第17話 告白

しかし…勝はハッキリとモノを言う男だった。

「サラさん…この卵焼きは食えん!!」


それはそうである…

ほうれん草の変わりに、オリーブオイルとバジルを加え、ワサビで味をしめていたのである。


「ガーーーン…」ショックで項垂れるサラと…

「あ…危ねえ~…」

お腹は空いていたが我慢して、ホッと胸をなでおろすシグレがいた。

ちょっと賢くなったシグレだった。


「隣で横になりませんか?」

具合悪そうな龍馬に、椅子の横の芝生を指さして舞は言った。


「そうじゃの~」

舞は龍馬の腕を引くと、芝生にシーツのような物を敷き膝枕をした。


その様子をみた勝とサラは気を使ってか…

「向こうからの方が良く港が見えるな」

「そうね!」

と相槌を打つと、サラはおにぎりを数個持って少し離れたテーブルに移動した。


「げっ…??」

「それ持って行くんかーーーーーい!!」


勝は、サラが手に取った数個のおにぎりの中の具が…

全て大当たりのロシアンルーレットに思えて仕方なかった…


龍馬は心地よく通る風と、舞の膝と手のぬくもりを感じ目を閉じると、ついそのまま寝てしまった。

舞も繋いだ手から伝わる龍馬の想いを感じ取り…

起こさないよう、そっと何度も足を組み替えながら、過ぎる静かな時を満喫していた。


それをよそ目に、勝とサラは話しまくっていた。

お互いに頭が良く知識が豊富…得られる色々な情報に耳を傾ける。

話し出すと止まらないのである。


日が傾き木陰が長く伸びてきたころ…

舞が体が冷えないかと気遣ってかけた風呂敷に気が付いて、龍馬は目が覚めた。


「あ、起こしちゃったわね」

「あ~ 良く寝たがや…」


寝起きの顔を優しく覗き込む舞…

手もずっと握ってくれている。


嫌な時は嫌、嬉しい時は心から喜び、不安を感じたときは素直に態度に現れる…

そんな舞の性格を直感的に感じ、心を許したのか初めて龍馬の重い口が開いた。


「俺は…脱藩して家族を裏切ってしまった」

「また沢山の仲間の心を踏みにじり、そして死なせてしまった…」

「全部俺のやった事が原因やき…」


舞は涙を滲ませる龍馬に、何も言わずそっと握った手に力を込めた。

そして少しの時をおいて、舞は言った。


「私の心はいつも貴方の傍にいます」

「貴方にはきっと、心に決めた夢があるはず…」


「あなたは…」


舞がここまで言うと、龍馬はそっと親指で舞の口を閉じ

「舞と一緒にいると、ついつい甘えてしまう」

と言葉を添え…


腰まで起き上がると、舞のほほに握った手を優しくあてがう…

そして自分のほほも近づけると、そのまま抱き寄せキスをした。


少し長めの、優しくも熱いキスだった…

唇が離れ、少しの間をおいて龍馬が…


「舞さん…舞さんはほんとに優しい…」

「昨日の約束、覚えてるがや?」

「全てが終わったら、二人で旅に出よう」


龍馬は再度、胸に舞の顔を引き寄せ、肩を優しく抱きしめながら言った。


「うん」

2つ返事で答えると…

舞はその時を思い浮かべ、心から嬉しそうにニッコリ微笑んだ。


その裏で…

またしても勝とサラは声をかけるタイミングを失っていた。

しかし2人はなぜか嬉しくて、顔を見合わせて笑みを浮かべた。


そして一部始終を見ていたサラ…

「いつかこれは使える!!」


8月の終わり…まれに涼しい夏の日の午後…

サラのお尻に悪魔の尻尾が生えた瞬間だった。

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