第12話 グラバーの頼み

翌日、積み荷の取引が終わると、今度はグラバーさんから西洋の日用品を買い込み、ジョージ達は堺に向けて旅立った!

日傘、洋服、パイプ、懐中時計、などを堺と江戸で売る裁断である。


大阪では洋服が大量に売れた!

特にヒョウ柄の服が良く売れたという…(なわけない)


そして色々な国の人が集まる大都会、江戸…

ジョージ達は無事に到着し、長崎で仕入れたほぼ全ての物が売れ、順調そのものだった。


その手腕と、航海の腕を聞いた幕府は、ジョージに当時の海軍指令「勝海舟」への接見を望んだ。

幕府との繋がりを有益だと思ったジョージは、有難く接見をを受け入れたのである。


そして勝は帰りついでに長崎に寄る事を知り、江戸から長崎への人の輸送を申し入れた。

傾きかけた幕府とは言え、さすがは徳川…

その報酬は素晴らしく良かった。


今回の航海でジョージは、すでにこの時点で普段の1年分近い利益を出している。

そして幕府の要人を乗せ出航!

長崎に戻ると、今度はオーストラリアに運ぶ積み荷を何にするか悩んでいた。


そんな時、グラバーさんがやってきて、ある頼みごとをしてきた。

「知り合いで、武器を大量に欲しがっている者がいるんだが…」

「誰かは君が知る必要はない」

「私の船は幕府の監視が厳しく表だって行動できないので、良かったら君に取引をお願い出来ないだろうか?」


突然でしかも相手が不明…

凄まじく嫌な予感と危険な匂いがする…


いくらグラバーさんのお願いとは言え、ジョージは決断しかねていたが…

「その代わり、仕入れの武器は通常の半値で君に売ろう…」

「差額の売り上げは全て君の物になる…」

「どうだ?悪い話ではないだろう?」


確かに、半値で仕入れられたら、売り上げは倍どころではない…

ここ最近で貯まった、約1年分の売り上げを更に何倍にでも出来る…


「う~~~ん…」

と、それでも悩むジョージにグラバーは

「これを出来るのは君しかいないんだ…どうか頼む…」

深々と頭を下げてきた。


「わ…分かりました。最善を尽くします」

毎日お世話になっているグラバーの頼みを断るわけにはいかず、つい約束してしまった。


さすがに武器を内緒で運ぶと言う事は、いわゆる密輸、密売に近い…

ジョージは胸騒ぎを抱きつつも、グラバーさんの話に耳を傾けた。


「では君に、私が運んで来ている西洋の最新武器を半値で流す」

「それを間違いなく、指定した場所と時間に現れたものに売って欲しい…」


ジョージは、ここまで聞いた時点ですでに後戻りが出来ない事を悟った。

間違いなく、今から断ると口封じで殺される…

そう感じたジョージは、どこに何時に行けば良いのかを問った。


「長崎を出て西に向かうと、五つの島がある…」

「その一番南の大きな島…つまり、長崎を出たら真っすぐに西に突き進むと当たる島。」

「そこに私の船と降ろした荷物がある。」


「ただ、これからすぐに出ると怪しまれる…」

「きちんと手続きを済ませて、公式に許可を貰ってから行くんだ。」

「10日後に、上海に行くと偽ってね…」


そこまで話すとグラバーは席を立ち…

「とりあえず、許可の取り方はこの紙に全て書いてある、取れ次第さらなる詳細を伝えにくるとしよう」

と、1枚の紙をテーブルに置くと部屋の扉の方に向かった。


「あ…それと…この紙は終わった後に必ず燃やしてくれ」

「君が食ってもいいけどな…」

と軽いジョークを交え、苦笑いしながら去っていった。


「まずいな…」

しばし呆然としながら頭を抱え、事の重大さに気づいたジョージだった。

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