第8話 惨状、陳情、姉参上
夕日差し込む『ティミリ=アリス』に戻ってきた俺たちはログアウトする準備をしていた。
達成感と満足感はあるが、やっぱり初ダンジョンの疲労感は思ったよりも溜まっていた。
一度ゆっくり休んで、また夜にログインしてからアイテムの売却などを行う運びになった。
「んじゃ、そういうことで」
「うん分かったよ、ウェンディちゃん。ヒュージさん、また後で」
「ああ。二人とも夜にね」
メインパレットからログアウトを実行する。
身体が強く後ろへ引っ張られる感覚ののち、俺は現実へと帰還する。
ゴンドラ流れる美しき水の都はどこへやら、作りかけのプラモや脱ぎっぱなしのスウェットが転がる年頃の男子の部屋がそこにはある。
「……はー」
アホな声を上げてしまうが、抑えようもない。
俺がロボットになり、異世界で冒険を繰り広げる。
夢とロマンをこれでもかと詰め込んだ、まるでおもちゃ箱のような世界だった。
「そりゃあ【BW2】が人気出るわけですよ」
遅すぎる納得に一人頷いていると、俺の腹が同意したかのように鳴った。
そういえば、朝にパン食べたくらいだったっけ。
向こうの身体じゃ空腹とか感じなかったんだけどな。
「俺も〈エクスマキナ〉になれば感じなくて済むんかね」
世迷言を宣いつつ、俺はのっそりといすから立ち上がった。
紙やすりのストックも怪しいし、昼飯ついでに買いに行くとしよう。
俺が部屋を出たのは、まだ日も高い14時半であった。
†
買い出し、昼飯、プラモ作り、撮り溜めしていたアニメの消化、晩飯とタスクをこなしていれば、いつの間にか約束の時間まであと1時間になっていた。
丁度風呂も沸いたので入ろうかと立ち上がった、その矢先。
作業台の上のスマホが着信音を響かせる。
『弟君、電話だよ♡弟君、電話だよ♡弟君、電話だよ♡』
「いや待て知らんぞなんだその着信音!?」
青天の霹靂とはまさにこのこと、俺は作りかけのプラモを吹き飛ばさん勢いでダイビングキャッチを敢行した。
飛び掛かった勢いで少し歪んだ画面には、犯人――俺の姉である藤宮璃々の携帯番号が表示されている。
姉君よ、いつの間にお声を着ボイスに設定したですか。
『弟君、電話だよ♡弟君、電話だよ♡弟君、愛しのお姉ちゃんからラブコー』
「はいもしもし!」
通話アイコンをタップ。
着ボイスが色っぽく変化したが、俺の耳の産毛には何も触れなかった。
『弟君、お姉ちゃんお仕事終わったよー!褒めて褒めてー!』
「……ああ、うん。休日出勤お疲れ様、璃々ねぇ」
出来ることならば、俺の精神的ダメージも労ってほしい。
『あれあれ、どうしたのかな元気がないよ?もしかして、【BW2】で嫌なこととかあったのかな!?』
「気にしないで。ゲームはすっごく楽しかったよ」
『そっかぁ!うんうん、そう言ってくれると一プレイヤーとして嬉しいなぁ!』
嬉しそうに声を弾ませる璃々ねぇ。
本当にゲームが好きなんだな。
『あ、【BW2】でメール送ったんだけど、見てくれたかな?』
「届いてたよ。おかげでたっぷり異世界ファンタジーを体験できた」
『よかったぁ!初心者が楽しめるように、お姉ちゃんじっくり考えたからね!』
何も言うまい。
顎骨を奪うぞの一文は璃々ねぇなりのエールなのだ、うんきっとそう。
『帰るまでにまだ時間あるから、弟君さえよければ冒険のお話聞きたいなぁ』
「じゃあ最初からゆっくり話すよ」
俺は今日……と言っていいのかは分からないけど、初ログインしてからの出来事を璃々ねぇに話した。
アバターに〈エクスマキナ〉を選択したことから始まり、お勧めされたダンジョンへアタックを掛けたこと、ボスに苦戦したこと、ドロップにパーツを一式獲得したこと。
……ルーチェさんたちのことを伏せたのは、決して俺の命が惜しいからではない。
身内から殺人犯を出したくないだけで他意はないのだ。
「……って、璃々ねぇどうしたのさ?なんか妙に静かになっちゃったけど」
気が付くと、電話口から璃々ねぇの声が聞こえてこなくなっていた。
話の途中まではうんうんと頷いていたんだけど、どうしたんだ?
