第3話 人生最大のサプライズ

私達は同じ電車に乗った。


そして驚くことに降りる駅も一緒だった。


なんかすごい偶然……


二人でしばらく歩き続ける。


え?!


私と葵は同じマンションの前で立ち止まった。


マジで?!


私は思わず「すごい偶然……」と呟いた。


「もしかして同じ階だったりして。」


「さすがにそれはないでしょ。」


私達はエレベーターに乗った。


私がボタンを押す。


「葵は何階?」


「凛ちゃんと一緒。」


え……マジで!?


こんな偶然がありえるのだろうか?


もしかすると神様が、ぼっちの私に友達をプレゼントしてくれたのかも……


そしてエレベーターから降りた私達は、本日一番の奇跡を体験するのだった。


「え?!隣に住んでんの!?」


「びっくりだね。」と葵が笑う。


「すごい偶然だね!また遊びにおいでよ!


私さ、一人暮らしだから、けっこう寂しかったりするんだよね。」


「一人暮らしなの?」


「うん。正確に言うと、いとこのお姉ちゃんの家なんだけどね。


今はお姉ちゃんが訳アリでいないから、私がここに住ませてもらってるの。」


「ふーん。


一人暮らしってすごいね。まだ高校生なのに。」


「まだホームシックにはなってないから大丈夫!」


私が実家を離れて一人暮らしを始めた理由は説明するまでもない。


もうあの街から離れたかった。


楽しい思い出はほとんどどなかったから……


私は自分が金髪ビッチと呼ばれた地元から離れることで、心機一転の高校生活を頑張ろうと誓ったのだ。


もちろんこうして一人暮らしできているのは、いとこのお姉ちゃんのおかげなんだけどね。


でもその話はまた今度。まあ運が良かったんだ。


私と葵はバイバイした。


そして私は洗面台で手を洗って、自分の部屋のベッドに倒れた。


駄目だ。思ったより疲れてるのかも……


シャワー浴びてないのに汚いな。


でもちょっとだけ横になりたい……


私は少しだけ横になるつもりが、いつの間にか夢うつつの世界を訪れていた。


すると玄関のドアが開く音がして、私の名前を呼ぶ声がした。


これは葵ちゃんの声だ。


私、初対面の人の夢を見ている。


よっぽど友達ができたのが嬉しかったんだな。


「凛ちゃん?」


葵の声が聞こえる。


でも私はその声を無視した。どうせ夢だし。


すると次はカメラのシャッター音が聞こえた。


カメラ?これってどんな夢?


そして私は意識を覚ますと、本当に目の前に葵がいたので驚いた。


「葵?!」


葵はスマホを持っていて、私の机の上の何かを撮っていた……


え!もしかして……


葵がニヤニヤしてこちらを見てくる。


「撮っちゃった。この写真。」


「消して……」


「いや。」


葵がスマホで撮った写真には、金髪ビッチ時代の私が写っていた。


この写真はとっても仲良しな後輩と一緒に撮った写真だったから、今でも勉強机の上に飾っていたのだ。


「これって凛ちゃんだよね。


凛ちゃんってヤンキーだったんだ。」


「ヤンキーじゃないし……」


「だったらギャル??」


私の高校生活はいとも簡単に終わってしまった。


せっかくここまで努力したのに。


今のクラスメイトにだけは金髪ビッチ時代の私を知られたくなかった。


「クラスの皆、驚くだろうね。


凛ちゃんのこんな姿信じられないもん。


優等生はキャラだったんだ。」


葵は意地悪な笑みを浮かべていた。


「お願い。誰にも言わないで……」


「えー。どうしよっかなぁ。」


「お願い!何でもするから!」


「何でもしてくれるの?」と葵は嬉しそうに尋ねた。


私は「うん……」と呟く。


「じゃあさ……」


私は唾をゴクリと飲んで、彼女の次の言葉を待った。


「わ、私と付き合って。」


「え?」


「だから……


私の恋人になって欲しい。」


「は?」


「じゃなきゃ写真を広めるから。


それが嫌なら私と交際して!」


「えぇ?!」


私は気が動転してしまった。


もう何が何だか分からない。


彼女はいったい何を言っているのだろう……

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