第7話 五男のたたかい

 4匹のオークが諦めかけた時、水の上を高速で近づいてくるものがありました。

 水面に出ている部分だけを見ると潜水艦のようです。


「なんだありゃ?」


 潜水艦の上部ハッチが開くと、五男オークが顔を出して叫びました。


「兄さん達、早くこの中へ!」


 潜水艦が屋上に到着するや兄オークら4匹は潜水艦の中に乗り込みました。

 それを見たフェンリルが唸ります。


「あいつめ、よくも我の食事の邪魔を! あのようなもの大地の上に転がしてやるわ! 水よ引け!元の大地に戻れ!」


 そうすると、洪水のようにあった水がなくなり、濡れた地面が露わになりました。水に頭を出していた潜水艦が地に着きます。


「荒ぶる炎よ、潜水艦を焼き尽くせ。【ファイアストーム】!」


 炎が潜水艦を包みますが、びくともしません。


「へへん。超耐熱チタン合金でできているんだ。こんな炎が効くもんか。」


 五男は自慢げに言いますが、兄オークらはまだ安心できません。


「あいつは土の魔法で地震も起こせるんだよ! 大丈夫なのか?」

「よし、じゃ、さっさと逃げてしまおう。【陸モード】起動!」


 すると、潜水艦と思っていたものにタイヤが現れて走り始めました。

 フェンリルはすかさず追いかけます。


「水陸両用車とはなかなかのものだが……逃がすものか! 荒ぶる地震よ、あの車を地割れに落とせ。【アースクエイク】!」


 地震が起き、地割れに潜水艦のタイヤが落ち込んでしまいました。これでは走れません。


「わー! どうするんだ! もうだめだ!」

「ふっふっふ。あとはハッチを開けて、ゆっくり頂くだけだのう。」


 フェンリルが近づいてきます。慌てるオーク達。


「兄さん達、大丈夫だよ。この『水陸空両用キャンピング装甲車』なら。」

「水陸……空?」

「そうだよ。【空モード】起動!」


 水陸空両用キャンピング装甲車は、タイヤを収納すると、ふわりと浮き上がりました。

 フェンリルはギラリと目を向けます。


「逃がしてなるものか。我が最終奥義を見せてやる。荒ぶる稲妻よ、空飛ぶ潜水艦を撃ち落とせ。【サンダーボルト】!」


 ズドーン!と空から雷が落ち、空飛ぶ潜水艦に直撃しました。

 しかし、潜水艦はびくともしません。


「へん! 空を飛ぶのに雷対策していないわけないだろう!」

「ムキー! 俺の食事が逃げていくー!」


 地団太を踏むフェンリルをよそに、空飛ぶ潜水艦は遠ざかっていきました。

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