『ねぇ、弟君。そのボスモンスター、グラウバ?だっけ、二つ名みたいなのが付いてたんだよね』
「付いてた。【操城甲蟲】」
『それで、奪取した〈エクスマキナ〉のパーツを装備したら新しいジョブが出た。そうだね?』
「そう。【
「そっか」
短く答えると、また黙り込んでしまう。
何かを考えているような息遣いだけが聞こえてくる。
『弟君』
「あ、はい。なんでしょう」
一転して冷たい声音に、思わず敬語になってしまった。
『後30分くらいで家に着くから、弟君もそれくらいしたらログインして。待ち合わせは『ティミリ=アリス』の噴水広場にしよっか』
「え、あ、ああ。分かった」
なんで、と聞く前に璃々ねぇは電話を切ってしまった。
今の話に、ベテランとして思うことがあったのだろうか。
俺がフレンドのことを隠していることには気づいていなさそうだったけど。
「考えても仕方ない。風呂入ってこないと」
スマホの着信音を手早く設定しなおし、俺は着替えを手に部屋を出た。
†
【BW2】のログイン地点は、ログアウト地点と同じポイントに設定される。
俺を出迎えたのは、『ティミリ=アリス』の大正門と、頭上で輝く太陽。
あれ、俺がログアウトした時は夕方だったんだけど。
「そっか、ゲームとリアルじゃ3倍の時間のズレがあるんだっけか」
説明書の一文を思い出して納得した俺はパレットから地図を表示させると、璃々ねぇとの待ち合わせである噴水広場へと移動する。
道すがら、フレンドリストをチェックするとウェンディはログインしているが、ルーチェさんはまだログアウト状態だった。
「遅れるかもしれないし、ウェンディには一報入れとくか」
知り合いと会う旨を簡単に書いたメールを送信すると、早足気味に通りを急ぐ。
【サンディライト】首都『ティミリ=アリス』はいわば水上都市。
人工水路や地盤沈下で水没した道などが街のいたるところを覆っている。
そのノスタルジックな構造は移動にはとてつもなく不便で、道が浸水して迂回せざるを得なくなったり、逆に水がはけて近道になったりする。
だからか、この街ではゴンドラが主な移動手段であり、露店が船上にあったりする珍しい日常が特徴だ。
「けど、ゴンドラ使うのに金さえ使わなきゃなぁ……」
距離にもよるが一回の利用料は大体200。
初期配布の資金は1000であることを考えると、気軽に出せる金額じゃない。
よって、俺のように始めたてでお金のない初心者はこうしてマップ片手に迷路のような街並みを東奔西走する羽目になるのだ。
「雨の日とか大変そうだよな……っと」
速度を上げたお陰か、はてまた近道ルートを引き当てたのか。
待ち合わせ場所の噴水広場には迷うことなく到着できた。
しかし、ここで問題発生である。
「どれが璃々ねぇなんだか分からないぞ、俺……」
噴水広場にはプレイヤーなのかNPCなのか分からないが、沢山の人が行き来している。
この中から顔も知らない只一人を見つけるなんて、広大な砂漠から米粒一つ見つける難しさに匹敵するだろう。
「ま、目立つところにいれば向こうが来てくれるだろ」
幸か不幸か、見える範囲にいる〈エクスマキナ〉は俺だけのようだし、璃々ねぇならば目ざとく見つけれくれるハズ。
そう踏んで、広場の中心にある噴水に足を向けた刹那。
「お・と・う・と……くーん!」
「この声……っ!?」
聞きなじみのある声に振り返ると、俺の胴体にぬくもりが飛び込んできた。
「あーん、本当に弟君だー♡リアルだけじゃなくて
フローラルかつフルーティーな大人な香りが広がって実におっぱい。
「あぁ、お仕事ですり切れたお姉ちゃんの心を癒してくれるのは、やっぱり弟君なんだね♡癒されるぅー」
ふわりと視界に舞うサラサラの空色の髪の毛、そしておっぱい。
「えへへ、お姉ちゃんの弟君カレンダーにまた新しい祝日が出来ちゃった。もう、どれだけお姉ちゃんを喜ばせたら気が済むのかなぁ、この姉殺しさんめ♡」
止めとばかりに、胸に押し付けられるのは圧倒的な質量を持ちながら、何よりも柔軟で「むにむに」で「ぷにぷに」と変形する豊満なおっぱいが――。
ああもう畜生、思考がおっぱいから離れねぇえええええええええええええええ!
