第15話 幸運のパンケーキ

私達はお目当ての店に入るために1時間ほど並んだ。


そして目の前にはお待ちかねのスイーツが置かれている。


大きなお皿にはおいしそうなパンケーキが3枚並んでいた。


「ホントに久しぶり!


何だか見ただけでも幸運になれそうだよね!」


「これが幸運のパンケーキ……」


葵がゴクリと唾をのんだ。


「でもどうして幸運のパンケーキなの?」


「それは私も知らないかも。


おいしいものを食べたら幸運になる。てきなやつじゃない?


それよりも早く食べよ!」


葵が「うん!」と頷いた。


私はテンションを最高潮にして、パンケーキにナイフを入れた。


「やば。ナイフを乗せただけで切れちゃうんだけど……」


「すごくフワフワだね。」


葵がフォークにささったパンケーキを口に運ぶ。


「口の中でとろけるね。」と葵が口にする。


「うん!本当においしい!」


私達は連休最後の休みを満喫するために、行列のできるパンケーキ屋さんに来ていた。


ここのパンケーキ屋さんは有名で、テレビや雑誌でも特集されているのを見たことがある。


葵がとてもおいしそうに食べているから、私は彼女を誘って良かったと安心できた。


もし葵がスイーツとかに興味なかったらどうしよう。とか考えてたりしたから……


「どうして私を見てるの?」


葵が不思議そうな顔をして私に尋ねる。


「葵が余りにもおいしそうに食べていたから。」


「食べてるところジロジロ見られるのは恥ずかしいよ。」


「ごめん、ついうっかり……


それにしてもおいしいね。ここのパンケーキ。


このクリームも絶妙な甘さなんだよね。」


「それ分かる!なんか独特な甘さだよね!」


「確かハチミツとかバターとか色々、入ってるらしいよ。」


「へぇ。凛ちゃんってスイーツ好きだよね。


初めて会った日だって、顔をキラキラさせながらケーキ食べてたの覚えてる。」


「甘いものは大好きだよ。だって女の子だし!


葵も甘いものは好き?」


「好きだよ。


あんまりたくさんは食べれないけどね。」


「私だって生クリームを永遠に舐めるのは無理だよ。」


「生クリーム単体で食べる人っているの……」


「生クリーム専門店ってあるみたいだよ。


生クリーム単体だとか、飲む生クリームとかあるらしいし。


私はちょっと興味あるかも。」


「さすがに飲むのは無理かも。


口の中が甘ったるくなっちゃうよ。」


「でも口の中が甘ったるいことって、物凄く幸せなことじゃない?」


「まぁ苦かったり酸っぱかったりするよりかは……」


私達は会話を弾ませながらも、パンケーキを1枚ペロッと食べ終えていた。


「私が昔に読んだ少女漫画の主人公のセリフでね、とても好きなセリフがあるんだ。


恋愛は甘ったるければ甘ったるいほうが良いって。


いつか砂糖水を飲み干すような、甘い甘い恋愛をしてみたい。ってセリフなんだけど。


何だか物凄く素敵じゃない?」


「甘い甘い恋愛……確かにうらましいかも。


でも甘い恋愛ってどんな恋愛なの?」


「そりゃあカップルが超ラブラブな状態とか?」


「それなら私達もそうだよ。


ほら見て。私のスマホ。」


葵のスマホには水族館で購入したストラップがついていた。


「この半分ハートの感じが明らかにカップリングっぽい。


絶対にクラスの子達にいじられるよ……」


「私は凛ちゃんと違って、教室内でスマホを触らないから大丈夫だよ。


学校でスマホを触ったことないし。」


「まぁ私は彼氏がいることにするよ。」


「別に彼女でもいいんじゃない?」


葵がニヤニヤしながら私に言った。


「別に私は偏見とか余り気にしないけど……」


「そうなんだ。」


「だって恋愛に決まりとか常識ってないじゃん。」


「凛ちゃんてなんか、かっこいいね。」


「当たり前じゃん。」


それにしても会話の内容からして、私達って本当に付き合ってるみたいだな……


恋愛ごっこのはずなのに、完全に葵のペースに飲まれているし……


私は可愛い恋人役の彼女に、思いっきしほんnろうされている。


しかも色々な意味でどんどん距離が縮まっているような……


「凛ちゃんって幸運のパンケーキみたいだよね。」


「どういうこと?」


「凛ちゃんと出会ってから楽しいことばかりだから。


今までにない輝きが日常にあるっていうか……


とりあえず凛ちゃんは、私にとっては幸運を与えてくれる人なの。」


「それは私も同じだと思うから……」


私は自分の発言にだいぶ恥ずかしくなったので、少しの間はパンケーキだけに意識を集中したのだった。

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