休日の予定



 風呂あがり、ドライヤーをあてながらスマホを確認する。するとラインにメッセージが入っており、高林由美から電話で話したいという内容だった。


 いきなりで驚いたが、すぐに折りかえす。


 ワンコールでつながり、「もしもし……」とどこか遠慮がちな声がきこえてくる。


 この間のことを思い出し、海子の声も不安にすこし震えた。


「ごめん。ちょっとお風呂入ってた」


「こっちこそごめんね。いきなりで」


 ずっと避けられていたが、どうしたのだろうと海子は疑問におもう。怒りが沸かないのは、やはりどこか負い目を感じているからかもしれない。


「今日、先生と話したよ……」


 どうやらB組の教師によび出されたようだ。


「そっか……ごめんね」


「いや星さんが悪いわけじゃないから。それなのに、この間はごめんなさい。ずっと謝りたいと思ってたんだけど、勇気がでなくって」


 電話口で謝罪される。向こうは向こうで気を揉んでいたようだった。


「ううん、わたしがもっとうまくやれてたら……」


「いいの、じゅうぶん助けてくれてるよ」


 お互いに気を遣いあって話が進まず、すこし気まずい空気がただよう。


 ――くしゅん、と海子からくしゃみがもれた。


 風呂あがりのまま薄着でいたせいだ。


 なんとなくお互いにクスクスと笑い合う。良いタイミングで空気が変わったのかもしれない。


「あの……良かったら明日、どこか行かない?」


 そんなお誘いを受ける。


 休日にクラスメイトと出掛けるなど、高校に入ってからは初めてだった。もちろん相談事があるんだろうが、単純に海子としては楽しみなイベントに思えた。


「その……お詫びもさせて欲しいしさ」


 由美がうかがうような口調を忍ばせる。


「わ、わかった。いいよ」


 学校の最寄り駅で待ち合わせをする。地元がちがう二人にとって交通費を節約するのにも、それが一番よい。適当に街をブラついてご飯を食べようという話に落ち着いた。


「それじゃあ、おやすみ」


「うん」


 電話を切った瞬間に、胸にたまっていた重い空気が抜けたような気分になった。

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