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっプァイ!!」
「きゃぷぅ!」
頭を覆う雑念と、
いらやしロボットに落ちた俺にはそれしか方法がなかったのだ。
「もうっ、そんなに照れなくてもいいのに。お姉ちゃんは構わないよっ!」
「弟の風評の為には是非とも構ってほしい!」
「大丈夫っ、きょうだいだから恥ずかしくないよ!」
「誰か血縁と羞恥心の数学的リレーションを証明して、俺と璃々ねぇに教授してくれないかなぁ……!」
電話の時に垣間見せた陰りはどこへやら。
璃々ねぇのテンションは雲を突き抜け、宇宙へと届かんばかりだ。
「もう、弟君。璃々ねぇって呼んでくれるのは嬉しいけど、【BW2】の私はルルだから、そう呼ばなきゃ駄目だゾ?」
「ごめん、気を付けるよルル」
「はぅん♡弟君に呼び捨てにされると、お姉ちゃんの胸がキュンキュンするよぉ♡」
やっべぇ、会話が進まないんだけど、どうすればいいんだよこれ。
「とにかく、早めに合流できてよかった。こういう時に〈エクスマキナ〉は便利だよな」
「【サンディライト】には〈エクスマキナ〉がほぼ所属してないからね、遠くからでも分かったよ。それに、お姉ちゃんが弟君の匂いを間違えるはずないからね」
「……俺の匂い?」
「うん、オイルと鉄の芳醇な香り漂うナイスガイ!」
リアルの俺は人間じゃないのだろうか。
「でも、弟君だってお姉ちゃんのことちゃんと見抜いたから、やっぱり赤い糸で結ばれてるんだね♡」
「いや声で分かったし、ルルねぇあんまり外見変わってないじゃん……」
こうして間近に見るルルねぇは現実の璃々ねぇとそっくりだ。
元から目を見張るようなぶっ飛んだ美人だったから、ファンタジーの世界にいても違和感がないのが恐ろしい。
腰まで伸ばした髪の色が雲一つない快晴を想像させるスカイブルーなこと、、頭に天使の輪っかみたいなサークルが浮かんでいることがせめてもの違いだ。
……あの輪っかはアクセサリーの類なのか?
