第19話 集中できない勉強会 

私と葵は定期試験のための勉強会をしていた。


もちろん場所は私の家だ。


「凛ちゃん?」


「どうしたの?分からない問題でもあるの?」


「違うよ。」


「なら何?」


「ちょっとだけ抱き締めてもいい?」


「絶対駄目。」


「ええ!どうして!?」


葵は私の想像以上に集中力がないみたいだった。


「勉強に集中しなさいよ。」


「すぐ近くに好きな人がいて集中なんかできないよ……」


私は真面目にいじけている葵を見て、不覚にも胸をきゅんとさせてしまった。


「ちょっとだけくっついた後は、ちゃんと勉強してよね。」


「うん!」


「じゃあ少しだけならいいよ……」


「本当に?」


「うん。」


「やった!!」


葵が勢いよく私に抱き付く。


「少しだけだからね……」


「いいじゃん!減るもんじゃないんだから!」


「駄目。」


「えー。どうして?」


「私だって恥ずかしいんだから……」


葵はいつもスキンシップが激しすぎる。


私は未だに葵との距離感が掴めずに、いつも彼女に翻弄されてばかりいる。


「凛ちゃん?」


「今度は何よ……」


「好きだよ。」


葵はそう呟くと、私の唇にキスしてきた。


私は色々な感情を込めて葵を見つめた。


「あれ?もしかして睨まれてる?」


「睨んでなんかないし……


ちょっと頭がふわってしただけ。」


「もっとキスしていい?」


「ばか。」


私は葵の頬を軽く引っ張った。


「勉強に全く集中してないじゃん。


ほら、勉強するよ!」


「凛ちゃんは真面目すぎるよ。」


「だって定期テストは来週なんだよ?


私は頭が良くないからちゃんと勉強しないと……」


「青春の醍醐味は恋愛なんだよ?


それなのに凛ちゃんは勉強してばっか。」


「テストが終わったら何でもしたいことしてあげるから……」


「え!本当?!」


葵が私の言葉を聞いて目を輝かせた。


あれ?私もしかしてまずいこと言ったかな……


「何でもするって約束したからね!」


「な、何でもって、何でもは無理だから!」


「だーめ。約束は絶対なんだよ。」


葵がニヤニヤして私の顔を見つめる。


「よし!勉強しよっか!」


あれ?めっちゃやる気出てるじゃん……


テストが終わったら私はいったい何をされるのだろう……


こうして勉強は再開された。


葵はスイッチの切り替えが驚くほどに上手だ。


私はそんなふうにできないし……


私はいかがわしい想像を始めてしまって、急に勉強がまともにできなくなってしまった。


「凛ちゃん、さっきからぼおっとしてない?


なんかあったの?」


「別になんもないし……」


「ちょっと疲れたんだね。


なんやかんやで私達、そこそこ勉強たじゃん。」


「そうかもね……」


「ちょっと休もっか!」


「うん……」


「ちょっと横になりたいなぁ。


ねー。凛ちゃん?」


「駄目。」


「えー。どうして……」


葵がムッとした表情で私を見る。


「本当に仕方ないなぁ……


ちょっとだけだからね。少し休憩したら勉強するよ。」


葵は「分かってるよ!」と口にすると、大はしゃぎでベッドに上がった。


「どうして私よりも先に私のベッドに乗るのよ……」


「ふふっ。早くおいで!」


私は葵の側に座った。


すると葵が私を抱き寄せて倒れ込む。


私の顔のすぐ近くに葵の顔があった。


「勉強疲れちゃったから癒しが必要だよ。」


「私が癒しになるの?」


「当たり前じゃん。


凛ちゃんは私の恋人なんだよ?」


葵はそう言って私の頬にキスをした。


この後は何回のキスを彼女にされるのだろう……


私は何故かドキドキしながら、彼女の甘い口付けに期待していた。


この甘酸っぱいとは違う微妙な感覚……


人との触れ合いがこんなにも心を躍らせるなんて、私は葵と出会うまでは全く知らなかった。


「凛ちゃん……」


「どうしたの?」


葵は「好き」と言って、私の唇にキスする。


私はもう今日の勉強会は諦めて、素直に彼女のキスを受け入れることにしたのだった。

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