第86話 結果
あの日以来翠はよく頑張った。学校で寝ることはなくなり、授業が全て終わるとすぐに陽輝の家に行きテスト勉強に励み、そのまま夕飯をご馳走してもらいまた勉強を再開し、夜遅くに陽輝に家まで送ってもらう毎日を過ごしていた。
小珀とはあの日のままだったが、翠はテストが終わったらちゃんと謝ると陽輝経由で小珀に伝え、小珀もテストが終わったら謝るとお互い他人を介してだが約束はした。
そして翠は存分に陽輝を利用したのだ。多少の遠慮が今まではあったがそれが全く無くなった。まぁ陽輝としては別に問題はないのだが、ほんの少しだけ遠慮してもいいだろ……と内心では思っていた。
テスト前日は陽輝の家に泊まり込み、最後の仕上げにかかった。最後の最後までわからない問題は陽輝に解き方から全てを丁寧に教わり、お互いに問題を出し合ったりと1秒も無駄にすることなく取り組んだ。
テスト初日、2日目と翠は手答えが良かったらしく、終わった際にはかなり嬉しがっていた。しかしそれが仇となったのか3日目、4日目は少し不安が残ったと陽輝に言っていた。
ただそれでも以前よりは出来ていると陽輝は考えており、一言翠に「自分を信じろ。やってきたことは見てきた」と言っただけだった。
テスト後は授業が基本的に無く、毎日部活に暮れる日々を送っていた。翠と小珀がお互い謝ったのもこのテスト後だ。
そんなこんなで毎日過ごし、遂にテスト返却日の日が訪れた。
「順位より点数……順位より点数……50点50点50点…………」
普段の四人で登校してるのだが翠はお経を唱えるように50点……と何度も何度も言っていた。
「少しは静かにしてくんねぇかな?!俺だって今回は焦ってんだよ!前回のリベンジがかかってんだからよ!」
「静かにできるわけないよね?!陽輝が全科目50点とったらなんでも言うこと聞くんだよ?!なんでもだよ?!そりゃ超えてて欲しいに決まってるよね?!」
「そんなんどうせ超えたんだから心配いらねぇよ!あれだけやって取れてなかったら諦めろ!俺はすぐそこにいる佐藤さんに大差つけて勝ちてぇんだよ!」
「取れてなかったらって考えたら不安になるからずっと祈るしかないんでしょ?!」
ギャーギャー騒ぐ2人を小珀と悠真は見ながらクスッと笑った。
「まぁまぁその辺にしようよ。陽輝は小珀に勝っても僕に負けてるから焦らなくていいよ?」
「……ちょっと待ってください。前と同じで私が1位ですからゆうくんは大人しく私の言いなりに……言うこと聞いてくださいね?」
「いやいやいや……今回は流石に僕が1位だから小珀が言うこと聞くんだよ?しっかりしてよ……」
「へぇ?」
静かに闘志を出している2人。実はここはここでどちらが勝つか勝負しているのだった。陽輝は個人的なものに対して2人はお互いのプライドと命令権がかかっているので負けられない戦いになっていた。
バチバチに視線を飛ばしている2人を見れば少し落ち着く翠。「……別れる寸前のカップルみたい」とぽろっとこぼした時は翠に目を向けられ、ひぃっ!と情けない声を漏らした。
「まぁまぁ翠はともかく俺らは学校つけば結果が出てるから早く行こうぜ。翠は……1人だけドキドキ味わってろ」
「いやうちの名前が張り出されていれば50点は超えているということだから、それに期待しよ!早く行こうよ!」
「ちょ、引っ張んな!」
何を思ったのか翠は成績優秀者の名前の張り出しに自分の名前が載っていればいいと考え、それを見に行くために陽輝の腕を掴んで走り出した。その後ろを小走りでついていく悠真達だが、「……あれに名前載っても偏りあったら50点届いてないんじゃないのかなぁ……」と2人して思っていた。
◇
「着いた!うちの名前は……あぁ?!あったあったあったー!」
「そんなわけないだろ……って、ん?いやいやいや……これは夢だろ……」
先に着いた陽輝達は張り出されていた結果を下の方から見ていた。するとだ。なんと翠の名前が98位、総合点数756点と記載されていた。
「やったよ陽輝!なんでもいうこと聞いてね!」
「まぁ、ちゃんと50点全教科超えてたらな?偏りあったら超えてないかもだし」
「………そうじゃん!急いだ意味ないじゃん!あぁどうか超えてますように超えてますように……」
少し前に悠真達が考えたことを陽輝も思っていて、翠だけはそのことに気づかずにいた。こういったところが翠が馬鹿と言われる所以だろう……と思っていた。
それから少しして、悠真と小珀も到着。陽輝はゆっくり順位を見ていて、ちょうど30位のところまで見たところだった。
「もう見た?」
「30位まで見て、名前は載ってなかった。ただ中間に比べて全体的に点数が落ちてるわ」
「まぁ期末の方が範囲少し広いですし難しくなりますからね……この三人がトップ3は変わらないと思いますから見に行きましょう!」
小珀に言われ、1位の名前を見に行くことに。結果は……
「—————っ!ぅし!」
「うわぁ……どこで失点したんだろ……」
「私もです……今回は満点だと思ってたのに……」
陽輝が僅差で1位。悠真と小珀は同点で2位と記載されていた。尚4位とは圧倒的な差があった。
「まぁ結果はこうですから?悠真君。君は2連敗を?したわけですが?お気持ちは?」
「うるさい黙れ。どこで失点したんだよぉ……」
「私もですよぉ……」
ドヤ顔の陽輝と落ち込んでいる2人。結局2人は落ち込んだまま教室に行き、他の友達から心配されて点数を言ってはキレられるということを繰り返したとかなんとか……。
翠に関しては、ギリッギリ全教科50点超えてはいたそうだ。採点ミスで日本史が50点に上がりその時の翠の喜び具合は一年の間で話題になったとか……。
読んでいただきありがとうございます。
ストックで久しぶりに書いてるので少しおかしいかもしれません。
ちなみにですが、陽輝は1問ミスの998点、悠真と小珀は3問ミスの995点です。
名前は上がってませんが4位は920点です。まぁあっかんですよね。
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