「ああ、これはね【
「へぇ、そんな種族あったんだ」
「弟君、〈エクスマキナ〉以外の種族はチェックしてないから始めて見るよね。じゃあ、はい」
触ってみてと言わんばかりに頭を傾けたので、言葉に甘えて手を伸ばしてみる。
思ったよりもひんやりとして硬質な肌触りは上質な陶磁器を思わせる。
ルルねぇがくすぐったそうに身をくねらせて続ける。
「
「公衆の面前なんだよなぁオイ!」
俺は手を引っ込める。
エッジのある腕が空気抵抗を受けるもんだからダチョウ程度の速度しか出せなかったことがこの上なく悔しい。
「ルルねぇ、そろそろ移動しよう。話があるんでしょ」
これ以上ギャラリーに白い眼を向けられるのは非常に辛い。
いくら白銀の〈エクスマキナ〉とはいえ、メンタルまで鉄壁ブロックできないのだ。
「そうだね。弟君の知識レベルも大体把握できたから、まずは冒険者ギルドに向かおう」
「冒険者ギルド……って何?」
「私たちプレイヤーに依頼の斡旋をしてくれる施設だね。私の想像通りなら【グラウバ】の討伐報告ができると思うんだ」
「討伐報告?」
「百聞は一見に如かず、だよ。行こうか、弟君」
疑問符を浮かべる俺の手を取るなり、冒険者ギルドとやら目指して進み始めるルルねぇ。
【グラウバ】の討伐報告とやらが何かは分からないが、俺一人で聞いていい話じゃなさそうだ。
その手を俺は握り返し、足を止めさせた。
「ルルねぇ、ちょっと待って。【グラウバ】の報告するなら、フレンドに連絡したいんだけど」
「え、フレンド?弟君、もうフレンド出来たの?」
「〈星遊びの洞穴〉を攻略してた時に出会ったんだ。一緒に【グラウバ】を倒したから、その人たちにも同席してもらったほうがいいだろ?」
考えを読まれまいと目線を逸らしてから、ルルねぇは大きく頷いた。
「そっかぁ、フレンドがもう出来ちゃうなんて弟君は凄いね!」
「……怒らないの?」
「どうして?そりゃあ、私が弟君のはじめてになれなかったのは残念だけど、交友関係が広がることを喜ばない理解の無いお姉ちゃんじゃないよ」
「ルルねぇ……っ!」
俺は自らの視野の狭さを恥じ入った。
顎骨のことばかりに気を取られていて、俺は姉の本質を見誤っていたんだ。
手のかかる弟を愛し、寄り添い、支えてくれる。
藤宮璃々は純然たる家族愛で動く人なのだ。
……そう、言葉遣いとか愛し方に重篤な問題があるように思えるが、胸の内に秘める絶対なる
「フレンドも討伐に関係してるなら、呼んだほうがいいよ。お姉ちゃんに紹介してくれるよね?」
「勿論!二人ともいい奴だから、きっと仲良くなれるさ!」
俺はフレンドリストを開いて連絡の手はずを整える。
幸い今度はルーチェさんもログインしているから、ウェンディと一緒に噴水広場まで来てもらうとしよう。
「そうそう、弟君。質問いいかな?」
「ん、どうしたのさ」
「――メール、見てくれたんだよね?」
「――――――――」
瞬間、背筋が凍るような冷気が全身を吹き抜ける。
おかしいぞ、お天道様はあんなにも頑張ってくれているのに、体温が我先にと逃げていくんだが。
「お姉ちゃん、メールにも書いたけど一応確認するね?ううん、弟君を信頼してないわけじゃないよ?でも万が一ってこともあるからさぁ」
なまじ顔立ちがいいだけに、ルルねぇは感情を隠すだけでどこか芸術品めいて見える時がある。
それは今まさに周囲の熱を奪っても余りある涅槃寂静の如く、冷え切ったほほ笑みを浮かべているこのタイミングを置いて他ならない。
「弟君は、」
視線を逃すことさえ許さないと、形のいい指が頤をなでるように持ち上げ、視界いっぱいにゼロ度の笑顔を見せつける。
既に奪われるほど残っていない体温も去り、【グラウバ】の攻撃さえ受け止めたアイアンボディはもはやただ哀れに震えることしかできない。
「――お姉ちゃん以外の女の子と勝手にフレンドになったんじゃ……ないよね?」
