第14話 Kiss,Kiss,Kiss
私と葵は床に座ったまま、ずっと抱き締め合っていた。
「頭がぼおっとする……」
葵の呼吸が緊張で少し荒れているのが分かった。
「凛ちゃん？」
「どうしたの？」
「キスしていい？」
「うん……」
葵の顔が少しだけ私の体から離れた。
そして彼女の手が私の頬を触れる。
葵は私を見てうっとりとしていた。
「どうして髪を撫でるの……」
「凛ちゃんの髪ってサラサラだよね。」
「葵もサラサラじゃん。」
「そうなの？」
「そうだよ。もしかして知らなかったの？」
「うん。特に何もしていないから……」
「葵はかなりポテンシャル高いよ。
本当に可愛いと思うし。」
「嬉しい……」
少し赤くなった葵の顔が近付いてくる。
そして私達の唇が触れ合った。
いったいどうしてなんだろう。
葵は女性なのに、私は彼女とのキスが全く嫌じゃなかった。
キスは2度、3度と続く。
私も葵も無言で、キスは静かな空間で何度も続いた。
そして何の前触れもなく、キスは今までにないくらい深いものになった。
「ちょっと……」
私の頭はとっさに彼女から離れた。
「さすがにいきなりすぎるでしょ……」
「ごめんね。嫌だった？」
葵は少し寂し気な様子だった。
私は突然の深い口付けに動揺してしまった。
だって女の子とあんなキスしたことないし……
「別に嫌じゃないんだけど……」
「じゃあいいの？」
私は「あー！」と叫んでベッドに飛び込んだ。
そして枕に頭を沈めて少し気持ちを落ち着けてみた。
正直に言うと、葵とのキスは気持ち良かった。
でもあれ以上続けると、自分の理性がおかしくなってしまいそうだった。
葵は私と同じ女の子だし……
でもどうして……
葵が「どうしたの？」と尋ねてきた。
「急に激しい頭痛に襲われたからベッドに寝込んだ。」
「そんなに嫌だったんだね……」
「今のは冗談だから！」
「気にしてないから大丈夫だよ。」
絶対に気にしてるじゃん！
悲しそうな葵を見ると、何だかすごく心が痛んだ。
私は体を起こして、ベッドの上に座り込んだ。
「葵、こっち来て。」
葵は「え？」と口にした。
「ちょっと急だったから驚いただけだし。
別に全然、嫌じゃなかったから。
どっちかと言うと気持ち良かったし……」
「本当に？」
「うん。だからそんな顔しないで……」
「凛ちゃんは優しいね。」
そう言って葵が私のベッドに上がった。
「葵どうしたの。顔真っ赤じゃん。」
「私だってさすがにここまでは考えていなかったから……
それにお風呂入らないと色々と不安だし……
わ、私、初めてだから上手く出来ないかも！」
え……この子は何を言っているの……
「ちょっと待って！
なんか変なこと考えてるでょ！」
「え？」
「私はさっきのキス以上のことはしないから！
てか変なこと言うから私まで恥ずかしくなってきたじゃない……」
「凛ちゃんがベッドに私を連れ込むからだもん。」
確かにベッドに誘ったのはいけなかったのかも……
葵は顔を真っ赤にしていた。
私は照れてる葵も可愛いと思った。
それにデニムのシャツを着ている葵は、いつもと雰囲気が違って凄く良い感じ。
葵は顔を真っ赤にしてずっと
「どうしたの？」
「さすがに恥ずかしすぎるよ……
変な勘違いしちゃったし……」
「キスしないの？」
「え？」
「待ってるのだって恥ずかしいんだから……」
「凛ちゃん……」
葵が私の体を押し倒した。
そして葵が私の体の上に倒れ込む。
「これはやりすぎじゃない？」
私は思わず苦笑いをしてしまった。
「ふふっ。凛ちゃん、好きだよ。」
今までに誰ともしたことがないような、深い深い口付けが長く続いた。
お互いの口から甘い声が何度もこぼれる。
私は意識が半分くらいなくなっていた。
たぶん葵も同じだろうけれど……
キスが終わった後は、しばらく2人で横になっていた。
「さすがに長すぎるよ。
頭おかしくなりそ……」
「ふふっ。ごめんね。
ちょっと調子に乗っちゃった。」
「もう今日はキス禁止だから。」
「えー。」
「軽いキスなら別にいいけど……」
私は本当にどうしちゃったんだろうか。
最近の自分はだいぶ変だけれど、そんな自分がなぜか嫌ではなかった。
むしろ毎日が物凄く楽しいのは、間違いなく葵のおかげなんだろう。
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