第12話 お揃いのストラップ

私達は水族館デートをしっかりと楽しんでいた。


そして水族館の目玉イベントの時間が迫ってきた。


「うわー。前の席が全部埋まってるね。」


「前の席をよく見て。


子ども連れのお父さんしかいないでしょ。


たぶんめっちゃ濡れるはずだから……」


葵が「なるほど。」と呟いた。


「まぁこんなに暑かったらすぐに乾きそうだけど。」


「顔にかかったらメイク落ちるし、髪が濡れたらボサボサになるし、水はとても危険だよ。」


「さすが凛ちゃんだね……」


私達は後方の席に座った。


すると葵が私のことをじっと見てくる。


「どうしたの?」


「今日の凛ちゃんはとてもオシャレだなって。」


「そりゃデートなんだし……」


私の発言で二人とも照れてしまっていた。


「葵も今日の格好、すごく可愛いよ。」


「ありがとう……」


葵の笑顔が余りにも眩しかったので、私は少しドキドキしてしまった。


「私もメイク覚えようかな……」


「どうして?」


「凛ちゃんに可愛いて言ってもらえたら嬉しいから……」


「葵は充分に可愛いよ。


私が言うんだから間違いないし!」


「すごく嬉しくて泣きそう。」


「これで泣くなら毎日泣かせてあげるね。」


「凛ちゃんてドエス……」


「葵にだけは言われたくないかも。」


私達がイルカショーとは何も関係ない会話を続けていると、いつの間にかイルカショーが始まろうとしていた。


「凛ちゃん!イルカが泳いでいるよ!」


「イルカはさっきからいたわよ。」


「え。どうしてお教えてくれなかったの!」


「普通は気付くでしょ……


あっ。ショー始まるよ!」


イルカショーは想像通りの凄さで、やはり前方に座る小さな子はびしょ濡れになっていた。


私はもちろんイルカも見てはいたけれど、隣に座る楽しそうな葵も気分よく見ていた。


私と一緒にいてこんだけ楽しんでくれる人がいるんだ。


何度かデートで水族館に来たことはあるけれど、今日が一番に楽しいかも……・


なんやかんやで気が合っているのかな?


イルカショーはあっという間に終わった。


「イルカさん凄かったね!」


私は「うん。」とうなずいた。


「凛ちゃんイルカ好きなんだよね?


どうだった?」


「とても良かったよ。


イルカって賢いしカッコいいし素敵なんだよね。」


「何か凛ちゃんみたいだね。」


「そうなのか……」


私達は席から立ち上がって歩いて行った。


「さて、次はどこに行こう!」


「まだ見てないとこあったよね。


ちょっとパンフレット見るね。」


葵とのデートはあっという間に時間が過ぎた。


キュートなアザラシを見てはしゃいだり、巨大なピラルクに興奮したり……


ゆらゆら泳ぐマンボウを観察したり、宝石みたいに色が綺麗な小魚におっとりしたり……


特殊なライトで光るクラゲをスマホで撮ったり、大きなウミガメを人生の先輩だとうやまったり……


最後は再びペンギンを見に行って、水族館のたんさくを終えた。


そして売店……


「なんかお揃いのストラップを買おうよ。」


私がおそろのストラップを提案すると、葵が今日一番に顔を輝かせていた。


「うん!可愛いストラップを探そうね!」


私と葵はおのおのにストラップを見つけてきて見せ合った。


私はペンギンのストラップ。葵はイルカのストラップ。


二人ともお互いのことを考えてずっとストラップを選んでいたようだった。


「ふふっ。私達って相性ピッタリなんじゃない?」


葵が嬉しそうに笑った。


「将来は幸せなふうふになれるね。」


私は自分で言ったセリフに恥ずかしくなってしまった。


そして葵が「うん」と恥ずかしそうに頷く。


そこは「うん」じゃなくてツッコむところよ……


私は本気で恥ずかしくなってしまった。


そんななかで私達は最終的に、この水族館の看板であるジンベイザメのストラップを選んだ。


2つをくっつけたらハート型になるストラップだ。


青色が私で、赤色が葵のもの。


私達は満足して水族館から駅に向かっていた。


「凛ちゃん?」


「どうしたの?」


「今日の水族館デートが凛ちゃんにとって、一番思い出に残る水族館デートになったら嬉しいな。」


「そんなの当たり前でしょ。


いちおう、今までで1番に好きなんだから……」


私は考えるよりも先に言葉が出ていた。


「凛ちゃん大好き!」


「こら!抱き付かないの!」


こうして私達の楽しい水族館デートは終わったのだった。

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