第7話 恥じらいとスキンシップ

学校が終わると真っすぐに帰宅した。


そして凛ちゃんは一度カバンを置きに帰って、私の家に遊びに来た。


今日もピンク色の小さなテーブルの前で、二人並んで座っていた。


「お菓子とジュース持って来るよ。


ちょっと待ってて。」


「気を使わなくていいよ。


喉だけ乾いたからお茶だけ欲しいけど。」


「うん。分かった。」


私はガラスコップに氷をいっぱい入れて、お茶をあふれない程度にそそいだ。


そしてお盆にコップを2人分置いて部屋まで運んだ。


「ありがと。」と言って葵がお茶を手に取って飲む。


「まだ4月なのに暑いね。」


「暑いならくっつくのやめれば……」


葵は私の体にピタッとくっついていた。


「それは嫌。」


「どうして?」


「だって私達はカップルだし。」


「カップルだからって、こんなにくっついたりしないよ。」


「私は近くにいたいの!


恋人とは近距離をモットーに!これが私の恋愛論!


分かった?」


「はいはい。


そういや連休はどこ行きたいの?」


私はテーブルの上にスマホを置いた。


「とりあえずスマホで調べて見よっか。


SNSで調べてもおもしろいかも。


りのお店とかいいよね!」


「凛ちゃんて思ったよりも中身は女子高生なんだよね。」


葵がそう言ってクスっと笑った。


「どういうこと?」


「だって凛ちゃんて見た目が真面目そうだから、余り外に遊びに行くようなイメージないから。


中学生の凛ちゃんは、とっても遊んでそうなイメージだけどね。」


「もう。中学の頃の話題は禁止。


葵はどこか行きたいところあるの?」


葵は少し考えたようだけれど、けっきょく見つからなかったみたいだ。


「私ってあんまり外で遊んでこなかったから、行きたい場所を決めるのって難しいかも……」


私は「おおだよ」と言って笑った。


「でも凛ちゃんと一緒ならどこでも良いかも。」


葵はそう言うと、私の体にもたれかかってきた。


「何してるの……」


「恋人に甘えているの。」


「そう……」


相変わらず葵の髪は良い匂いがした。


それにしても何かくすぐったいなぁ。


「行く場所決めるんじゃなかったの……」


「そんなの明日でもできるもん。


今はくっついていたい気分なの。」


私は変に意識をしてしまって、何だか恥ずかしくなっていた。


やばい。自分が動揺しているのが心臓の鼓動で分かる……


何で緊張してるんだ、わたし!?


今度は葵が私に抱き付いてきた。


彼女はこんなことをして楽しいのかな?


いくら恋愛小説を書くためとはいえ、余りにもスキンシップが激しいような……


「葵?」


「こうしていると、すごく落ち着く。」


私は恥ずかしすぎて、言葉を何も出せなかった。


「凛ちゃん。」


「どうしたの?」


「キスしていい?」


「うん……」


私がそう答えると、葵は私の肩に両手を置いた。


そして葵の口元が私に近づいてくる。


私達は昨日よりも少し長めのキスをした。


やばい。すごく胸がドキドキしてる。


女の子とのキスは、当たり前だけれど葵とが初めてだ。


今までに想像したこともなかったけれど、別に嫌だとは思わなかった。


「なんか癖になりそう……」


「ばかっ。なに言ってんの……」


「もう一回していい?」


「うん……」


再び葵がキスしてきた。


葵は私の背中に両腕を巻き付けていた。


そして一回目のキスが終わると、2回、3回とキスを繰り返した。


「ちょっと……」


私は恥ずかしさのあまりに声を出した。


「さすがに連続とか恥ずかしいし……」


葵も顔を赤くしていた。


「行く場所さがそっか。」


私と葵は本来の目的のために色々と考えたけれど、2人ともどうやら集中できていないようだった。


けっきょくこの日は何も決まらずに終わってしまった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る