メールの到着を告げるポップな着信音は、俺を大紅蓮地獄へ誘う音だった。
†
「ったく、ヒュージの奴遅れるだのこっちに来いだの忙しいってんだよなぁ」
焼きたてのクレープをかじりながら、ウェンディは噴水広場へルーチェと歩く。
このクレープの代金は迷惑料代わりにヒュージに払わせるつもりだった。
「そう言わないんだよ、ウェンディちゃん。ヒュージさんだって、何か都合とかあると思うからね」
ルーチェは不機嫌そうなウェンディをたしなめる。
「……お前、なーんかヒュージをやたら信頼してんなぁ」
「そうかな?」
「ホの字?」
意地悪く目を細めるウェンディにルーチェが顔を真っ赤にして言い返す。
「私そんなにちょろい女の子じゃないよ!」
「そんな猫みてぇになってっと、クレープ落ちますよっと」
慌てて零れ落ちそうだった苺にルーチェはかぶりつく。
文句の一つや二つ言いたげな表情のルーチェを制するように、ウェンディは自分のクレープを差し出した。
「楽しんでるなら何よりだ。アタシが誘った手前、クッソつまんねぇなんて言われたかねぇからほっとしたぜ」
「……うん、ありがとうウェンディちゃん」
ウェンディのクレープを受け取りながらはにかみ、ルーチェは感謝する。
「んじゃ、ヒュージ捜すか」
「意外と広いね、広場」
周囲を見渡していたウェンディが、シンボルである噴水の前に人だかりができているのを目ざとく見つけた。
「なんか人たくさんいるじゃんか。折角だし行ってみようぜ」
「もうっ、ヒュージさんを探すんじゃなかったの?」
叱りつつも、ルーチェも気になったらしく二人揃って人だかりに近づいていく。
「いい加減にしてくれ!これだけ言っても分かってくれないのか!」
「「……ん?」」
人の壁を飛び越えて聞こえたエコーのかかった声に顔を見合わせる。
それは自分たちにロボのデザインを熱く語ったロボとそっくりだった。
「悪ぃ、ちょいと通してくれ」
ウェンディが強引にかき分けていく後ろを頭を下げながらルーチェが続く。
そして、人の壁を乗り越えた先で2人は目撃する。
「ここまでしても、無実だって信じてもらえませんか!」
レンガ畳の上でさらし首になっている彼の姿に、どれだけの罪を重ねればこうなるのだろうかと、ルーチェは倫理的な問題に直面し、完全に思考が停止してしまった。
手からクレープが落下するが気付いた様子さえない放心具合だった。
同じく絶句していたウェンディが一足先に我に返り、打ち首へ声をかけた。
「お前、かなり面白いことになってっけど、何やってんの?」
「むっ!その声はウェンディ!ってことはルーチェさんも一緒なのか!なら俺の潔白を証明してくれ!」
「もう刑が執行されてんだろうが」
反論をしようと頭部を震わせたヒュージの頭に靴底が振り下ろされた。
「弟君、お姉ちゃんが喋ってるんだから最後まで聞かなきゃだめだよ?」
「バイザーが割れりゅううううううううううううううう!クライマックスでもないのにバイザーが欠けるのはロマンじゃないんおぉぉぉぉぉぉ!」
「……お姉ちゃん?」
ようやく心神喪失状態から脱したルーチェがヒュージの頭からブーツと順繰り追っていくと、同時に顔を上げた女性と見合った。
同性から見ても、彼女は美人であった。
足元から断続的に響くヒュージの悲鳴がなければ余計にそう感じていただろう。
「2人が弟君のフレンドだね。丁度良かった、お姉ちゃんとして挨拶しておきたかったんだ」
強くスタンプし、生首を地に埋めるとお姉ちゃんはルーチェらに向けて頭を下げる。
「クラン〈サニー・サイド・アップ〉マスターこと、弟君のお姉ちゃんのルルです。はじめまして」
「どうして、初対面から圧をかけるんだ……」
弟のツッコミは、無言の後ろ蹴りで沈黙に変えられた。
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