相談を持ちかける。


 つまり他校の男と連絡のやり取りをしているというのは一方的で、堀江ゆかりは迷惑していたということになる。


 そして男は二人が自分のせいで喧嘩になっていることを知り、謝罪しなんとか仲を取り持とうと思ったのだそうだ。三人での話し合いの場が設けられ、今日この場で落ち合うことになっていた。


 堀江ゆかりは仲直りしたかったに違いない。


 そして由美は彼女を許していなかった。それだけの話だったのかもしれない。


 由美はこの状況を利用しようと考えた。待ち合わせに遅れると連絡して、二人でいる所を海子と目撃しそれを証拠に学校に申し出るつもりだった。そうすれば堀江ゆかりは窮地に立たされ、後悔するだろう。そう考えたのだそうだ。


 そんな顛末を高林由美は滔々と語った。


「お前のしたことは最低の行為だ」


 聞き終えた総一郎がそう告げると、由美は泣きながら頷く。


「わ、わかってます。……わかってます」


 誰に言うでもなくそう繰り返した。


「学友を陥れて停学にしようとしたんだ。イタズラですむ話じゃない。学校から何かしらの処分が下るから、覚悟しとけ」


 冷たくて非情な言い方だった。しかし海子はなにも言う気になれなかった。二人ほどにないにしても、海子自身も傷ついていたのだ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る